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二
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時は少し遡る。
伯爵令嬢ミファセスは悩んでいた。
出会った頃の婚約者とは仲が良く、上手くやっていたと思っていた。
学園に入学し、成績の優劣を順位として目の前に突きつけられてから、関係がおかしくなっていったように思う。
侯爵家の次男シュラブを婿に迎え入れるため、少しでも彼の役に立てればとした努力は結果として実った。
成績順位は常に上位の位置にいる。
しかし、それとは反対に下位の場所にシュラブの名はあった。
シュラブは勉強が苦手だったようだ。
人には得手不得手がある。
シュラブの苦手を、ミファセスが補えば良い。
夫婦とはそういうものなのだと、両親に教えられていたミファセスは一層努力した。
なんでも出来るミファセスに、努力が報われないシュラブが妬みを覚え始め、関係は悪くなっていった。
シュラブは社交に精を出し始めた。
ミファセス以外の令嬢と仲を深めていく。
シュラブは婚約者とは正反対の、少し頭のゆるい令嬢を好んだ。
シュラブは他の令嬢の肩を抱いてミファセスの前を通り過ぎる。
決められた茶会の訪問もなくなっていたし、夜会の迎えもなくなっていた。
それでも、過去の思い出に縋ってミファセスは耐えた。
結婚すれば、昔の様な関係に戻れるかもしれないと。
シュラブの素行不良はミファセスの両親の耳にも入り、婚約の破棄を侯爵家に申し入れるという二人を説得した。
本来なら伯爵家からの申し入れなど、侯爵家が聞き入れる必要もないが、隣国の王家の縁を持つ我が家は、爵位を抜きにこの国でもそれなりの権力がある。
その為、向こうから頭を下げて申し込んできた婚約は、伯爵家に有利な形で結ばれている。
もちろん、こちら側からの婚約破棄を侯爵家は受け入れるしかない。
ミファセスは両親に泣いてそれを踏みとどまってもらった。
まだ、ミファセスはシュラブを好きだった。
どんなにつれなくされても、ミファセスはシュラブを嫌いにはなれなかった。
そんな伯爵家の状況も知らず、シュラブは浮名を流し続け、とうとうミファセスの父は限界に達した。
「婚約は破棄させる」
嫌だと泣きついても、今度は父も折れてはくれなかった。
「お前はお前の想いがあるだろうが、私達はあの男がお前を幸せにするとは思えない。
すでに、お前は不幸であるし、我が家もそうだ。
未だに好き勝手している、入り婿予定のあの男を婚約者に据えたままの我が家は社交界では笑い者だ」
ミファセスは伏せていた顔を上げた。
「私は…まだ良い。隣国の縁のおかげでまだ。
…お前の母は、夫人会でどんな扱いを受けているのか知っているか」
ミファセスは頭をガツンと殴られた気がした。
自分の想いだけで繋ぎ止めていた婚約は、家族を不幸にしていた。
ミファセスはつれないシュラブをまだ愛している。
でも、家族は周囲から蔑ろにされていると知って、とうとう婚約の破棄に同意した。
どれだけ涙を流しても、シュラブへの愛は全く薄まることはなかった。
この想いをどうしたら良いのか、ミファセスは悩んでいたのだった。
伯爵令嬢ミファセスは悩んでいた。
出会った頃の婚約者とは仲が良く、上手くやっていたと思っていた。
学園に入学し、成績の優劣を順位として目の前に突きつけられてから、関係がおかしくなっていったように思う。
侯爵家の次男シュラブを婿に迎え入れるため、少しでも彼の役に立てればとした努力は結果として実った。
成績順位は常に上位の位置にいる。
しかし、それとは反対に下位の場所にシュラブの名はあった。
シュラブは勉強が苦手だったようだ。
人には得手不得手がある。
シュラブの苦手を、ミファセスが補えば良い。
夫婦とはそういうものなのだと、両親に教えられていたミファセスは一層努力した。
なんでも出来るミファセスに、努力が報われないシュラブが妬みを覚え始め、関係は悪くなっていった。
シュラブは社交に精を出し始めた。
ミファセス以外の令嬢と仲を深めていく。
シュラブは婚約者とは正反対の、少し頭のゆるい令嬢を好んだ。
シュラブは他の令嬢の肩を抱いてミファセスの前を通り過ぎる。
決められた茶会の訪問もなくなっていたし、夜会の迎えもなくなっていた。
それでも、過去の思い出に縋ってミファセスは耐えた。
結婚すれば、昔の様な関係に戻れるかもしれないと。
シュラブの素行不良はミファセスの両親の耳にも入り、婚約の破棄を侯爵家に申し入れるという二人を説得した。
本来なら伯爵家からの申し入れなど、侯爵家が聞き入れる必要もないが、隣国の王家の縁を持つ我が家は、爵位を抜きにこの国でもそれなりの権力がある。
その為、向こうから頭を下げて申し込んできた婚約は、伯爵家に有利な形で結ばれている。
もちろん、こちら側からの婚約破棄を侯爵家は受け入れるしかない。
ミファセスは両親に泣いてそれを踏みとどまってもらった。
まだ、ミファセスはシュラブを好きだった。
どんなにつれなくされても、ミファセスはシュラブを嫌いにはなれなかった。
そんな伯爵家の状況も知らず、シュラブは浮名を流し続け、とうとうミファセスの父は限界に達した。
「婚約は破棄させる」
嫌だと泣きついても、今度は父も折れてはくれなかった。
「お前はお前の想いがあるだろうが、私達はあの男がお前を幸せにするとは思えない。
すでに、お前は不幸であるし、我が家もそうだ。
未だに好き勝手している、入り婿予定のあの男を婚約者に据えたままの我が家は社交界では笑い者だ」
ミファセスは伏せていた顔を上げた。
「私は…まだ良い。隣国の縁のおかげでまだ。
…お前の母は、夫人会でどんな扱いを受けているのか知っているか」
ミファセスは頭をガツンと殴られた気がした。
自分の想いだけで繋ぎ止めていた婚約は、家族を不幸にしていた。
ミファセスはつれないシュラブをまだ愛している。
でも、家族は周囲から蔑ろにされていると知って、とうとう婚約の破棄に同意した。
どれだけ涙を流しても、シュラブへの愛は全く薄まることはなかった。
この想いをどうしたら良いのか、ミファセスは悩んでいたのだった。
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