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魔物外交編
ギグが国に戻りたくない理由
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「セシル、暫らく会えぬと思うと寂しいぞ」
ギグは俺の目の前で、セシルとハグしやがった。俺ですらした事無いのに、本当に頭に来る。
「いつでもこのイヤホンで話せるでしょう。絶対になくしたりしないでよ」
彼のネクタイを直しながら、笑顔を返すから、益々イライラする。
やはり二人の間に何かあったのか? そうでないと信じたいが、なんでいちゃつく。
もしかして、俺の嫉妬心を煽っている? 態と親密そうに振舞っているのか?
「何をもたもたしておる。早く行かんか」
ついぼうっとしていると、ギグがまた生意気を言って来た。
俺はキャプテンで年上なんだからと、文句を言いたくなるが、ここは笑顔。俺はそれ程、了見が狭くない。
そんな事言う時点で了見が狭って? 違うから。
「じゃあ、行ってくる」
「ケヴィンもガスパも元気でいろよ」
俺がガスパールをガスパと呼ぶので、彼まで偉そうにガスパと短縮する様になった。
二十歳位の新参門の癖にと思うが、ああ見えて、年齢は三十六歳。結構な齢で、セシル、ガスパやケビンよりずっと年上だった。それでも、新参者の下っ端には違いないのだが……。
「食糧素材の交渉、宜しくお願いします」
「分っておるわ」
二人とも彼に下手に出るから、ますます頭に乗る。困ったものだ。
そんな訳でヘリオスの皆に別れを告げ、偵察艇に乗り込み、ギグの叔父であるオルネー公爵家へと出発した。
ギグの叔父は、ギル・オルネーといいオルネー公と呼ばれている。王弟なので、ギル・モールトンではと疑問に思ったが、この国でモールトンの家名を名乗れるのは、国王直属家のみだそうで、彼は新たな家名を国王より貰い、オルネー家の初代当主となったのだそう。
どうでも良い話だが、名前のついでにもう一つ豆知識。ミドルネームについて。
ロシナント国でのミドルネームは、宗教上の洗礼名だが、この国のミドルネームは、母方の家名。ギグのミドルネームのコンロは、王妃の旧姓だ。だが、結婚するとミドルネームが無くなるという面白いルールがある。
つまりギグは三十六歳でも、未だ独身ということ。俺も三十八歳で独身なので、偉そうには言えないが……。
この国は三十六歳で独身は多いのかとも聞いてみたが、種族により全く違うと言う回答。
ゴブリン族は短命で婚姻の概念もないが、五歳位で子作りを始めるのだそう。ゴブリン、コブル、セコブル、ホブリン、ゴウモール、オーク、オグルという順で長寿になって、婚期も遅くなる。
ギグはニ百年近く生きる長寿のオグル族なので、男は四十歳位まで独身が多いとの話だった。
人間の婚期がどんどん遅くなるのも、もしかして平均寿命が延びたからかもしれない。
そしてあっという間に、目的地のオルネー公爵家についた。
王弟の屋敷だけあり、かなりの敷地面積のある豪邸で、庭もかなり広く、余裕で着陸できる。
庭に降り立つと、早速、メイドらしき一角鬼の女性が近寄ってきた。服装は和服に近く、アニメで見た日本旅館の仲居に似た格好だ。
「ギグ王子ですか? 生きておられたんですね。心配しました」
「ミミか。ああ、この通りピンピンしておる。叔父貴は今、いるか?」
「はい、ところでまた新たな風魔法を習得されたんですか?」
「いや、なんでだ?」
「物凄い突風と共に、姿を現したので、空を飛んで来たのかと思いまして」
できるだけ強風にならない様に発進させたが、かなりの突風になってしまった。
これだけ庭が広いのなら、着陸させたままでも良かったが、迷惑にならないように、偵察艇はステルスモードのまま、上空待機させておくことにした。
「ワッハッハ、そんなことか。確かに空を飛んで来た。我にとって造作もない」
単に偵察艇で来ただけな癖に、本当に偉そうだ。
なぜか、ギグの一挙手一投足に腹が立つが、これはやはり嫉妬しているのだろうか。
その後、屋敷内の応接間に案内され、程無くオルネー公爵が現れた。
年齢は八十歳と聞いていたが、見た目は人間でいう四十歳位で、ギグより少し背が低く165センチ程の身長だ。
服装はユニーク。一昔前の豪邸に似た建物や装飾品なのに、浴衣とも作務衣とも違う調度品とはそぐわない様なラフな着物姿をしていた。
「変な恰好をしておるが、紛れもなくギグ。本当に生きておったか」
そっちの格好の方が変だろうと突っ込みを入れたくなるのを我慢する。
「変か? いかした恰好だろう」
今の俺らは白のワイシャツに派手なネクタイのスーツ姿。俺は更に中折れ帽をかぶっている。
国王と謁見するので、燕尾服をと思ったが、前回、長期滞在となり懲りたので、今回はスーツ姿にすることにした。
帽子は、例の翻訳器を搭載したもの。今度は鬼の国に行くので、リザードマン風マスクではなく、この角付の帽子になった。
マスクとは違うので、英語とセジアス語とが同時に流れることになるが、それでも実用上問題ないし、食事の時、いちいちつけたり外したりしなくて済む利点がある。
でも、変な恰好とはショックだ。地球では目立たない格好でも、この国では変な格好に映るらしい。
アテーナは気づいていた筈なのだから、教えてくれればいいのに、敢えて恥を掻かそうと教えなかったに違いない。
【私はそれ程意地悪ではありません。キャプテンが楽しそうに服を選んでおりましたので、敢えて申し上げかなかっただけです】
それでも、この国の衣装として不適切とおもったなら、ちゃんと教えろ。
「捜索隊まで出して探し回っていたのじゃぞ。何しておった」
「ちょっと色々とあって、戻れなかった」
ロシナント王宮の地下室に捉えられていたと言わないのは、彼のプライドからなのだろうか。
「キキが、心配しておったぞ。後で挨拶に行ってやれ。それでこの方は」
「俺の命の恩人。自己紹介せえ」王子かなにか知らないが、本当に生意気な奴だ。
「モロウ・カシワギと申します。空の彼方の地球という星から来た人間です」
俺が帽子を脱ぐと、彼は目を丸くして驚いていた。俺を鬼人と信じていたらしい。
「驚くのも無理はないが、彼等は本当に異世界人なんだ。その異世界が間も無く大爆発を起こし住めなくなるとかで、この国に住まわせて欲しいと、交渉にやってきた」
オルネー公は冷ややかな目で俺らを交互に見る。
「嘘じゃない。本当だ。俺もその『宇宙船』という空飛ぶ巨大船にいたんだ。叔父貴、この台地が丸い球体だと知ってたか?」
「この台地が丸いとか、空の上に異世界があるとか、信じられる訳がないが、訳ありだと言うのは分った。モロウ殿を歓迎する」
そういって深々と頭を下げて来た。日本式の歓迎の証の様だ。
俺も同じ様に、頭を下げた。
その後は、ソファに腰掛け、雑談が始まった。
ギグは、オルネー公に本当の話だと信じさせようと、いろいろと説明を始めたが、最後まで彼は本当の話だと思っていなかったみたいだ。
「それで、今からモールトン王に連絡を入れるが、客人との会見もだと、今晩と言う訳にはいかんかも知れぬ。それで構わぬか?」
ここは王都近隣にあるので、早馬なら二時間も掛からずに行ける距離だが、やはり国王との謁見となると、それなりに時間が必要らしい。
「はい、構いません。出来るだけ早く、謁見できるようお願いします」
その後、昼食を御馳走になったが、味も見た目も食感も今一。ロシナント王宮の食事とは較べものにならなかった。
午後は、ギグにこの周辺を案内してもらった。近くに森があり、そこに入ったが、色々な草花や、川も滝もあり、マイナスイオンに溢れ、本当に良い所だった。
そして、そこで俺は待望の妖精にあった。最初はキラキラと光る程度で何か分らなかったが、ギグが捕まえて見せてくれた。
こちらでは、昆虫の一種になっているらしいが、トンボの様な羽が生えた十センチ位の人型種で、男とも女ともわからない子供の様な身体をしている。
普段は光学迷彩の様に身体が透明になっていて、怒ったり、危機を感じたりすると、実態が現れる。
可哀相だから、逃がしてやったら、直ぐに羽以外は透明になり、どこかに飛んで行った。
セシルが、新たな生物を見られて、大喜びしたこともあり、ギグは魚も見せてやると、川の中に入って行った。
素手で捕まるものかと静観していたら、本当に素手で捕まえた。
「こいつは食べると旨いんだ」
岸に上って来て、見せてくれたが、十センチ程のグロテスクな人面魚。否、人魚に近く、雌なのか乳房まである。
これもトカゲ族の様に卵生ではなく、胎生哺乳類なのかもしれない。
セシルに言われて、じろじろと覗き込む様に見ていたら、突然、口から水鉄砲を吐いて来て、頬に傷ができた。直撃していたら大怪我する程の威力。
ギグによると、『魔法持ち』だったらしい。川に流れる小さな魔晶石を体内に取り込む事ができた魚は、水魔法を使えるようになるのだとか。
海にはかなり大魔法を使える巨大魚がいるという話だった。
ギグはその魚を焼いて食べる気だったらしいが、セシルが可哀相だからといって、そのまま逃がしてやった。
屋敷に戻ると、既に王宮への使者が戻って来ていて、明日の執務時間後の夕刻、国王が会ってくれることになったと伝えてくれた。
そして、その日は、湯船に浸かり、ここの普段着らしい変わった着物を着て、客間として用意された部屋のベッドに潜り込んだ。
ここのベッドもフカフカで、人間界のセミダブルベッド位の大きさがあり快適そのもの。
そして眠っていると、変な感触で目が覚めた。なんと裸の一角鬼が俺のベッドに潜り込んでいる。布団を捲ってみると、ここのメイドのミミさんだった。
「何してる!」
俺の言葉を拾って、ベッドの上の帽子から、セジアス語が流れる。
【アテーナ、絶対に皆を起こすなよ】
俺は慌ててイヤホンを耳に当て、帽子を被った。
【どうしようかな。セシルさんだけでも起こそうかな】
そんな事はしない筈だが、本当に嫌な奴だ。
「ご主人様から、モロウ様をもてなす様にとの命令ですので」
ずり上がって来たミミが、説明してくれた。
奴隷と言う訳でもないのに、命令なら、誰とでも寝るのかよ。
「御免、折角だけど、そういうのはいいから」
「そうですか。残念です」
何が残念なのかは分らないが、ベッドを降り、着物を着始めた。
俺は目を逸らして、見ない様にしながら話す。
「君はここの奴隷なのか?」
「いいえ、違います。住み込みで働かせて頂いているだけです」
「なのに……」 聞きかけて、言葉を飲み込んだ。
「何ですか?」
「いやいい。君は角が一本しか生えていないけど、オグル族の女性はそうなの?」
「何か勘違いしてますね。何もしませんので、一緒に添い寝しても構いませんか? 寝物語にお話しします。それに、部屋に戻って休むと、御主人様に怒られてしまいますので……」
何もしないのなら仕方がないと頷くと、ミミが潜り込んできた。
だが、躰をぴったり密着して抱きついて来て、指で俺の胸を擦って来る。
【やはり、皆さんを起こした方が良さそうですね】
【止めて、御願い。話をするだけだから】
【貸しですよ】
「私は、下等な種族で、オグル族の様に高貴な存在ではありません。ホブ・エボリュート・ゴブリン族。略してホブリンと呼ばれる種族になります。体内に魔晶石を取り込み進化したゴブリン種で、体型はオグル族と同じ様に変化し、寿命も四十歳位に延びます。ですが、中身はゴブリンそのもの。一応、私には夫も子供もいますが、貞操観念はなく、性欲も旺盛な種族になります。だから、ご主人様から接客を任されると、こういう接待もさせて貰っています。今日はモロウさんと楽しめると思って期待していましたのに、人間と言う種族も性に対して淡白なんですね」
そう言って今度は胸を押付けて来た。着物の様な服を着ていても、その感触が伝わって来て興奮してしまう。
「うふっ。やっぱり、オグル族とは違うみたいですね」
そう言って、彼女が俺の股間を擦り出した。
「ちょっと、何もしないって……」
その時だった。
【最低、一体、これはどうなってる訳】
突然、セシルの声が聞えて来た。あれ程内緒にしろと命じたのに、態々起こしたらしい。
【なになに、面白い事になってるじゃん】今度はガスパの声。
【録画も再生しよう】
勘弁してくれ。
「ミミさん、御免。君が魅力的女性なのは確かだけど、俺には心に誓う好きな女性がいるんだ。分って欲しい」
「ちっ、許婚持ちかい。折角、出来る雰囲気だったのに……」
そう言って、再びベッドから出てくれた。
「この事は、ご主人様には内密に。万一、ご主人様に知れると、首になりますので」
そう言って、頭を深々と下げると、すたすたと出ていた。
さっきは一緒に寝ないとご主人様に怒られると言ってたのに、嘘だったのかい。
その後、セシルさんの機嫌を取るのに大変だったのは言うまでもない。
そして、翌朝、何事も無かった様にミミさんが給仕して朝食を取っている時、事件が起きた。
「ギグは何処」
女性の声が聞え、どたばたと言う足音が近付いて、バタンとドアが開いた。
そこに立っていたのは、セシル似の鬼。角が二本ある若い女性の鬼人だ。セシルが若い時は、きっとこうだったのではと思わせる顔立ちをしていた。
「ギグ、いるんでしょう。分ってるんだから」
隣で食事をしていた筈のギグが、いつの間にか消えていた。
「キキ、お早う。こんな早くにどうしたんだ」
「ギル小父様、お早うございます。ギグが小父様の家にいると聞き、早や馬にて駆け付けました。ギグはどこですか?」
オルネー公は、そっと視線を横のサイドテーブルに向ける。其処には小さく丸くなって震えるギグの姿があった。
【ギグにも天敵がいるんだな。キキって何者なんだ】
「見つけたわ。そんなに私と結婚するのが嫌だったわけ」
えっ。
「違うんだ。これには深い訳があって、結婚式までに帰る事ができなくて」
えっ、えっ、どういうこと?
「その深い訳って何よ。洗いざらい話しなさいよ」
それからは、床に正座させられ、彼女が小さくなったギグを睨みつけて見下ろす感じで、彼女の詰問が始まった。
最初は誤魔化そうとしていたギグだが、覚悟を決め、小声で話し始める。
結婚式が近付いて来るに従い、気持ちが落ち込んでいったこと。
結婚前に、旅をしようと、王宮から一人で逃走したこと。
捜索隊に見つかり、連れ戻されそうになり、結婚式までの期限付きで、一緒に旅する事になったこと。
その旅の途中で、ロシナント王国の麻薬製造工場を発見してしまった事。
ロシナント王国の地下牢に捕まっていて、結婚式に戻れなかったこと。
「はあ、捕まってたですって。もっとましな嘘を尽きなさいよ。大人しく捕まる様な玉じゃないでしょう。それにロシナント王国とは友好関係にあるの。王子を地下牢に入れるなんてありえないから」
「モロウ、頼む。本当だと説明してくれないか。お願いだ」
おどおどと脅えるギグを見るのは楽しいが、仕方なく助け船を出すことにした。
「キキさん、私は五日前から、彼と一緒に旅をしているモロウといいます。彼のいう事は本当です。ロシナント王国の民は、平和で心優しい印象がありますが、狡賢い悪者揃いです。私も私の仲間の一人も、彼らの謀略に嵌り、酷い目にあいました。仲間の協力で何とか脱出しましたが、ギグは私の仲間が捕まっていた隠し地下室に、一緒に幽閉されていました。やせ細り、今の彼とは見違える程の姿でしたが、私の仲間と共に彼も救出した次第です」
「では、ロシナント王国にて幽閉されていたと言うのは本当なのか」
「はい」
「嘘よ。彼がリザードマンごときに、捕まる訳がない」
「それも術策で、毒を盛られたらしいです」
「キキよ。挙式をすっぽかされた怒りは分るが、投獄されていのでは致し方ないではないか。許してやれ」
「分りました。ですが、結婚はします。もう逃がしませんから」
そう言って、思いっきりギグをハグして、人目をはばからず接吻した。
おめでとうと言うべきか、御愁傷様というべきか。
ギグが、王宮に戻りたくないと言った本当の理由が、やっと分った。
ギグは俺の目の前で、セシルとハグしやがった。俺ですらした事無いのに、本当に頭に来る。
「いつでもこのイヤホンで話せるでしょう。絶対になくしたりしないでよ」
彼のネクタイを直しながら、笑顔を返すから、益々イライラする。
やはり二人の間に何かあったのか? そうでないと信じたいが、なんでいちゃつく。
もしかして、俺の嫉妬心を煽っている? 態と親密そうに振舞っているのか?
「何をもたもたしておる。早く行かんか」
ついぼうっとしていると、ギグがまた生意気を言って来た。
俺はキャプテンで年上なんだからと、文句を言いたくなるが、ここは笑顔。俺はそれ程、了見が狭くない。
そんな事言う時点で了見が狭って? 違うから。
「じゃあ、行ってくる」
「ケヴィンもガスパも元気でいろよ」
俺がガスパールをガスパと呼ぶので、彼まで偉そうにガスパと短縮する様になった。
二十歳位の新参門の癖にと思うが、ああ見えて、年齢は三十六歳。結構な齢で、セシル、ガスパやケビンよりずっと年上だった。それでも、新参者の下っ端には違いないのだが……。
「食糧素材の交渉、宜しくお願いします」
「分っておるわ」
二人とも彼に下手に出るから、ますます頭に乗る。困ったものだ。
そんな訳でヘリオスの皆に別れを告げ、偵察艇に乗り込み、ギグの叔父であるオルネー公爵家へと出発した。
ギグの叔父は、ギル・オルネーといいオルネー公と呼ばれている。王弟なので、ギル・モールトンではと疑問に思ったが、この国でモールトンの家名を名乗れるのは、国王直属家のみだそうで、彼は新たな家名を国王より貰い、オルネー家の初代当主となったのだそう。
どうでも良い話だが、名前のついでにもう一つ豆知識。ミドルネームについて。
ロシナント国でのミドルネームは、宗教上の洗礼名だが、この国のミドルネームは、母方の家名。ギグのミドルネームのコンロは、王妃の旧姓だ。だが、結婚するとミドルネームが無くなるという面白いルールがある。
つまりギグは三十六歳でも、未だ独身ということ。俺も三十八歳で独身なので、偉そうには言えないが……。
この国は三十六歳で独身は多いのかとも聞いてみたが、種族により全く違うと言う回答。
ゴブリン族は短命で婚姻の概念もないが、五歳位で子作りを始めるのだそう。ゴブリン、コブル、セコブル、ホブリン、ゴウモール、オーク、オグルという順で長寿になって、婚期も遅くなる。
ギグはニ百年近く生きる長寿のオグル族なので、男は四十歳位まで独身が多いとの話だった。
人間の婚期がどんどん遅くなるのも、もしかして平均寿命が延びたからかもしれない。
そしてあっという間に、目的地のオルネー公爵家についた。
王弟の屋敷だけあり、かなりの敷地面積のある豪邸で、庭もかなり広く、余裕で着陸できる。
庭に降り立つと、早速、メイドらしき一角鬼の女性が近寄ってきた。服装は和服に近く、アニメで見た日本旅館の仲居に似た格好だ。
「ギグ王子ですか? 生きておられたんですね。心配しました」
「ミミか。ああ、この通りピンピンしておる。叔父貴は今、いるか?」
「はい、ところでまた新たな風魔法を習得されたんですか?」
「いや、なんでだ?」
「物凄い突風と共に、姿を現したので、空を飛んで来たのかと思いまして」
できるだけ強風にならない様に発進させたが、かなりの突風になってしまった。
これだけ庭が広いのなら、着陸させたままでも良かったが、迷惑にならないように、偵察艇はステルスモードのまま、上空待機させておくことにした。
「ワッハッハ、そんなことか。確かに空を飛んで来た。我にとって造作もない」
単に偵察艇で来ただけな癖に、本当に偉そうだ。
なぜか、ギグの一挙手一投足に腹が立つが、これはやはり嫉妬しているのだろうか。
その後、屋敷内の応接間に案内され、程無くオルネー公爵が現れた。
年齢は八十歳と聞いていたが、見た目は人間でいう四十歳位で、ギグより少し背が低く165センチ程の身長だ。
服装はユニーク。一昔前の豪邸に似た建物や装飾品なのに、浴衣とも作務衣とも違う調度品とはそぐわない様なラフな着物姿をしていた。
「変な恰好をしておるが、紛れもなくギグ。本当に生きておったか」
そっちの格好の方が変だろうと突っ込みを入れたくなるのを我慢する。
「変か? いかした恰好だろう」
今の俺らは白のワイシャツに派手なネクタイのスーツ姿。俺は更に中折れ帽をかぶっている。
国王と謁見するので、燕尾服をと思ったが、前回、長期滞在となり懲りたので、今回はスーツ姿にすることにした。
帽子は、例の翻訳器を搭載したもの。今度は鬼の国に行くので、リザードマン風マスクではなく、この角付の帽子になった。
マスクとは違うので、英語とセジアス語とが同時に流れることになるが、それでも実用上問題ないし、食事の時、いちいちつけたり外したりしなくて済む利点がある。
でも、変な恰好とはショックだ。地球では目立たない格好でも、この国では変な格好に映るらしい。
アテーナは気づいていた筈なのだから、教えてくれればいいのに、敢えて恥を掻かそうと教えなかったに違いない。
【私はそれ程意地悪ではありません。キャプテンが楽しそうに服を選んでおりましたので、敢えて申し上げかなかっただけです】
それでも、この国の衣装として不適切とおもったなら、ちゃんと教えろ。
「捜索隊まで出して探し回っていたのじゃぞ。何しておった」
「ちょっと色々とあって、戻れなかった」
ロシナント王宮の地下室に捉えられていたと言わないのは、彼のプライドからなのだろうか。
「キキが、心配しておったぞ。後で挨拶に行ってやれ。それでこの方は」
「俺の命の恩人。自己紹介せえ」王子かなにか知らないが、本当に生意気な奴だ。
「モロウ・カシワギと申します。空の彼方の地球という星から来た人間です」
俺が帽子を脱ぐと、彼は目を丸くして驚いていた。俺を鬼人と信じていたらしい。
「驚くのも無理はないが、彼等は本当に異世界人なんだ。その異世界が間も無く大爆発を起こし住めなくなるとかで、この国に住まわせて欲しいと、交渉にやってきた」
オルネー公は冷ややかな目で俺らを交互に見る。
「嘘じゃない。本当だ。俺もその『宇宙船』という空飛ぶ巨大船にいたんだ。叔父貴、この台地が丸い球体だと知ってたか?」
「この台地が丸いとか、空の上に異世界があるとか、信じられる訳がないが、訳ありだと言うのは分った。モロウ殿を歓迎する」
そういって深々と頭を下げて来た。日本式の歓迎の証の様だ。
俺も同じ様に、頭を下げた。
その後は、ソファに腰掛け、雑談が始まった。
ギグは、オルネー公に本当の話だと信じさせようと、いろいろと説明を始めたが、最後まで彼は本当の話だと思っていなかったみたいだ。
「それで、今からモールトン王に連絡を入れるが、客人との会見もだと、今晩と言う訳にはいかんかも知れぬ。それで構わぬか?」
ここは王都近隣にあるので、早馬なら二時間も掛からずに行ける距離だが、やはり国王との謁見となると、それなりに時間が必要らしい。
「はい、構いません。出来るだけ早く、謁見できるようお願いします」
その後、昼食を御馳走になったが、味も見た目も食感も今一。ロシナント王宮の食事とは較べものにならなかった。
午後は、ギグにこの周辺を案内してもらった。近くに森があり、そこに入ったが、色々な草花や、川も滝もあり、マイナスイオンに溢れ、本当に良い所だった。
そして、そこで俺は待望の妖精にあった。最初はキラキラと光る程度で何か分らなかったが、ギグが捕まえて見せてくれた。
こちらでは、昆虫の一種になっているらしいが、トンボの様な羽が生えた十センチ位の人型種で、男とも女ともわからない子供の様な身体をしている。
普段は光学迷彩の様に身体が透明になっていて、怒ったり、危機を感じたりすると、実態が現れる。
可哀相だから、逃がしてやったら、直ぐに羽以外は透明になり、どこかに飛んで行った。
セシルが、新たな生物を見られて、大喜びしたこともあり、ギグは魚も見せてやると、川の中に入って行った。
素手で捕まるものかと静観していたら、本当に素手で捕まえた。
「こいつは食べると旨いんだ」
岸に上って来て、見せてくれたが、十センチ程のグロテスクな人面魚。否、人魚に近く、雌なのか乳房まである。
これもトカゲ族の様に卵生ではなく、胎生哺乳類なのかもしれない。
セシルに言われて、じろじろと覗き込む様に見ていたら、突然、口から水鉄砲を吐いて来て、頬に傷ができた。直撃していたら大怪我する程の威力。
ギグによると、『魔法持ち』だったらしい。川に流れる小さな魔晶石を体内に取り込む事ができた魚は、水魔法を使えるようになるのだとか。
海にはかなり大魔法を使える巨大魚がいるという話だった。
ギグはその魚を焼いて食べる気だったらしいが、セシルが可哀相だからといって、そのまま逃がしてやった。
屋敷に戻ると、既に王宮への使者が戻って来ていて、明日の執務時間後の夕刻、国王が会ってくれることになったと伝えてくれた。
そして、その日は、湯船に浸かり、ここの普段着らしい変わった着物を着て、客間として用意された部屋のベッドに潜り込んだ。
ここのベッドもフカフカで、人間界のセミダブルベッド位の大きさがあり快適そのもの。
そして眠っていると、変な感触で目が覚めた。なんと裸の一角鬼が俺のベッドに潜り込んでいる。布団を捲ってみると、ここのメイドのミミさんだった。
「何してる!」
俺の言葉を拾って、ベッドの上の帽子から、セジアス語が流れる。
【アテーナ、絶対に皆を起こすなよ】
俺は慌ててイヤホンを耳に当て、帽子を被った。
【どうしようかな。セシルさんだけでも起こそうかな】
そんな事はしない筈だが、本当に嫌な奴だ。
「ご主人様から、モロウ様をもてなす様にとの命令ですので」
ずり上がって来たミミが、説明してくれた。
奴隷と言う訳でもないのに、命令なら、誰とでも寝るのかよ。
「御免、折角だけど、そういうのはいいから」
「そうですか。残念です」
何が残念なのかは分らないが、ベッドを降り、着物を着始めた。
俺は目を逸らして、見ない様にしながら話す。
「君はここの奴隷なのか?」
「いいえ、違います。住み込みで働かせて頂いているだけです」
「なのに……」 聞きかけて、言葉を飲み込んだ。
「何ですか?」
「いやいい。君は角が一本しか生えていないけど、オグル族の女性はそうなの?」
「何か勘違いしてますね。何もしませんので、一緒に添い寝しても構いませんか? 寝物語にお話しします。それに、部屋に戻って休むと、御主人様に怒られてしまいますので……」
何もしないのなら仕方がないと頷くと、ミミが潜り込んできた。
だが、躰をぴったり密着して抱きついて来て、指で俺の胸を擦って来る。
【やはり、皆さんを起こした方が良さそうですね】
【止めて、御願い。話をするだけだから】
【貸しですよ】
「私は、下等な種族で、オグル族の様に高貴な存在ではありません。ホブ・エボリュート・ゴブリン族。略してホブリンと呼ばれる種族になります。体内に魔晶石を取り込み進化したゴブリン種で、体型はオグル族と同じ様に変化し、寿命も四十歳位に延びます。ですが、中身はゴブリンそのもの。一応、私には夫も子供もいますが、貞操観念はなく、性欲も旺盛な種族になります。だから、ご主人様から接客を任されると、こういう接待もさせて貰っています。今日はモロウさんと楽しめると思って期待していましたのに、人間と言う種族も性に対して淡白なんですね」
そう言って今度は胸を押付けて来た。着物の様な服を着ていても、その感触が伝わって来て興奮してしまう。
「うふっ。やっぱり、オグル族とは違うみたいですね」
そう言って、彼女が俺の股間を擦り出した。
「ちょっと、何もしないって……」
その時だった。
【最低、一体、これはどうなってる訳】
突然、セシルの声が聞えて来た。あれ程内緒にしろと命じたのに、態々起こしたらしい。
【なになに、面白い事になってるじゃん】今度はガスパの声。
【録画も再生しよう】
勘弁してくれ。
「ミミさん、御免。君が魅力的女性なのは確かだけど、俺には心に誓う好きな女性がいるんだ。分って欲しい」
「ちっ、許婚持ちかい。折角、出来る雰囲気だったのに……」
そう言って、再びベッドから出てくれた。
「この事は、ご主人様には内密に。万一、ご主人様に知れると、首になりますので」
そう言って、頭を深々と下げると、すたすたと出ていた。
さっきは一緒に寝ないとご主人様に怒られると言ってたのに、嘘だったのかい。
その後、セシルさんの機嫌を取るのに大変だったのは言うまでもない。
そして、翌朝、何事も無かった様にミミさんが給仕して朝食を取っている時、事件が起きた。
「ギグは何処」
女性の声が聞え、どたばたと言う足音が近付いて、バタンとドアが開いた。
そこに立っていたのは、セシル似の鬼。角が二本ある若い女性の鬼人だ。セシルが若い時は、きっとこうだったのではと思わせる顔立ちをしていた。
「ギグ、いるんでしょう。分ってるんだから」
隣で食事をしていた筈のギグが、いつの間にか消えていた。
「キキ、お早う。こんな早くにどうしたんだ」
「ギル小父様、お早うございます。ギグが小父様の家にいると聞き、早や馬にて駆け付けました。ギグはどこですか?」
オルネー公は、そっと視線を横のサイドテーブルに向ける。其処には小さく丸くなって震えるギグの姿があった。
【ギグにも天敵がいるんだな。キキって何者なんだ】
「見つけたわ。そんなに私と結婚するのが嫌だったわけ」
えっ。
「違うんだ。これには深い訳があって、結婚式までに帰る事ができなくて」
えっ、えっ、どういうこと?
「その深い訳って何よ。洗いざらい話しなさいよ」
それからは、床に正座させられ、彼女が小さくなったギグを睨みつけて見下ろす感じで、彼女の詰問が始まった。
最初は誤魔化そうとしていたギグだが、覚悟を決め、小声で話し始める。
結婚式が近付いて来るに従い、気持ちが落ち込んでいったこと。
結婚前に、旅をしようと、王宮から一人で逃走したこと。
捜索隊に見つかり、連れ戻されそうになり、結婚式までの期限付きで、一緒に旅する事になったこと。
その旅の途中で、ロシナント王国の麻薬製造工場を発見してしまった事。
ロシナント王国の地下牢に捕まっていて、結婚式に戻れなかったこと。
「はあ、捕まってたですって。もっとましな嘘を尽きなさいよ。大人しく捕まる様な玉じゃないでしょう。それにロシナント王国とは友好関係にあるの。王子を地下牢に入れるなんてありえないから」
「モロウ、頼む。本当だと説明してくれないか。お願いだ」
おどおどと脅えるギグを見るのは楽しいが、仕方なく助け船を出すことにした。
「キキさん、私は五日前から、彼と一緒に旅をしているモロウといいます。彼のいう事は本当です。ロシナント王国の民は、平和で心優しい印象がありますが、狡賢い悪者揃いです。私も私の仲間の一人も、彼らの謀略に嵌り、酷い目にあいました。仲間の協力で何とか脱出しましたが、ギグは私の仲間が捕まっていた隠し地下室に、一緒に幽閉されていました。やせ細り、今の彼とは見違える程の姿でしたが、私の仲間と共に彼も救出した次第です」
「では、ロシナント王国にて幽閉されていたと言うのは本当なのか」
「はい」
「嘘よ。彼がリザードマンごときに、捕まる訳がない」
「それも術策で、毒を盛られたらしいです」
「キキよ。挙式をすっぽかされた怒りは分るが、投獄されていのでは致し方ないではないか。許してやれ」
「分りました。ですが、結婚はします。もう逃がしませんから」
そう言って、思いっきりギグをハグして、人目をはばからず接吻した。
おめでとうと言うべきか、御愁傷様というべきか。
ギグが、王宮に戻りたくないと言った本当の理由が、やっと分った。
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