1 / 9
一
しおりを挟む
「伯爵。ヒルデ嬢との婚約を解消したい」
婚約者、ヒルデの父親である伯爵はビリョークの申し出に目を丸くした。
「…何故でしょうか。我が娘に何か不満でも?」
伯爵の目から見て、娘のヒルデとビリョークの関係は円満に見えた。
ここのところ毎日のように訪れて、中庭で過ごしている姿は、遠巻きに見ても仲が良い婚約者同士にみえた。
伯爵は隣に座る娘に目を向けた。
なんの感情も見せず、彼女はまっすぐ前を見つめている。
「そうだな…私とヒルデ嬢とでは相性が合わないのだろう。私は彼女を一度も笑わせたことがない」
ヒルデは確かに表情がわかりにくいかもしれないが、父親の目から見てビリョークに笑いかけていたことは何度かあったはずなのだが。
「私の我儘と言えばそれまでかもしれない。…私はもっと表情の豊かな令嬢を伴侶に望みたいのだ。
だから今回、ヒルデ嬢との婚約を解消したいと言うことだ」
「…そうですか。ヒルデ、そういう事のようだ」
「かしこまりました」
無機質なヒルデの声。
物分りの良すぎる娘に、伯爵は父親として情けなくなった。
侯爵家から望まれた婚約に、伯爵には諾の答えしかなかった。
侯爵家の子息ビリョークが一目惚れしたヒルデに婚約を申し込んできたことが始まりで、一年も立たずに婚約の解消を求められた。
伯爵は拳を握る。
これでヒルデは傷物となった。
ビリョークの我儘で。
感情を一切面に出さず、伯爵は婚約解消の書類にサインをした。
用意周到なビリョークはこの場に王宮の文官まで連れてきていて、その場で婚約解消の手続きをおわらせたのだった。
「それで、伯爵。本題に入りたいのだが」
「は?」
まるで婚約の解消は事のついでのような発言に、自然と声が低くなった。
「この屋敷にいる…ララージャと婚約したい。彼女を呼んでくれないか」
婚約者、ヒルデの父親である伯爵はビリョークの申し出に目を丸くした。
「…何故でしょうか。我が娘に何か不満でも?」
伯爵の目から見て、娘のヒルデとビリョークの関係は円満に見えた。
ここのところ毎日のように訪れて、中庭で過ごしている姿は、遠巻きに見ても仲が良い婚約者同士にみえた。
伯爵は隣に座る娘に目を向けた。
なんの感情も見せず、彼女はまっすぐ前を見つめている。
「そうだな…私とヒルデ嬢とでは相性が合わないのだろう。私は彼女を一度も笑わせたことがない」
ヒルデは確かに表情がわかりにくいかもしれないが、父親の目から見てビリョークに笑いかけていたことは何度かあったはずなのだが。
「私の我儘と言えばそれまでかもしれない。…私はもっと表情の豊かな令嬢を伴侶に望みたいのだ。
だから今回、ヒルデ嬢との婚約を解消したいと言うことだ」
「…そうですか。ヒルデ、そういう事のようだ」
「かしこまりました」
無機質なヒルデの声。
物分りの良すぎる娘に、伯爵は父親として情けなくなった。
侯爵家から望まれた婚約に、伯爵には諾の答えしかなかった。
侯爵家の子息ビリョークが一目惚れしたヒルデに婚約を申し込んできたことが始まりで、一年も立たずに婚約の解消を求められた。
伯爵は拳を握る。
これでヒルデは傷物となった。
ビリョークの我儘で。
感情を一切面に出さず、伯爵は婚約解消の書類にサインをした。
用意周到なビリョークはこの場に王宮の文官まで連れてきていて、その場で婚約解消の手続きをおわらせたのだった。
「それで、伯爵。本題に入りたいのだが」
「は?」
まるで婚約の解消は事のついでのような発言に、自然と声が低くなった。
「この屋敷にいる…ララージャと婚約したい。彼女を呼んでくれないか」
181
あなたにおすすめの小説
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
酷いことをしたのはあなたの方です
風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。
あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。
ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。
聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。
※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。
※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。
※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる