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四
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「わかりませんか。殿下」
「何をだ…」
「歴代の第一王子が王になった理由です。
第一王子が他の兄弟よりも有利だからですよ」
「…」
理由など単純だ。
「在学中に実績を作る事が条件なのですから、他の候補、つまりは弟王子が学園に入学前に実績を作ればよかっただけです」
先着順なのだから、第一王子が当然一番王太子に近いところにいた。
国王陛下も待っていた。
第二王子が成果を見せ、議会も弟王子を推す段階になってもまだ、陛下は第一王子を見捨てなかった。
幼い頃から厳しく育てられてきた第一王子。
入学して、持て囃され反動が来た。
分単位の王城での帝王教育も中断し、学園入学で自由な生活を知り、堕落した。
卒業一ヶ月前。
第二王子とその婚約者の令嬢二人で、隣国への単独外交に成功し、ようやく国王陛下も諦めがついた。
二人が二年かけて積み上げた実績を超えられる物を、たった一月で用意できるはずもない。
第一王子は、学園卒業後は王領に留められる事が。
表舞台から去る事が決まった。
王子は目線を側近から元婚約者に移した。
この側近はもう使えない。
嫡男でも、婿入り先もなく領地に移るということは、もはや貴族とも呼べない。平民と同様だ。
側近は、王子には不要な人間となった。
この場で己を救える人間は…。
「エリクシア。父親の力を使い私を助けろ」
「えっ?と…無理です」
「なに!?私の命令を聞けないのか」
婚約者でもない男の言う事など聞く義理もないのだが、エリクシアは曖昧に微笑んだ。
「学園卒業の今日、私は貴族籍から抜けました。
侯爵家とは縁も切れているので、お力にはなれません」
「…なんだと?」
「先程、『私の浮気』とやらを咎めてましたが、婚約解消が決まり次の婚約者を探して、いろいろな殿方と面会しました。
恐らくその時の事をおっしゃっていたのだと思いますが…。
ちなみに、国王陛下の許可の元ですのでそこは問題ないと思っています。護衛も侍女も、第一王子の側近のこの方も同席していましたから、二人きりで会うようなことはありませんでした」
「…」
「その内、気になった方が出来、彼について行くと決めました。互いに継ぐ物は無いので平民になる道を選んだのです」
穏やかに微笑むエリクシアは、もう第一王子など見ていない。
平民になると言うその顔は晴れ晴れとして後悔は見えない。
思い出したように王子は隣に目を向けた。
懇意にしていたはずの、想い合っていたはずの女は王子から離れ、何処かの令息に擦り寄り迷惑がられていた。
彼女も泥舟だと知って逃げ出した。
王子は笑う。
泥舟自身は逃げ出せない。
水に溶けて沈むしかないのだ。
第一王子の側近と元婚約者は王子を置き去りにして会場から退場した。
興味を失くした貴族達も去っていく。
王城の騎士団がやってくるまで、第一王子は笑い続けていた。
断罪劇は笑い話として少しの間巷を賑わせたが、その後すぐ第二王子が立太子した事のほうが世間の受けはよく、第一王子の事はすぐに忘れられてしまった。
「何をだ…」
「歴代の第一王子が王になった理由です。
第一王子が他の兄弟よりも有利だからですよ」
「…」
理由など単純だ。
「在学中に実績を作る事が条件なのですから、他の候補、つまりは弟王子が学園に入学前に実績を作ればよかっただけです」
先着順なのだから、第一王子が当然一番王太子に近いところにいた。
国王陛下も待っていた。
第二王子が成果を見せ、議会も弟王子を推す段階になってもまだ、陛下は第一王子を見捨てなかった。
幼い頃から厳しく育てられてきた第一王子。
入学して、持て囃され反動が来た。
分単位の王城での帝王教育も中断し、学園入学で自由な生活を知り、堕落した。
卒業一ヶ月前。
第二王子とその婚約者の令嬢二人で、隣国への単独外交に成功し、ようやく国王陛下も諦めがついた。
二人が二年かけて積み上げた実績を超えられる物を、たった一月で用意できるはずもない。
第一王子は、学園卒業後は王領に留められる事が。
表舞台から去る事が決まった。
王子は目線を側近から元婚約者に移した。
この側近はもう使えない。
嫡男でも、婿入り先もなく領地に移るということは、もはや貴族とも呼べない。平民と同様だ。
側近は、王子には不要な人間となった。
この場で己を救える人間は…。
「エリクシア。父親の力を使い私を助けろ」
「えっ?と…無理です」
「なに!?私の命令を聞けないのか」
婚約者でもない男の言う事など聞く義理もないのだが、エリクシアは曖昧に微笑んだ。
「学園卒業の今日、私は貴族籍から抜けました。
侯爵家とは縁も切れているので、お力にはなれません」
「…なんだと?」
「先程、『私の浮気』とやらを咎めてましたが、婚約解消が決まり次の婚約者を探して、いろいろな殿方と面会しました。
恐らくその時の事をおっしゃっていたのだと思いますが…。
ちなみに、国王陛下の許可の元ですのでそこは問題ないと思っています。護衛も侍女も、第一王子の側近のこの方も同席していましたから、二人きりで会うようなことはありませんでした」
「…」
「その内、気になった方が出来、彼について行くと決めました。互いに継ぐ物は無いので平民になる道を選んだのです」
穏やかに微笑むエリクシアは、もう第一王子など見ていない。
平民になると言うその顔は晴れ晴れとして後悔は見えない。
思い出したように王子は隣に目を向けた。
懇意にしていたはずの、想い合っていたはずの女は王子から離れ、何処かの令息に擦り寄り迷惑がられていた。
彼女も泥舟だと知って逃げ出した。
王子は笑う。
泥舟自身は逃げ出せない。
水に溶けて沈むしかないのだ。
第一王子の側近と元婚約者は王子を置き去りにして会場から退場した。
興味を失くした貴族達も去っていく。
王城の騎士団がやってくるまで、第一王子は笑い続けていた。
断罪劇は笑い話として少しの間巷を賑わせたが、その後すぐ第二王子が立太子した事のほうが世間の受けはよく、第一王子の事はすぐに忘れられてしまった。
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