2 / 7
二
しおりを挟む
「だって、彼女は、」
眠っていた間のことは後でゆっくり話すからと、父の無慈悲な報告を取り繕うように母がアドバンズを気遣い、両親は部屋を出ていった。
侍従が忙しなく動き、先程の父の言葉のせいでアドバンズは医師に聞かれたことには上の空で答えた。
目を閉じれば、アドバンズには容易にメルリーノを思い描ける。
何故、彼女は婚約者の元へ行ってしまったのだろう。
「相手の爵位が高いから。こちらから拒否は出来ないの」
かつて思いを吐露したメルリーノの諦めたような顔に、アドバンズも共感した。
政略結婚。
アドバンズ自身もそれを嫌悪していたから。
「相手がアドのような、頼りがいがある方だったならよかったのに」
「相手がメルのように、守りがいのある女だったなら…」
互いの愚痴から相手を意識し始め、想いを告げた。
「私はニーディアと婚約を破棄する。君の婚約もどうにか破談させるから、私の唯一の相手になって欲しい」
メルリーノも了承して、アドバンズは態々学園に呼びつけたニーディアに婚約破棄を告げたのだ。
「…そうか。私がまだメルの婚約を破棄させていなかったから」
王族の権力を駆使して下位貴族の婚約を解消させる事は容易い。
だからまず、公爵家のニーディアとの婚約を破棄してからと思って…。
まさか、その時は自分が長い眠りに落ちるとは想定していなかった。
一度婚姻してしまえば、王家の命といえど余程のことがない限り離縁させることは難しい。
すでに結婚してしまった後、何故このタイミングで目覚めたのだとアドバンズは拳を握って寝台を強く打った。
眠っていた間のことは後でゆっくり話すからと、父の無慈悲な報告を取り繕うように母がアドバンズを気遣い、両親は部屋を出ていった。
侍従が忙しなく動き、先程の父の言葉のせいでアドバンズは医師に聞かれたことには上の空で答えた。
目を閉じれば、アドバンズには容易にメルリーノを思い描ける。
何故、彼女は婚約者の元へ行ってしまったのだろう。
「相手の爵位が高いから。こちらから拒否は出来ないの」
かつて思いを吐露したメルリーノの諦めたような顔に、アドバンズも共感した。
政略結婚。
アドバンズ自身もそれを嫌悪していたから。
「相手がアドのような、頼りがいがある方だったならよかったのに」
「相手がメルのように、守りがいのある女だったなら…」
互いの愚痴から相手を意識し始め、想いを告げた。
「私はニーディアと婚約を破棄する。君の婚約もどうにか破談させるから、私の唯一の相手になって欲しい」
メルリーノも了承して、アドバンズは態々学園に呼びつけたニーディアに婚約破棄を告げたのだ。
「…そうか。私がまだメルの婚約を破棄させていなかったから」
王族の権力を駆使して下位貴族の婚約を解消させる事は容易い。
だからまず、公爵家のニーディアとの婚約を破棄してからと思って…。
まさか、その時は自分が長い眠りに落ちるとは想定していなかった。
一度婚姻してしまえば、王家の命といえど余程のことがない限り離縁させることは難しい。
すでに結婚してしまった後、何故このタイミングで目覚めたのだとアドバンズは拳を握って寝台を強く打った。
638
あなたにおすすめの小説
大事な婚約者が傷付けられたので全力で報復する事にした。
オーガスト
恋愛
イーデルハイト王国王太子・ルカリオは王家の唯一の王位継承者。1,000年の歴史を誇る大陸最古の王家の存亡は彼とその婚約者の肩に掛かっている。そんなルカリオの婚約者の名はルーシェ。王国3大貴族に名を連ねる侯爵家の長女であり、才色兼備で知られていた。
ルカリオはそんな彼女と共に王家の未来を明るい物とするべく奮闘していたのだがある日ルーシェは婚約の解消を願い出て辺境の別荘に引きこもってしまう。
突然の申し出に困惑する彼だが侯爵から原因となった雑誌を見せられ激怒
全力で報復する事にした。
ノーリアリティ&ノークオリティご注意
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
いくら何でも、遅過ぎません?
碧水 遥
恋愛
「本当にキミと結婚してもいいのか、よく考えたいんだ」
ある日突然、婚約者はそう仰いました。
……え?あと3ヶ月で結婚式ですけど⁉︎もう諸々の手配も終わってるんですけど⁉︎
何故、今になってーっ!!
わたくしたち、6歳の頃から9年間、婚約してましたよね⁉︎
婚約者は…やはり愚かであった
しゃーりん
恋愛
私、公爵令嬢アリーシャと公爵令息ジョシュアは6歳から婚約している。
素直すぎて疑うことを知らないジョシュアを子供のころから心配し、世話を焼いてきた。
そんなジョシュアがアリーシャの側を離れようとしている。愚かな人物の入れ知恵かな?
結婚が近くなった学園卒業の半年前から怪しい行動をするようになった婚約者を見限るお話です。
攻略対象の王子様は放置されました
蛇娥リコ
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる