眠りから目覚めた王太子は

基本二度寝

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「だって、彼女は、」

眠っていた間のことは後でゆっくり話すからと、父の無慈悲な報告を取り繕うように母がアドバンズを気遣い、両親は部屋を出ていった。

侍従が忙しなく動き、先程の父の言葉のせいでアドバンズは医師に聞かれたことには上の空で答えた。


目を閉じれば、アドバンズには容易にメルリーノを思い描ける。
何故、彼女は婚約者の元へ行ってしまったのだろう。

「相手の爵位が高いから。こちらから拒否は出来ないの」

かつて思いを吐露したメルリーノの諦めたような顔に、アドバンズも共感した。

政略結婚。
アドバンズ自身もそれを嫌悪していたから。

「相手がアドのような、頼りがいがある方だったならよかったのに」
「相手がメルのように、守りがいのある女だったなら…」

互いの愚痴から相手を意識し始め、想いを告げた。

「私はニーディアと婚約を破棄する。君の婚約もどうにか破談させるから、私の唯一の相手になって欲しい」

メルリーノも了承して、アドバンズは態々学園に呼びつけたニーディアに婚約破棄を告げたのだ。


「…そうか。私がまだメルの婚約を破棄させていなかったから」

王族の権力を駆使して下位貴族の婚約を解消させる事は容易い。
だからまず、公爵家のニーディアとの婚約を破棄してからと思って…。
まさか、その時は自分が長い眠りに落ちるとは想定していなかった。

一度婚姻してしまえば、王家の命といえど余程のことがない限り離縁させることは難しい。

すでに結婚してしまった後、何故このタイミングで目覚めたのだとアドバンズは拳を握って寝台を強く打った。
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