【完結】ヒロインは腕力ゴリラ!?死亡ENDの悪役令嬢は、ドM王子に囲い込まれる

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中

文字の大きさ
3 / 8

蔑まれるのがお好きですよね?

しおりを挟む

 正直、猫ちゃんを飼えるのは非常に魅力的な提案だ。猫ちゃんのためなら結婚しようかな……と思うほどには。
 なぜなら、この国ではペットという概念がない。家畜という概念はあるのにだ。
 だから、子どもの頃に猫ちゃんを飼えなかった。代わりにぬいぐるみの黒豆を抱っこして過ごした。
 それなのに、猫ちゃんを飼える。しかも、既にシュナイパーが買っているという。

「シュナイパー様は私に蔑まれるのがお好きですよね?」
「そうだな」

 迷うことなく頷くシュナイパーは潔い。だが、非常に嫌だ。

「私は別に蔑むのも、虐げるのも、好きではありません」
「そうだな」

 ん? そうだな? 気が付いていたの? じゃあ、どうして今まで──。


「シュナイパー様ぁ!!」

 私の疑問をどこかへ吹っ飛ばす勢いの甘ったるい声がシュナイパーを呼んだ。そして、その声の主はこちらに駆けてくる。

「シュナイパー様ぁ、今日はお勉強を見てくださるって約束してくれたじゃないですかぁ……」

 ぷっくりと頬を膨らませて、シュナイパーの腕に巻き付くそれ・・は、私を混乱させた。

「リリ、シュナイパー様のこと探したんですよぉ」

 唖然としてしまう私を他所に、シュナイパーはいつも通り……ではなかった。
 あの目、既視感があるんだけど。

「約束なんかしていないから、離れてくれ。今日は愛しい婚約者が入学してくる大事な日なんだ。カトロフ嬢に割く時間は微塵もない」
「もう、シュナイパー様ぁ。リリって呼んでくださいって言ってるじゃないですかぁ」
「私があなたをそのように呼ぶことは生涯ない。それと、私のことはリンドルフ第一王子と呼ぶように」

 シュナイパーが冷たい。
 あの、シュナイパーが……。

「エリザベート、行こう」

 リリと名乗る女生徒を腕からひっぺがそうとしているシュナイパーを呆然と見ていれば、彼女と視線が交わった。

「あ、あぁ……怖い。怖いわ、シュナイパー様ぁ」

 私を見て大げさに震える彼女。もちろん、私は何もしていない。
 これは、どういうこと? 

 私が困惑している間に、シュナイパーは絡まれた腕を外すことに成功した。怪我をさせないように距離を取るのに苦戦したようで、どこか疲れている。

 そんなシュナイパーの様子に気が付くことなく、私の記憶ではヒロインと思わしき見た目の令嬢が一人芝居を繰り広げている。
 こんなのは、私の知っているヒロインじゃない。つまり、このヒロインもまた──。

「私にはあなたが怖いよ、カトロフ嬢。とにかく、私たちには関わらないでくれ」
「ちょっ……シュナイパー様!?」

 シュナイパーがパチンと指をならすと、どこからともなく護衛が来てヒロインを取り押さえた。

「え、嘘でしょ!? シュナイパー様はその女に騙されてるのよ。許さないんだから、このビッチ!!」

 ビビビビビッチ!? なんてこと! なんてことを言うの、あのヒロインもどきは!!

 目を見開いて彼女を見ていれば、シュナイパーは隣で首を傾げた。

「彼女は時々よく分からない言葉を発するんだ。それに、妄言もひどい。エリザベート、彼女は何をしでかすのか分からないから、近付かないようにして欲しい」

 心から関わりたくない私はら大きく頷いた。

「彼女の名前は、何とおっしゃるのですか?」
「リリス・カトロフ子爵令嬢だ」
「カトロフ子爵といえば、堅実な領地経営をされる方ですよね」
「そうだ。それなのに、娘があの調子じゃ子爵の苦労が目に浮かぶようだ」

 確かに、と素直に思う。それと同時に黒豆を的にした糞ガキではなくなり、大人になったな……と感じる。

「……シュナイパー様は、約束を守ってくださっているのですね」
「ん?」
「出会った時にした約束です」

 昔、私がぶちギレた時にした約束。
 他者や、他者の物を傷付けたり、壊したり、余程のことがない限りしない。
 そんな当たり前のことを彼は知らなかったのだ。

 もちろん、相手が自身を害そうとしている場合は、余程のことだから例外だと伝えてはあるが。

「エリザベートに出会う前の私は、何をしても許されると勘違いをしていた」

 シュナイパーは、気まずそうに言う。もうあの頃のことは流石に許そう。

「あなたに出会えたから、私は多くの気付きを得られた。私の心がこんなにも揺れ動くのは、エリザベート……あなただけなんだ」

 シュナイパー様、なぜこんなにいい雰囲気を作り出したの? 正直、その技術に困惑してるよ。

「そうなんですね。ところで、猫ちゃんのお名前は何と言うんですか?」
「ネモだよ。瞳が青いから、ネモフィラから名前を貰ったんだ。ネモの瞳を見るとエリザベートをいつも思い出すよ」

 な、何で再び甘い雰囲気に!? 話の反らし方がわざとらしかったのは認めるけど、軌道修正早すぎないかな!?

「困っているエリザベートは可愛いけれど、嫌われたくないからこのくらいにしておこうかな」

 クスクスと余裕のある笑みを浮かべるシュナイパーを睨み付ければ、もっと楽しそうに笑われたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

【完結】悪役令嬢はヒロイン(義妹)に溺愛される

ariya
恋愛
前世日本の大学生だったコレットは継子いじめをモチーフにした乙女ゲームの悪役令嬢?に生まれ変わってしまった。 ヒロインの継母の連れ子としてヒロイン・マリーを使用人のように扱いいじめ、最終的には嫉妬に狂い危害を加えようとして追放されてしまう。 何としてもヒロインをいじめずに自分の悲惨な最期を迎えないようにしようと思ったが、ヒロインの待遇の悪さに我慢できずに物語とは違う方向へ動いていく。 (注意)百合、ガールズラブ要素があります。 ※昔書いた小説を少し行間調整したものです。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...