悪女は婚約解消を狙う

基本二度寝

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「伯爵。ヒルデ嬢との婚約を解消したい」

婚約者、ヒルデの父親である伯爵はビリョークの申し出に目を丸くした。

「…何故でしょうか。我が娘に何か不満でも?」

伯爵の目から見て、娘のヒルデとビリョークの関係は円満に見えた。
ここのところ毎日のように訪れて、中庭で過ごしている姿は、遠巻きに見ても仲が良い婚約者同士にみえた。

伯爵は隣に座る娘に目を向けた。

なんの感情も見せず、彼女はまっすぐ前を見つめている。

「そうだな…私とヒルデ嬢とでは相性が合わないのだろう。私は彼女を一度も笑わせたことがない」

ヒルデは確かに表情がわかりにくいかもしれないが、父親の目から見てビリョークに笑いかけていたことは何度かあったはずなのだが。

「私の我儘と言えばそれまでかもしれない。…私はもっと表情の豊かな令嬢を伴侶に望みたいのだ。
だから今回、ヒルデ嬢との婚約を解消したいと言うことだ」

「…そうですか。ヒルデ、そういう事のようだ」
「かしこまりました」

無機質なヒルデの声。
物分りの良すぎる娘に、伯爵は父親として情けなくなった。

侯爵家から望まれた婚約に、伯爵には諾の答えしかなかった。

侯爵家の子息ビリョークが一目惚れしたヒルデに婚約を申し込んできたことが始まりで、一年も立たずに婚約の解消を求められた。

伯爵は拳を握る。
これでヒルデは傷物となった。

ビリョークの我儘で。

感情を一切おもてに出さず、伯爵は婚約解消の書類にサインをした。

用意周到なビリョークはこの場に王宮の文官まで連れてきていて、その場で婚約解消の手続きをおわらせたのだった。

「それで、伯爵。本題に入りたいのだが」

「は?」

まるで婚約の解消は事のついでのような発言に、自然と声が低くなった。

「この屋敷にいる…ララージャと婚約したい。彼女を呼んでくれないか」
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