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81話
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実際、二人とも凄かった。
サファルはもうずいぶんカジャックと一緒に過ごしているが、そういえば魔法で戦っているカジャックを目の当たりにするのは初めてだった。
最近ようやく知ったのだが、一番最初に出会った時にカジャックは咄嗟だったのもあり魔法で魔物を倒してサファルを救ってくれていたようだ。だが情けないことに気絶してしまっていて見ていないし、そもそもどうやって倒したのかすらずっと知らなかった。
一緒に開墾集落跡地へ向かった時のカジャックはひたすら短剣だけで獣を倒していた。それ以外にはちょくちょくカジャックが魔法を使っているのを見てはいるが、本人からしたら小さな魔法のようだったし、サファルとしても凄いとは思ったがさすがに戦闘時の魔法と同じだとは思っていなかった。
先ほどは魔法で魔物をやっつけてくれたが、残念ながらカジャックが放つところは見ていない。サファルの矢と共に、炎がそれこそ矢のように飛んで魔物を攻撃したところしか見ていなかった。
カジャックの魔力が凄いのは承知していたつもりだ。だがサファルの想像を軽く越える力をカジャックは持っていた。アルゴと共に魔物を次々に倒していくカジャックは、本当に詠唱をしているのかと疑うほど魔法を繰り出す速度が速い。だというのにその魔法はどう見ても上位魔法にしか見えなかった。しかも相変わらず属性は火らしいのに他のエレメント系の魔法をも素早く完成させ、対象の魔物に放っている。
「……なぁ、ルーカス」
「何だ」
「訓練された魔術師なら魔法、あんなに素早く放てるものなの?」
「……いや、昔王国で見た魔術師たちでも彼らほど素早く魔法を繰り出す人はいなかったように思う。戦う時も、大きな魔法を使う時は時間がそれなりにかかるから、その間は周りがサポートしていた」
「属性が違う魔法とかは?」
「魔法具を使ってはいたな」
「だよ、な」
やはり、凄いんだ。
サファルは改めて感動にも近い気持ちが湧いてくるのが分かった。カジャックにしてみればその力のせいで幼い頃辛い目にあっているため、もしかしなくともありがたくもなんともない力かもしれない。それでもサファルにとってはとても格好がよくて美しくて魅了される光景だった。
普段日常でたまに見かけていたカジャックの魔法ですら、サファルにとっては今まで見た魔法の中で一番綺麗だと思っていた。とても自然と調和したような、美しい炎や風などに見えていた。
今、カジャックの手から繰り出される魔法は、そんな日常の魔法よりも遥かに威力のある、下手をすれば恐ろしいものだ。だがそれでもやはりカジャックの魔法は美しかった。一瞬のうちに手のひらから魔法円のような光が浮かび上がり、矢継ぎ早に様々な形となってカジャックたちを襲おうとする魔物を攻撃していく。
多分かなりの魔物を倒したと思われるが、サファルたちが村に着いた時はまだ辛うじてほぼいなかった魔物は、きりがないほど次から次へと現れている。アルゴの作ってくれた結界はさすがで、見事なほどそれらの魔物は素通りしていく。だがそれでも時折勘のいい魔物もいて、見えていない様子ではあるが、皆が集まっている庭周辺をぐるぐると取り囲むようにうろうろしていた。だがその内そういった魔物もカジャックやアルゴに倒された。ルーカスはあくまでも結界を破って魔物が侵入してきた時に剣を振るうつもりのようだ。そうしないと、せっかくの結界だというのに中から手を出せばバレてしまう可能性がある。また結界の外へ出ないのは、万が一結界が破られた場合にここを守る者がいないのがまずいからだ。出来ればルーカスもカジャックたちと一緒になって応戦したいようだが、村人の安全を第一に考えて堪えている様子だった。それはサファルにも分かる。
……俺も、分かる、けど。
「ルーカス」
「何だ」
「俺、行っちゃ駄目?」
「駄目だよ」
「カジャックに言われた説明はしただろ」
「ああ。後はここで俺とともに皆を守るのがお前の仕事。喧嘩強いやつは多いけど魔物との戦闘となるとまた別だからな」
「……。……でもあんな数を二人でなんて……」
「サファル。お前の弓は確かだ。でもあの中へ飛び込むことはカジャックたちにとってはむしろ邪魔になりかねないよ。足枷になるつもりか?」
「……分かってる……けど見てるだけなのは辛い……」
足手まといになりたくはない。だがいくら強い二人でも、いつかは疲弊するし魔力だって無限ではない。体力と同じで消費されていくものだ。だというのに安全な場所でただそれを眺めているだけというのは辛かった。ここも確かに守らなくてはならない。リゼもいる。
でも──
葛藤と心配と、カジャックの助けになれない弱い自分という情けなさにサファルは俯くしか出来ない。
ただ、やはり二人は強かった。アルゴなどは嬉しそうですらある。ここからではちゃんと聞こえないが、何やら「ジンと一緒」「懐かしい」などといった言葉は聞こえてきた。カジャックはそれに対しては呆れたような顔をしつつも少し笑っているように見えた。そして、信じられないとは言わないが、本当に二人で魔物を一掃してしまった。
辺りはそろそろ日が落ちてきていた。村の皆が歓声を上げる。リゼは仲のいい友だちと抱き合って喜んでいる。ルーカスもホッとしたように満面の笑みを浮かべていた。サファルも安堵と感激で涙がこみ上げてきそうになった。
だが──
「まだだ……!」
言ったのはカジャックだったかアルゴだったか。
浮かれていた村の皆とともにサファルが見た時には、突如大きな竜がとてつもない振動とともに降り立った、と同時に禍々しいほどの炎を口からカジャックたちに向けて放っていた。
サファルはもうずいぶんカジャックと一緒に過ごしているが、そういえば魔法で戦っているカジャックを目の当たりにするのは初めてだった。
最近ようやく知ったのだが、一番最初に出会った時にカジャックは咄嗟だったのもあり魔法で魔物を倒してサファルを救ってくれていたようだ。だが情けないことに気絶してしまっていて見ていないし、そもそもどうやって倒したのかすらずっと知らなかった。
一緒に開墾集落跡地へ向かった時のカジャックはひたすら短剣だけで獣を倒していた。それ以外にはちょくちょくカジャックが魔法を使っているのを見てはいるが、本人からしたら小さな魔法のようだったし、サファルとしても凄いとは思ったがさすがに戦闘時の魔法と同じだとは思っていなかった。
先ほどは魔法で魔物をやっつけてくれたが、残念ながらカジャックが放つところは見ていない。サファルの矢と共に、炎がそれこそ矢のように飛んで魔物を攻撃したところしか見ていなかった。
カジャックの魔力が凄いのは承知していたつもりだ。だがサファルの想像を軽く越える力をカジャックは持っていた。アルゴと共に魔物を次々に倒していくカジャックは、本当に詠唱をしているのかと疑うほど魔法を繰り出す速度が速い。だというのにその魔法はどう見ても上位魔法にしか見えなかった。しかも相変わらず属性は火らしいのに他のエレメント系の魔法をも素早く完成させ、対象の魔物に放っている。
「……なぁ、ルーカス」
「何だ」
「訓練された魔術師なら魔法、あんなに素早く放てるものなの?」
「……いや、昔王国で見た魔術師たちでも彼らほど素早く魔法を繰り出す人はいなかったように思う。戦う時も、大きな魔法を使う時は時間がそれなりにかかるから、その間は周りがサポートしていた」
「属性が違う魔法とかは?」
「魔法具を使ってはいたな」
「だよ、な」
やはり、凄いんだ。
サファルは改めて感動にも近い気持ちが湧いてくるのが分かった。カジャックにしてみればその力のせいで幼い頃辛い目にあっているため、もしかしなくともありがたくもなんともない力かもしれない。それでもサファルにとってはとても格好がよくて美しくて魅了される光景だった。
普段日常でたまに見かけていたカジャックの魔法ですら、サファルにとっては今まで見た魔法の中で一番綺麗だと思っていた。とても自然と調和したような、美しい炎や風などに見えていた。
今、カジャックの手から繰り出される魔法は、そんな日常の魔法よりも遥かに威力のある、下手をすれば恐ろしいものだ。だがそれでもやはりカジャックの魔法は美しかった。一瞬のうちに手のひらから魔法円のような光が浮かび上がり、矢継ぎ早に様々な形となってカジャックたちを襲おうとする魔物を攻撃していく。
多分かなりの魔物を倒したと思われるが、サファルたちが村に着いた時はまだ辛うじてほぼいなかった魔物は、きりがないほど次から次へと現れている。アルゴの作ってくれた結界はさすがで、見事なほどそれらの魔物は素通りしていく。だがそれでも時折勘のいい魔物もいて、見えていない様子ではあるが、皆が集まっている庭周辺をぐるぐると取り囲むようにうろうろしていた。だがその内そういった魔物もカジャックやアルゴに倒された。ルーカスはあくまでも結界を破って魔物が侵入してきた時に剣を振るうつもりのようだ。そうしないと、せっかくの結界だというのに中から手を出せばバレてしまう可能性がある。また結界の外へ出ないのは、万が一結界が破られた場合にここを守る者がいないのがまずいからだ。出来ればルーカスもカジャックたちと一緒になって応戦したいようだが、村人の安全を第一に考えて堪えている様子だった。それはサファルにも分かる。
……俺も、分かる、けど。
「ルーカス」
「何だ」
「俺、行っちゃ駄目?」
「駄目だよ」
「カジャックに言われた説明はしただろ」
「ああ。後はここで俺とともに皆を守るのがお前の仕事。喧嘩強いやつは多いけど魔物との戦闘となるとまた別だからな」
「……。……でもあんな数を二人でなんて……」
「サファル。お前の弓は確かだ。でもあの中へ飛び込むことはカジャックたちにとってはむしろ邪魔になりかねないよ。足枷になるつもりか?」
「……分かってる……けど見てるだけなのは辛い……」
足手まといになりたくはない。だがいくら強い二人でも、いつかは疲弊するし魔力だって無限ではない。体力と同じで消費されていくものだ。だというのに安全な場所でただそれを眺めているだけというのは辛かった。ここも確かに守らなくてはならない。リゼもいる。
でも──
葛藤と心配と、カジャックの助けになれない弱い自分という情けなさにサファルは俯くしか出来ない。
ただ、やはり二人は強かった。アルゴなどは嬉しそうですらある。ここからではちゃんと聞こえないが、何やら「ジンと一緒」「懐かしい」などといった言葉は聞こえてきた。カジャックはそれに対しては呆れたような顔をしつつも少し笑っているように見えた。そして、信じられないとは言わないが、本当に二人で魔物を一掃してしまった。
辺りはそろそろ日が落ちてきていた。村の皆が歓声を上げる。リゼは仲のいい友だちと抱き合って喜んでいる。ルーカスもホッとしたように満面の笑みを浮かべていた。サファルも安堵と感激で涙がこみ上げてきそうになった。
だが──
「まだだ……!」
言ったのはカジャックだったかアルゴだったか。
浮かれていた村の皆とともにサファルが見た時には、突如大きな竜がとてつもない振動とともに降り立った、と同時に禍々しいほどの炎を口からカジャックたちに向けて放っていた。
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