魅了されたのは

基本二度寝

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「この国は状態異常に対しての防衛はザルだな」
「左様ですね…ってリューゼンベル殿下。エルシモア様がお側に居られますが」
「あぁ、大丈夫。この子はで俺にメロメロだから」

与えられた来賓室のソファに座り、リューゼンベルは先程婚約破棄されたばかりの令嬢エルシモアを腕に抱いている。
初対面での挨拶の、きりっとした勇ましい公爵令嬢の姿は微塵も感じられない。

主にされるがまま。
唇を奪われ、唾液を飲まされ、胸を揉まれても拒みもしない。

ってなんでこんなに、自分に対して無防備なのだろうねぇ?自分は魅了耐性があるとでも思っているのかなぁ」

エルシモアは、自身の婚約者だったニールデルクに魅了魔法を発動していた。
それが故意か無意識かはわからない。
稀にあるのだ。自分の能力に気づかず、相手を害してしまうことが。

しかも運が悪いことに、この国の王族が携帯する、古い状態異常回避の装飾品は欠陥品だった。
調べてみれば、魅了に対して無反応だった。

あえて魅了回避の効果を外した作り手のせいか、知って購入した買い手のせいかは今となってはわからないだろう。

ニールデルク王太子は、婚約者であったエルシモアに魅了魔法をかけられていた。

リューゼンベルの連れである伯爵令嬢は、エルシモアの魅了魔法を誰に悟られることもなく解術し、満足して微笑んだだけで、ニールデルクは舞い上がる程度には色ボケだったけれど。


しかし、リューゼンベルに甘えるエルシモアを直視して、恋心を思い出す程には、ニールデルクもエルシモアを元々好いていたのだろう。

魅了魔法など使わずとも二人は想い合っていたのに、と伯爵令嬢はエルシモアを憐れんだ。

魅了の力を発揮しなければ、リューゼンベルに目をつけられることもなかった。
この男はそういうものに鼻が利いた。

自国の王子ではあるが、リューゼンベルは性格に難ありだった。
目をつけた相手を逃がすことはない。
見た目と中身が反するエルシモアは、彼にとって興味を引く令嬢だったのだろう。
絶対エルシモアを手に入れると言わんばかりに、彼は婚約者の心変わりを慰めるふりをして、しつこいくらいに彼女に魅了魔法を重ね掛けをしていた。

そして、エルシモアの帰る場所を奪う為に、人前であのように振る舞った。

本当に性格が悪い。

ニールデルクを呼びつけて、彼の前でエルシモアを犯すくらいするだろう。
エルシモアを囲う為に。
王族の手付きになればもう、エルシモアに縁談はない。
リューゼンベルが嬉々として彼女を引き取るに違いない。

主は歪んでいる。

伯爵令嬢は自分が主の好みの範囲外でよかったと、つくづく思った。
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