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魔物外交編
女王マリルの決断
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あの事件から丸一日が経過していた。
マリルは昨日夕刻に目を覚まし、今は部屋にて膨大な被害報告書類に目を通している。
死者35人、重傷者183人、行方不明2人、軽傷者多数、意識不明者2人。鐘塔全粉砕消失、王宮西棟大破、中央館小破。それが現時点での被害状況。
これだけの損害で済んだのは、彼等が使った広域催眠魔法による。
王宮内にいた三千近い者が失神し、城下の庶民にも、失神者が多数発生したが、この大魔法により、戦闘行為そのものが起きず、被害が発生しなかった。
今回の死傷者は爆発により吹っ飛んだ瓦礫が、失神中の兵士の上に降り注いだことによるもの。魔法師団が至近距離にて爆裂魔法を放ったことによる自滅被害だ。
あれさえなければ、一人の怪我人も出ず、王宮の修理も不要だった。
攻撃は命令無視によるもので、魔法師団長の責任を問いたい所だが、ナーシャ殿から頭を下げられ、不問にせざるを得なかった。
実は彼女がこの被害の張本人らしいのだが、彼女だけには頭が上がらない。
それにしても、人間種というのは興味深い。
あの大魔法もそうだが、鐘塔の全壊、否、全粉砕消失させたのも、戦意を完全喪失させる戦略。
周囲に一切被害を出さず、目的の建造物のみを的確に消し去って見せた事で、絶対に敵わないと、気を失わなかった兵士達にも、認識させた。
強者の余裕なのかもしれないが、常に人的被害を与えずに勝つという戦略を取っている。
なのにナダルの進言に従い、彼等と敵対してしまった。その事が悔やまれてならない。
あの大魔法があれば、兵力の削り合いという今迄の戦争の常識が完全に覆える。少人数の兵で、こちらの被害がゼロのまま戦争に勝つことが可能となる。
難民を受け入れて、あの大魔法を教えてもらえれば、吾はこの星の覇王になれていた。
後悔先に立たずだが、彼等の文明は夢の宝庫。贈答品のキラキラ七色に輝くネックレス、丈夫でオシャレで使い心地の良いバック、開けると綺麗な音楽を奏でる小箱、人間の女が身に着けていた下着やドレス。彼らの物は全て最高。
なんで、彼等と敵対してしまったのだろうと、どうしても後悔が湧いてくる。
その時、ノック音がして、近衛師団長のケルンが現れた。
「陛下、あのモロウという男の部屋からこのような物が発見されました。ご覧に入れるまでもないと思っておりましたが、賓客のナーシャ様が『人間の物は全てご覧入れろ』とのことでしたので……」
ケルンが持つトレーには、用途不明の金属の塊が二つ置いてある。
「これは何じゃ」
「調査した限り、人間の武器との結論です。これをこの様に構えて、相手に向け、この突起を引くと、誰でも魔晶石なしに魔法を発動できます。こちらが睡眠を促す魔法で、こちらが物を高熱で溶解する魔法です」
これは思わぬ収穫。量産できれば、我が軍力の大幅増強に繋がる。
「研究班に、必ず原理を暴き、量産するように伝えよ」
「はっ。それと報告書を上げておきましたが、ギグ王子の件はどう対処しましょう」
「ギグ王子? 何かあったのか?」
「まだご覧になっておりませんか? セシルと言う人間と一緒にしていたことで、地下牢獄を抜け出し、人間と共に逃走いたしました」
それは不味い。モールガンからやってきたギグ王子捜索隊にも、知らぬと追い返しているのに、地下牢に投獄していたと国王に知れれば、再び、戦争になる。
アヘンによるモールガン国内の腐敗も、吾の策略だと知れてしまう。
「人間種の空飛ぶ船は、モールガン王国に向かったのか?」
「それは分りかねます。ですが、ギグ王子と一緒に行動していのは間違いありません」
「わかった。ギグ王子の事は、今のまま極秘扱い。脱獄し、人間と行動を共にしてる事は絶対に漏らしてはならぬ。それとモールガン王国にて、ギグ王子もしくは人間に関する情報収集にあたれ」
「心得ました」
それにしても、人間の女をなぜギグと一緒にした。
人間に関しては、ペダルに一任していたが、ギグと一緒にするなら、一言報告を入れてもいいはずだ。ギグ王子を監禁していることは、極秘扱いなのだから。
まさかギゼルの差し金か。私のやることなすこと、全てに反対し、私のアヘン侵略計画にも反対を唱えていた。もうとっくに諦めていると思ったが、私の邪魔をしようと、まだ考えているとしても、おかしくはない。
そもそもペダルはギゼルの右腕だった女。今でこそ南東部辺境地区の統括議長に落ちぶれているが、政治の中枢を支えていた女だ。ギゼルと共に吾のアヘン流通計画に反対を唱えたので、辺境の地に飛ばしてやったが、その恨みもあり、謀ったとしてもおかしくない。
この際、人間と敵対することになった罪の責任を問わせ、殺しておくか。ナーシャを連れてきたのも、全てナダルの独断だしな。
「ギギ、トーゴに、明朝今回の騒動の問責会を開くと連絡しろ。南東部辺境地区の統括議長のペダルも呼ぶ様に。それとナーシャ殿にはご遠慮頂く様に伝えることも忘れずにな」
ナーシャ抜きなら、ペダルに全責任を負わせるのもたやすいことだ。
マリルは手の指を組んで、口角を上げた。
「今回の件は、吾の判断ミス。人間という異世界人の難民受け入れを素直に受けておれば良かったのじゃ。本当に申し訳ない」
問責会議で、今回の被害報告の後、マリルは立ち上り、全員の前で深々と頭を下げた。
「頭をお上げ下さい女王陛下。ペダル殿の報告書を読めば、あの選択が妥当だと思うのは当たり前です。あんな報告書を提出したペダル殿にこそ、責任があります」
「そうです。今回の誘導作戦だって、明らかなやりすぎ。あれで怒らせ、完全に人間種との交渉の機会を逸してしまいました」
「女王陛下は不問としましたが、命令を無視し、至近距離で爆裂魔法の集中攻撃した事は許せません。それを誘導したのも、ペダルが賓客として招いた大賢者ナーシャ様ですし、ペダルの責任は重いです」
女王の謝罪ポーズにより、大臣連中は見事にペダルに責任を押付ける流れになる。
「発言しても宜しいでしょうか」ペダルが挙手する。
「今回の責任が、私にあるのは重々承知しています。ですので責任を取る覚悟でいますが、今、大事なのは、モールガン王国と戦争となった場合の対策です。今では全くと言っていいほど、モールガン王国に対する防衛対策を取っていません」
「それは、例え条約破棄して戦闘になった所で、脅威ではないとの判断があるからだ。モールガンの鬼どもは、我々よりも遥かに高い身体能力を持つ戦闘民族だが、今は統率困難な程に国家が荒れておる。南方諸国との戦いに疲弊し、アヘンの流行に、治安の悪化。とても我がロシナントと戦争する余力など残っていない。そんな国との防衛対策なんて必要ないし、国家予算の無駄遣いだ」
「ええ、防衛大臣の仰る通りだと私も思います。ですが、人間がむこうに付くとなると脅威以外の何物でもありません」
「この国に愛想を尽かし、次はモールガン王国に行くとでもいうのか」
不味い展開になった。まさか、極秘事項のギグ王子の事を話すつりなのか?
「その可能性が高いと判断します」
「その理由は?」
「申し訳ありませんが、理由に関しては明かせません」
「理由も不明の儘、兵を南方に廻せと言っているか。ギルド帝国やマリーン合衆国の可能性もあるのに、兵を割ける訳がないだろう。話にならん」
「それではここに御集りの皆様の中だけの話に留めて頂くという事で、お話します」
「ペダル殿。それは実際問題、無理と言うものだ。その理由というのを、吾だけに教えてくれぬか?」
「それでは大臣方も納得しないでしょう。秘匿事項ではありますが、皆様にお話しします」
ペダルのやつめ。どうあっても、ギグ王子を監禁していた事実を周知したいらしい。
「皆様も既にご存じと思いますが、人間に精神操作魔法を施し、彼等がこの地に来た本当の理由を聞き出しました。理由等は既報の通りですが、報告していない事もあります。最初に交渉国の候補に選んだのが、ロシナント王国とモールガン王国だったのです。ですので、次に交渉する相手は、モールガン王国の可能性が高いと判断しています」
ふう。極秘事項を洩らす程の馬鹿ではなかったか。だが、これは吾に恩を売る行為。責任は取るが、死罪を言い渡せば、暴露するぞと脅している。
ペダルも食えぬ女だ。
「モールガン王国と戦争になる可能性は高いと判断し、その対策も早急に話し合う必要があると判断する。だが、それは今回の議題にないこと。各自十分な準備ができているとは思えぬ。よって、明朝の会議にて相談することとする。本会議は本来の目的である今回の失態の責任が誰にあるのかを問いたい」
その後、ナーシャ、魔法師団長の責任追及の声も上がったか、ペダルが全責任を負う形となった。
「では、最終審判を下す。全責任を認めたペダルには、南東部辺境地区統括議長の解任、及び、崩壊した王宮修復に掛かる費用の二割負担と、新設しようと考えている人間種対抗戦略室の室長を命じる。国家存続の危機に陥れた罪は重く、この失態は死罪に値するが、彼女ほどの人材を失うのは痛い。よって、人間についてもっともよく知る彼女に、対人間への知恵を絞って貰うことにした。以上で本問責会議は終了とする」
そして、退席しようとすると、ペダルが駆け寄ってきた。
「この度は、寛容な処分。有難う御座いました。それでナーシャとも相談しましたが、あの巨大船と戦えるのは、神龍様しかいないとの結論となりました。戦争せずに穏便に済ませるのが最良と理解しておりますが、どうしても戦争を避けられない事態となった際、神龍様のお力沿いが必要です。この国には、代々、女王陛下にのみ、神龍様と交信する秘術を伝授されているとのこと。是非、その方法をお教え願えませんでしょうか」
「それはできぬ。しかし神龍様を持ち出すとはな。本当に面白い事を考える。参考にさせてもらおう」
神龍様とは、考えもしなかったが、あの船さえ壊せれば、僅かに希望は見えてくる。
神龍様の召喚を真剣に考え始めたマリルだった。
マリルは昨日夕刻に目を覚まし、今は部屋にて膨大な被害報告書類に目を通している。
死者35人、重傷者183人、行方不明2人、軽傷者多数、意識不明者2人。鐘塔全粉砕消失、王宮西棟大破、中央館小破。それが現時点での被害状況。
これだけの損害で済んだのは、彼等が使った広域催眠魔法による。
王宮内にいた三千近い者が失神し、城下の庶民にも、失神者が多数発生したが、この大魔法により、戦闘行為そのものが起きず、被害が発生しなかった。
今回の死傷者は爆発により吹っ飛んだ瓦礫が、失神中の兵士の上に降り注いだことによるもの。魔法師団が至近距離にて爆裂魔法を放ったことによる自滅被害だ。
あれさえなければ、一人の怪我人も出ず、王宮の修理も不要だった。
攻撃は命令無視によるもので、魔法師団長の責任を問いたい所だが、ナーシャ殿から頭を下げられ、不問にせざるを得なかった。
実は彼女がこの被害の張本人らしいのだが、彼女だけには頭が上がらない。
それにしても、人間種というのは興味深い。
あの大魔法もそうだが、鐘塔の全壊、否、全粉砕消失させたのも、戦意を完全喪失させる戦略。
周囲に一切被害を出さず、目的の建造物のみを的確に消し去って見せた事で、絶対に敵わないと、気を失わなかった兵士達にも、認識させた。
強者の余裕なのかもしれないが、常に人的被害を与えずに勝つという戦略を取っている。
なのにナダルの進言に従い、彼等と敵対してしまった。その事が悔やまれてならない。
あの大魔法があれば、兵力の削り合いという今迄の戦争の常識が完全に覆える。少人数の兵で、こちらの被害がゼロのまま戦争に勝つことが可能となる。
難民を受け入れて、あの大魔法を教えてもらえれば、吾はこの星の覇王になれていた。
後悔先に立たずだが、彼等の文明は夢の宝庫。贈答品のキラキラ七色に輝くネックレス、丈夫でオシャレで使い心地の良いバック、開けると綺麗な音楽を奏でる小箱、人間の女が身に着けていた下着やドレス。彼らの物は全て最高。
なんで、彼等と敵対してしまったのだろうと、どうしても後悔が湧いてくる。
その時、ノック音がして、近衛師団長のケルンが現れた。
「陛下、あのモロウという男の部屋からこのような物が発見されました。ご覧に入れるまでもないと思っておりましたが、賓客のナーシャ様が『人間の物は全てご覧入れろ』とのことでしたので……」
ケルンが持つトレーには、用途不明の金属の塊が二つ置いてある。
「これは何じゃ」
「調査した限り、人間の武器との結論です。これをこの様に構えて、相手に向け、この突起を引くと、誰でも魔晶石なしに魔法を発動できます。こちらが睡眠を促す魔法で、こちらが物を高熱で溶解する魔法です」
これは思わぬ収穫。量産できれば、我が軍力の大幅増強に繋がる。
「研究班に、必ず原理を暴き、量産するように伝えよ」
「はっ。それと報告書を上げておきましたが、ギグ王子の件はどう対処しましょう」
「ギグ王子? 何かあったのか?」
「まだご覧になっておりませんか? セシルと言う人間と一緒にしていたことで、地下牢獄を抜け出し、人間と共に逃走いたしました」
それは不味い。モールガンからやってきたギグ王子捜索隊にも、知らぬと追い返しているのに、地下牢に投獄していたと国王に知れれば、再び、戦争になる。
アヘンによるモールガン国内の腐敗も、吾の策略だと知れてしまう。
「人間種の空飛ぶ船は、モールガン王国に向かったのか?」
「それは分りかねます。ですが、ギグ王子と一緒に行動していのは間違いありません」
「わかった。ギグ王子の事は、今のまま極秘扱い。脱獄し、人間と行動を共にしてる事は絶対に漏らしてはならぬ。それとモールガン王国にて、ギグ王子もしくは人間に関する情報収集にあたれ」
「心得ました」
それにしても、人間の女をなぜギグと一緒にした。
人間に関しては、ペダルに一任していたが、ギグと一緒にするなら、一言報告を入れてもいいはずだ。ギグ王子を監禁していることは、極秘扱いなのだから。
まさかギゼルの差し金か。私のやることなすこと、全てに反対し、私のアヘン侵略計画にも反対を唱えていた。もうとっくに諦めていると思ったが、私の邪魔をしようと、まだ考えているとしても、おかしくはない。
そもそもペダルはギゼルの右腕だった女。今でこそ南東部辺境地区の統括議長に落ちぶれているが、政治の中枢を支えていた女だ。ギゼルと共に吾のアヘン流通計画に反対を唱えたので、辺境の地に飛ばしてやったが、その恨みもあり、謀ったとしてもおかしくない。
この際、人間と敵対することになった罪の責任を問わせ、殺しておくか。ナーシャを連れてきたのも、全てナダルの独断だしな。
「ギギ、トーゴに、明朝今回の騒動の問責会を開くと連絡しろ。南東部辺境地区の統括議長のペダルも呼ぶ様に。それとナーシャ殿にはご遠慮頂く様に伝えることも忘れずにな」
ナーシャ抜きなら、ペダルに全責任を負わせるのもたやすいことだ。
マリルは手の指を組んで、口角を上げた。
「今回の件は、吾の判断ミス。人間という異世界人の難民受け入れを素直に受けておれば良かったのじゃ。本当に申し訳ない」
問責会議で、今回の被害報告の後、マリルは立ち上り、全員の前で深々と頭を下げた。
「頭をお上げ下さい女王陛下。ペダル殿の報告書を読めば、あの選択が妥当だと思うのは当たり前です。あんな報告書を提出したペダル殿にこそ、責任があります」
「そうです。今回の誘導作戦だって、明らかなやりすぎ。あれで怒らせ、完全に人間種との交渉の機会を逸してしまいました」
「女王陛下は不問としましたが、命令を無視し、至近距離で爆裂魔法の集中攻撃した事は許せません。それを誘導したのも、ペダルが賓客として招いた大賢者ナーシャ様ですし、ペダルの責任は重いです」
女王の謝罪ポーズにより、大臣連中は見事にペダルに責任を押付ける流れになる。
「発言しても宜しいでしょうか」ペダルが挙手する。
「今回の責任が、私にあるのは重々承知しています。ですので責任を取る覚悟でいますが、今、大事なのは、モールガン王国と戦争となった場合の対策です。今では全くと言っていいほど、モールガン王国に対する防衛対策を取っていません」
「それは、例え条約破棄して戦闘になった所で、脅威ではないとの判断があるからだ。モールガンの鬼どもは、我々よりも遥かに高い身体能力を持つ戦闘民族だが、今は統率困難な程に国家が荒れておる。南方諸国との戦いに疲弊し、アヘンの流行に、治安の悪化。とても我がロシナントと戦争する余力など残っていない。そんな国との防衛対策なんて必要ないし、国家予算の無駄遣いだ」
「ええ、防衛大臣の仰る通りだと私も思います。ですが、人間がむこうに付くとなると脅威以外の何物でもありません」
「この国に愛想を尽かし、次はモールガン王国に行くとでもいうのか」
不味い展開になった。まさか、極秘事項のギグ王子の事を話すつりなのか?
「その可能性が高いと判断します」
「その理由は?」
「申し訳ありませんが、理由に関しては明かせません」
「理由も不明の儘、兵を南方に廻せと言っているか。ギルド帝国やマリーン合衆国の可能性もあるのに、兵を割ける訳がないだろう。話にならん」
「それではここに御集りの皆様の中だけの話に留めて頂くという事で、お話します」
「ペダル殿。それは実際問題、無理と言うものだ。その理由というのを、吾だけに教えてくれぬか?」
「それでは大臣方も納得しないでしょう。秘匿事項ではありますが、皆様にお話しします」
ペダルのやつめ。どうあっても、ギグ王子を監禁していた事実を周知したいらしい。
「皆様も既にご存じと思いますが、人間に精神操作魔法を施し、彼等がこの地に来た本当の理由を聞き出しました。理由等は既報の通りですが、報告していない事もあります。最初に交渉国の候補に選んだのが、ロシナント王国とモールガン王国だったのです。ですので、次に交渉する相手は、モールガン王国の可能性が高いと判断しています」
ふう。極秘事項を洩らす程の馬鹿ではなかったか。だが、これは吾に恩を売る行為。責任は取るが、死罪を言い渡せば、暴露するぞと脅している。
ペダルも食えぬ女だ。
「モールガン王国と戦争になる可能性は高いと判断し、その対策も早急に話し合う必要があると判断する。だが、それは今回の議題にないこと。各自十分な準備ができているとは思えぬ。よって、明朝の会議にて相談することとする。本会議は本来の目的である今回の失態の責任が誰にあるのかを問いたい」
その後、ナーシャ、魔法師団長の責任追及の声も上がったか、ペダルが全責任を負う形となった。
「では、最終審判を下す。全責任を認めたペダルには、南東部辺境地区統括議長の解任、及び、崩壊した王宮修復に掛かる費用の二割負担と、新設しようと考えている人間種対抗戦略室の室長を命じる。国家存続の危機に陥れた罪は重く、この失態は死罪に値するが、彼女ほどの人材を失うのは痛い。よって、人間についてもっともよく知る彼女に、対人間への知恵を絞って貰うことにした。以上で本問責会議は終了とする」
そして、退席しようとすると、ペダルが駆け寄ってきた。
「この度は、寛容な処分。有難う御座いました。それでナーシャとも相談しましたが、あの巨大船と戦えるのは、神龍様しかいないとの結論となりました。戦争せずに穏便に済ませるのが最良と理解しておりますが、どうしても戦争を避けられない事態となった際、神龍様のお力沿いが必要です。この国には、代々、女王陛下にのみ、神龍様と交信する秘術を伝授されているとのこと。是非、その方法をお教え願えませんでしょうか」
「それはできぬ。しかし神龍様を持ち出すとはな。本当に面白い事を考える。参考にさせてもらおう」
神龍様とは、考えもしなかったが、あの船さえ壊せれば、僅かに希望は見えてくる。
神龍様の召喚を真剣に考え始めたマリルだった。
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