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終章(2/3)-『真実』編
261-残された者たちの祈り
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同時刻。
警報が鳴り響き、爆音が響き始めたアロウト、その居住区にて。
「...エリアス」
「心配ですか?」
エリスが呟き、心配そうにサーシャが尋ねた。
彼女の視線の先には空がある。
居住区のドームは途轍もない程に巨大で、空が投影されており、まるで惑星上にいるような演出が行われていた。
けれどエリスには、肌を撫でる風も、鼻を凝らせば味わうことの出来る花の香りが混じった空気も、澄んだ空も要らなかった。
ただ、エリアスを心配していた。
「既に戦闘は始まっている、不安なら外を見ればいいんじゃないかい?」
「分かっています」
ディオナにそう言われつつも、エリスは緊張の面持ちを崩さない。
誤魔化すように口に含んだ茶は、すっかり冷めていた。
「あ、淹れ直すね。こういう時はサルガン産の茶葉がいいんだよ、フレーバーはノクランで淹れるよ」
ティニアが陶磁器の触れ合う音を響かせながら、ゆっくりと茶葉を抽出機に入れ、柔らかく湯を注ぐ。
サイフォンのような抽出機から、少しずつ水滴が垂れる。
それから一気に溢れ出て、下に置かれたティーポットに注ぎ込まれた。
彼女はティーポットに蓋をして、新しいティーカップに注ぎ、エリスに手渡した。
「ありがとう」
「私も不安だけど...きっと、エリアスだってそうなんじゃないかな?」
「エリアスが...?」
エリスは驚いたように目を見開く。
自らの愛する人が完璧であり過ぎるせいで、盲目になりかけていたと気付いたのだ。
「エリアスだって、ここにエリスを残していくのはきっと不安だよ」
艦砲にぶち抜かれれば、ここにいる人間は全滅する。
いや、当たりどころが良ければ、脱出することはできるかもしれないが...
ともかくそんな場所に、エリスを置いていくことはきっと不安なはずだと、ティニアは語った。
「でも...エリアスなら、そもそも考えないんじゃないかしら、そんな事」
「心のどこかでは思ってると思う。じゃなきゃ、エクスティラノスを全員出しちゃったりしないでしょ?」
アロウトにはエクスティラノスがカサンドラとケルビスを除き残存していない。
それはつまり、自信の裏に潜む不安からだとティニアは言う。
「ニトはどう思う?」
「...待たれよ、吾輩には見える。エリアスは戦っているが...しかし不利なようだ。アロウトに大きな力が二つ入り込んだ、本土決戦になると思う」
「...!」
ニトの言葉に、その場にいた中で、ある一人を除いた全員が動揺を露わにする。
しかし、その一人が言った。
「それがどうしたんだい?」
「えっ?」
「守られて、震えてるだけが女かい? だいいちエリアス様だって女さ、あのお方に抱かれるんだから、肝っ玉の小さい所を見せんじゃないよ」
ディオナはキッと全員を睥睨し、そう言い放った。
とんでもない暴言、しかし不安に対しては劇薬並みの作用を齎した。
「アタシだって怖いさ。敵は血も涙もないんだろう、アタシらだって見逃してもらえるとは思えないさ。だけどさ、どうせ乗りかかった船、愛してようが愛してまいが、アタシらはエリアス様と一緒にどこへでも行くのさ」
「...そうね、足手纏いじゃないわ。エリアスみたいに戦うことはできないけれど...私たちは、エリアスを信じて待たなきゃ」
この場にいる面子の中で、戦闘技能に長けた者はディオナしか居ない。
だが、ディオナであっても侵入者に対処などできないだろう。
「私は少しだけ身体強化が入ってるけれど、延命措置のためだから...戦うのは無理ね」
「元は諜報員だったんだろう、戦うくらいは出来るんじゃないかい?」
「最低限よ、バレた時に逃げ出せるくらいの技量でしかないもの」
エリスは呟く。
「だったら祈るしかないね、せめて祈るのさ、くそったれの敵野郎、とっととくたばりな、ってさ」
「...ええ、そうね」
祈ることしかできない。
残された者たちは、ただ一途に、愛する人の勝利を祈った。
警報が鳴り響き、爆音が響き始めたアロウト、その居住区にて。
「...エリアス」
「心配ですか?」
エリスが呟き、心配そうにサーシャが尋ねた。
彼女の視線の先には空がある。
居住区のドームは途轍もない程に巨大で、空が投影されており、まるで惑星上にいるような演出が行われていた。
けれどエリスには、肌を撫でる風も、鼻を凝らせば味わうことの出来る花の香りが混じった空気も、澄んだ空も要らなかった。
ただ、エリアスを心配していた。
「既に戦闘は始まっている、不安なら外を見ればいいんじゃないかい?」
「分かっています」
ディオナにそう言われつつも、エリスは緊張の面持ちを崩さない。
誤魔化すように口に含んだ茶は、すっかり冷めていた。
「あ、淹れ直すね。こういう時はサルガン産の茶葉がいいんだよ、フレーバーはノクランで淹れるよ」
ティニアが陶磁器の触れ合う音を響かせながら、ゆっくりと茶葉を抽出機に入れ、柔らかく湯を注ぐ。
サイフォンのような抽出機から、少しずつ水滴が垂れる。
それから一気に溢れ出て、下に置かれたティーポットに注ぎ込まれた。
彼女はティーポットに蓋をして、新しいティーカップに注ぎ、エリスに手渡した。
「ありがとう」
「私も不安だけど...きっと、エリアスだってそうなんじゃないかな?」
「エリアスが...?」
エリスは驚いたように目を見開く。
自らの愛する人が完璧であり過ぎるせいで、盲目になりかけていたと気付いたのだ。
「エリアスだって、ここにエリスを残していくのはきっと不安だよ」
艦砲にぶち抜かれれば、ここにいる人間は全滅する。
いや、当たりどころが良ければ、脱出することはできるかもしれないが...
ともかくそんな場所に、エリスを置いていくことはきっと不安なはずだと、ティニアは語った。
「でも...エリアスなら、そもそも考えないんじゃないかしら、そんな事」
「心のどこかでは思ってると思う。じゃなきゃ、エクスティラノスを全員出しちゃったりしないでしょ?」
アロウトにはエクスティラノスがカサンドラとケルビスを除き残存していない。
それはつまり、自信の裏に潜む不安からだとティニアは言う。
「ニトはどう思う?」
「...待たれよ、吾輩には見える。エリアスは戦っているが...しかし不利なようだ。アロウトに大きな力が二つ入り込んだ、本土決戦になると思う」
「...!」
ニトの言葉に、その場にいた中で、ある一人を除いた全員が動揺を露わにする。
しかし、その一人が言った。
「それがどうしたんだい?」
「えっ?」
「守られて、震えてるだけが女かい? だいいちエリアス様だって女さ、あのお方に抱かれるんだから、肝っ玉の小さい所を見せんじゃないよ」
ディオナはキッと全員を睥睨し、そう言い放った。
とんでもない暴言、しかし不安に対しては劇薬並みの作用を齎した。
「アタシだって怖いさ。敵は血も涙もないんだろう、アタシらだって見逃してもらえるとは思えないさ。だけどさ、どうせ乗りかかった船、愛してようが愛してまいが、アタシらはエリアス様と一緒にどこへでも行くのさ」
「...そうね、足手纏いじゃないわ。エリアスみたいに戦うことはできないけれど...私たちは、エリアスを信じて待たなきゃ」
この場にいる面子の中で、戦闘技能に長けた者はディオナしか居ない。
だが、ディオナであっても侵入者に対処などできないだろう。
「私は少しだけ身体強化が入ってるけれど、延命措置のためだから...戦うのは無理ね」
「元は諜報員だったんだろう、戦うくらいは出来るんじゃないかい?」
「最低限よ、バレた時に逃げ出せるくらいの技量でしかないもの」
エリスは呟く。
「だったら祈るしかないね、せめて祈るのさ、くそったれの敵野郎、とっととくたばりな、ってさ」
「...ええ、そうね」
祈ることしかできない。
残された者たちは、ただ一途に、愛する人の勝利を祈った。
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