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123話
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少女の目を覚まさせると、少年たちはようやく心からホッとしたようだった。少女も幸いなことにさらわれたことすら理解する暇もなかったのか、怖い目にあったことは何も理解していないし眠らされた後のことも全く分かっていない様子だ。
落ち着いたところで最初にサファルにぶつかってきたマントの少年がもう一人のマントの少年に対して怒り出した。
「コールドおぅ……、コールド。君は何でいつもそうなんだ……!」
「待って。もうすでに説教は頂いてるんだよ、反省もしてる。だから」
「だからじゃない!」
「ふぇすて、こーると、けんかだめです」
だが小さな少女に言われると二人ともぴたりと一旦口を閉ざした。
「うん、そうだねリーナ」
「ごめんね、リーナ。あと毎回言うけどコールドだからね」
「こーると」
「諦めろ」
「うぅ。リーナがもうちょっと大きくなったらその綺麗な声で綺麗に発音してくれるのを楽しみにしているよ」
「はい」
「……全く。相変わらず君は軽すぎる」
「あの……お三人がた。口を挟むことをお許しください」
「レインラ、どうしたのですか」
小さな少女に見上げられ、おずおずとマントの三人に近づいていたレインラという少年は暖かい笑みを浮かべながら少女に合わせて地面に膝をつき、むしろ自分が少女を見上げた。
「助……お世話になったお二人にまだお礼を……」
「おせわ?」
「ええ。その、……道に迷ったりしたところを助けて頂いておりました」
「そういえばまだ礼を告げていなかった。本当に助かった」
少女にフェステと呼ばれた、最初サファルにぶつかってきた少年は相変わらずどこか上からだ。だが本当に心から助かったと思っての言葉には聞こえた。
「本当に助かりました。あなた方のおかげだ。なんとお礼を申していいか分からない」
コールドのほうはフェステよりも少し年も上に見えるのもあってか、それとも軽いと言われていたように性格のなせる業なのか、やはりほんのり上からな気もしないではないが、話し方は丁寧だった。
だが上からな気がしたのも当然かと思える事実が後で判明した。
皆が、特にある意味今回の出来事を起こした犯人でもあるコールドが礼をしたいと言って聞かず、サファルもカジャックも顔を合わせて苦笑しつつもどうにか受け流そうとしていた。小さな子どもたちにしてもらうのはお礼の言葉で十分だからだ。
「……それじゃあカジャック」
二人でして欲しいお礼を相談して決めろとまで言われ、仕方なく二人でこそこそ話をするふりをしていたところ、サファルが思いついた。
「何」
「飴が欲しいとか、そういうのならどうでしょうか。子どもだしお菓子くらい持ってるんじゃあ?」
「あの子たちが飴を持ってるとは限らないし、その上、菓子を持ち合わせていなかったらむしろ難しい願いではないか? 買わせる訳にはいかないだろ」
「あー、ですよね。うーん……どこそこの景色が見たい、とかも結局連れ回すことになって良くないし……。……あ」
「何」
「いっそ無茶振りして、そうだなあ……ああ、ここからすごく遠い、船に乗らないといけない外国へ行きたい、それ以外の願いはないからやはり気持ちだけもらうよってのは? 俺としても嘘は吐いてませんし」
「うん、金を求めてるような言い方でもないし子どもにとっても夢のある願いだな、悪くないんじゃないか」
完璧な願いだと思った。筈だった。
「よし、分かりました。僕に任せてください」
「おふねならわたしのおとうさまが」
「いや、この二人は多分僕の国の人だ。服装や話し方で分かる。これは僕の仕事だ」
だからまさかこんな返事が返ってくるとはサファルどころかカジャックも思っていなかった。
「は、え、ちょ……」
「……」
サファルとカジャックを引っ張って連れていこうとする子どもたちに対し、動揺するサファルはさておき、唖然として固まっているカジャックはレアだったかもしれない。子どもが苦手な訳ではないのだろうが、慣れない上にサファルですら怪訝に思っている流れにカジャックは更にどうしたらいいのか分からないといったところだった。
「この方たちは割と言い出したら聞きません。こうなったら仕方ありません。申し訳ございませんがついて来てください」
「……身分を隠していた意味は……」
「仕方ありませんよ。でも僕もリーナ様を助けてくださって本当に心から感謝していますし」
恐らくやはりお付きか何かなのだろう、サファルと一緒に探していた少年と、フェステと共にいた少年、そしてレインラと呼ばれていた少年もサファルとカジャックを促してきた。
いくら貴族かもしれないと思っていても、さすがにサファルたちを船に乗せることなど到底出来るはずもないからこその願いだった。だというのに一体、と戸惑いが隠せなかった。おまけに強引に連れて来られた先に気づくとサファルだけでなくカジャックも絶句していた。
「し、城の中に勝手に入ったらいけないよ」
「構いませんよ、可愛いお方」
「コールド王子、本当にいい加減にしろよ。ここはまずリーナ王女の城だ。君の城でもないし見知らぬ庶民の大人の、それも男性に向かって何てことを言うんだ」
「えっ、ちょ、今のほんとに……っ?」
思わずサファルが口にするとコールドが「はい。僕は本当に、大人だし男の人だけどあなたを可愛いと思ったから言ったまでです」と頷いてくる。
「いやっ、そこじゃないからね? っていうか今時の少年はいったいどうなってんの……。ああいや、とにかく、その、王女や王子って……リーナ王女の城って……」
落ち着いたところで最初にサファルにぶつかってきたマントの少年がもう一人のマントの少年に対して怒り出した。
「コールドおぅ……、コールド。君は何でいつもそうなんだ……!」
「待って。もうすでに説教は頂いてるんだよ、反省もしてる。だから」
「だからじゃない!」
「ふぇすて、こーると、けんかだめです」
だが小さな少女に言われると二人ともぴたりと一旦口を閉ざした。
「うん、そうだねリーナ」
「ごめんね、リーナ。あと毎回言うけどコールドだからね」
「こーると」
「諦めろ」
「うぅ。リーナがもうちょっと大きくなったらその綺麗な声で綺麗に発音してくれるのを楽しみにしているよ」
「はい」
「……全く。相変わらず君は軽すぎる」
「あの……お三人がた。口を挟むことをお許しください」
「レインラ、どうしたのですか」
小さな少女に見上げられ、おずおずとマントの三人に近づいていたレインラという少年は暖かい笑みを浮かべながら少女に合わせて地面に膝をつき、むしろ自分が少女を見上げた。
「助……お世話になったお二人にまだお礼を……」
「おせわ?」
「ええ。その、……道に迷ったりしたところを助けて頂いておりました」
「そういえばまだ礼を告げていなかった。本当に助かった」
少女にフェステと呼ばれた、最初サファルにぶつかってきた少年は相変わらずどこか上からだ。だが本当に心から助かったと思っての言葉には聞こえた。
「本当に助かりました。あなた方のおかげだ。なんとお礼を申していいか分からない」
コールドのほうはフェステよりも少し年も上に見えるのもあってか、それとも軽いと言われていたように性格のなせる業なのか、やはりほんのり上からな気もしないではないが、話し方は丁寧だった。
だが上からな気がしたのも当然かと思える事実が後で判明した。
皆が、特にある意味今回の出来事を起こした犯人でもあるコールドが礼をしたいと言って聞かず、サファルもカジャックも顔を合わせて苦笑しつつもどうにか受け流そうとしていた。小さな子どもたちにしてもらうのはお礼の言葉で十分だからだ。
「……それじゃあカジャック」
二人でして欲しいお礼を相談して決めろとまで言われ、仕方なく二人でこそこそ話をするふりをしていたところ、サファルが思いついた。
「何」
「飴が欲しいとか、そういうのならどうでしょうか。子どもだしお菓子くらい持ってるんじゃあ?」
「あの子たちが飴を持ってるとは限らないし、その上、菓子を持ち合わせていなかったらむしろ難しい願いではないか? 買わせる訳にはいかないだろ」
「あー、ですよね。うーん……どこそこの景色が見たい、とかも結局連れ回すことになって良くないし……。……あ」
「何」
「いっそ無茶振りして、そうだなあ……ああ、ここからすごく遠い、船に乗らないといけない外国へ行きたい、それ以外の願いはないからやはり気持ちだけもらうよってのは? 俺としても嘘は吐いてませんし」
「うん、金を求めてるような言い方でもないし子どもにとっても夢のある願いだな、悪くないんじゃないか」
完璧な願いだと思った。筈だった。
「よし、分かりました。僕に任せてください」
「おふねならわたしのおとうさまが」
「いや、この二人は多分僕の国の人だ。服装や話し方で分かる。これは僕の仕事だ」
だからまさかこんな返事が返ってくるとはサファルどころかカジャックも思っていなかった。
「は、え、ちょ……」
「……」
サファルとカジャックを引っ張って連れていこうとする子どもたちに対し、動揺するサファルはさておき、唖然として固まっているカジャックはレアだったかもしれない。子どもが苦手な訳ではないのだろうが、慣れない上にサファルですら怪訝に思っている流れにカジャックは更にどうしたらいいのか分からないといったところだった。
「この方たちは割と言い出したら聞きません。こうなったら仕方ありません。申し訳ございませんがついて来てください」
「……身分を隠していた意味は……」
「仕方ありませんよ。でも僕もリーナ様を助けてくださって本当に心から感謝していますし」
恐らくやはりお付きか何かなのだろう、サファルと一緒に探していた少年と、フェステと共にいた少年、そしてレインラと呼ばれていた少年もサファルとカジャックを促してきた。
いくら貴族かもしれないと思っていても、さすがにサファルたちを船に乗せることなど到底出来るはずもないからこその願いだった。だというのに一体、と戸惑いが隠せなかった。おまけに強引に連れて来られた先に気づくとサファルだけでなくカジャックも絶句していた。
「し、城の中に勝手に入ったらいけないよ」
「構いませんよ、可愛いお方」
「コールド王子、本当にいい加減にしろよ。ここはまずリーナ王女の城だ。君の城でもないし見知らぬ庶民の大人の、それも男性に向かって何てことを言うんだ」
「えっ、ちょ、今のほんとに……っ?」
思わずサファルが口にするとコールドが「はい。僕は本当に、大人だし男の人だけどあなたを可愛いと思ったから言ったまでです」と頷いてくる。
「いやっ、そこじゃないからね? っていうか今時の少年はいったいどうなってんの……。ああいや、とにかく、その、王女や王子って……リーナ王女の城って……」
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