凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造

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第三章 魔王討伐という名の試練

ミユーイの固有領域は、考えたくもないものでした

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 漸く最後の試験の終点に来たが、そこに扉はなく、べとべとの粘液で覆われた肉塊があるだけだった。
 その肉塊には、直径三十センチ程の穴があいていて、その穴を中心に半径六十センチ程の半円状に肉塊が形成されていて、下三分の一は地面に埋もれている。
 この肉塊内に、ミユーイのいる固有領域があるらしい。
「どうやって入るのかしら」
 ユリがその肉塊に触ると、その穴から粘液が噴き出し、僕らはべとべとになった。粘液が、防具の中にまで入り込んで、臭いし気持ち悪い。
 だが、その粘液を浴びたお蔭で、僕とユリとを繋いでいた革ベルトが溶けていき、二人三脚状態から抜け出すことができた。
 ローラとフレイアも、それに倣ったが、ローラが防壁結界を展開して粘液を浴びることを防ぎ、足だけをべとべとにするだけで、対処していた。

 肉塊はかなり柔らかく、ユリがその穴を押すと、穴を広げることができ、四つん這いになれば通れそうだ。
「気持ち悪いけど、ここにはいるしかなさそうね」
 そう言って、ユリが一人で先に穴の中に入って行った。
 僕はしんがりで、三人が入って行くのを護衛する。

 スロープの四分の三地点の様子を確認すると、ゴーレムは未だ健在で、既にロケット砲も弾切れになったのか、各自の武器で、四人が奮戦していた。
 ゴーレムはかなりボロボロで身体中の石が削り取られ、顔は半壊している。
 それでも、右手で叩き潰し攻撃してきていたが、アーロンが斧でその腕を切り落とした。二人で息を合わせないと、攻撃できずに、転ぶだけとなるが、大したものだ。

「三人はもう固有領域に入ったので、もう時間稼ぎは不要です」
 そう大声を出して伝えたが、ちらとこちらを見ただけで、彼らは戦い続けていた。
 はやく、こっちに来ればいいのにと一瞬考えてしまったが、考えてみれば、ゴーレムが、この穴を通る隙を見逃すわけがない。ゴーレムを倒さないかぎり、彼らがこの穴を安心して抜ける手段がないのだ。
 僕は、彼ら四人に後を任せ、僕も穴を潜ることにした。

 粘液まみれになって、穴を潜っていると、苦しそうな女性のうめき声が聞こえて来た。いや、これは艶めかしい女の悶え声だ。
 その声で、僕も興奮してしまったが、何が起こっているのだろうと、グニョグニョの穴の中を、ハイハイしながら、先を急いだ。
 中は行き止まりだったのか、剣とナイフで引き裂かれていて、中から光が漏れている。
 その裂け目から中に入ると、やはり粘液まみれの肉塊でできた洞窟だった。さっきの穴よりは足場がしっかりしているが、床はクッションの様に柔らかい。光の正体は、ユリの照明魔道具だった。
 そして、中央付近で、ローラが、四つん這いになって、全く戦闘できず、恍惚の笑みを浮かべている。
 そんなローラを守ろうと、ユリとフレイアの二人が、必死に防戦している。だが鞭は、防いでもしなり、ローラの身体を鞭打つことになる。すると、ローラは再びうめき声をあげ、身体を大きく痙攣させた。
 僕も参戦しようとしたが、足が痙攣して、踏み込めなくなっていた。血気胸で苦しいのもあるが、この固有領域内では、身体が勝手に興奮し、今まで経験した最高の快楽が頭の中で蘇ってしまうのだ。
 しかも、射精しても賢者タイムが訪れず、再び次の射精感が押し寄せてくる。
 僕の股間は、既にグショグショになり、ゆっくりと歩いてちかづくしかできなくなっていた。
 フレイアだけは、警戒に動き回っているが、ユリも、足がブルブルと震えていて、立っているのがやっとの状態だ。
 再び、ローラに鞭が当たり、彼女は白目をむいて失神したが、身体はビクン、ビクンと痙攣し続けている。

「このガキはやっかいね。先に始末してあげるわ」
 今度は、フレイアに鞭が飛ぶ。鞭がフレイアの服を引き裂いたが、フレイアはナイフを投げて反撃していて、ミユーイの眉間に突き刺さった。
「よくも私の顔に傷をつけたわね」
 魔人がタフなのは知っていたが、眉間に深々とナイフが突き刺さったのに、ミユーイは死なず、そのナイフを引き抜いて、再び鞭をフレイヤに振るう。
 僕とユリが盾になって、鞭を受け、彼女を守った。
「かなり効いているはず。私たちが盾になるから、フレイアは攻撃を続けて」
 フレイヤは今度は弓矢で攻撃をはじめ、僕とユリは剣で必死に鞭をはたき落とすが、鞭打ちされ続ける。
 僕は最後のヒールを発動して、完全に魔力切れになり、それからはどんどん体力を削られてく。
 ユリも、呼吸が苦しいのか、膝をつき、僕は瀕死になって、その場に倒れて意識を失った。

「もう少し、頑張って」
 おぼろげにユリの声が聞こえ、フレイアの癒しの歌も聞こえてきた。お蔭で、精神的にも落ち着いてきて、意識が完全に戻り、目を開けた。
 すると、ユリが大変なことになっていた。剣は絡めとられたのか手ぶらで、服もびりびりに割かれて上半身裸に近い状態で、身体中鞭の痕だらけだったのだ。それなのに、大の字になってフレイアの前に立って、一人で盾役をしている。鞭を受けてもひるまず、仁王立ちし続けている。
 真正マゾ女とSMの女王様との一騎打ちの様相だ。

 ミユーイの方を見ると、彼女も片膝をつき、ヤマアラシの様に身体中に矢を受け、右目にも矢が刺さっていた。そんな状態でも、彼女は、鞭を振るい居続けていた。

 僕は剣を手に立ち上がり、ふらふらしなから、彼女の方へ歩みをすすめる。
 ミユーイの攻撃が、今度は僕に向いたが、次の瞬間、もう片方の目にもフレイアの毒矢が突き刺さった。
「ファゼル様、申し訳ありません」
 力尽きたのか、彼女は前のめりに倒れた。
 僕は、そのまま歩みを続けて近づくと、彼女はまだ絶命してはいなかった。放置しておけば、そのまま死にそうだが、僕は、彼女の背から剣を突き立て、心臓を突き刺して止めを刺した。
 ミユーイの肉体が塵に帰り始め、漸く身体の興奮も治まり、賢者タイムが始まった。

「ローラ、大丈夫」
 失神していたローラも目を覚ます。
「なんて格好なの。今すぐ修復するから」
 ヒールが先だろうと思ったが、ローラはまず彼女の服を元通りに修復させていた。
 これで僕も遠慮せずに近づける。
「ユリが耐えられたのって、まさか処女なの」
 次の瞬間、僕はユリに蹴り飛ばされ、再び意識が遠のいていく。
 肋骨が折れているというのに、ユリは僕には容赦なしだ。もしかして、このまま死んでしまうかもしれない。僕の意識は薄れていき、そのまま意識を失った。

 目を覚ますと、周囲が一変していた。肉塊がまだ天井や壁に残っていたが、塵になりかけていて、床はしっかりしたウレタン舗装の陸上トラックの様になってた。
 ポーションを飲ませてもらえたのか、僕の体力もかなり回復していた。
 ローラの笑い声が聞こえ、見るとゴーレムと戦っていた四人もいて、アーロンが夜食を料理を作っていた。
 
「まさか、この肉って」
「柔らかくてうまそうだろう。コブクロは最高食材だからな」
 つまりさっきまであった固有領域は、ミユーイの子宮だったことになる。と言う事は、その前の穴は……。変なものを想像し、ぞっとしてしまった。肉塊の穴は屈んで通れそうなドーム状の穴にになっていた。

 でも、子宮だとすると、ここは行き止まりなのかと反対側をみると、ちゃんとした扉があった。この先が、魔王ファゼルの部屋と言う事になる。

「ゴーレムは倒せたの?」
「いや、あと少しの所まで来ていたんだが、お前たちがミユーイを倒してくれたお蔭で、勝手に崩れ去って、足のベルトも千切れるほどに脆くなったんだ。ユリに聞いたが、官能攻撃で力をだせず、苦戦したんだってな。男装処女のフレイア様様だ」

 トルスタンの三人は、何の肉なのか知らずに、ホルモン料理だと思い込み、美味しい美味しいと、食べていた。流石に、あの女魔人の子宮を食べる気はしなかったが、他に食べ物はないので、仕方なく口に入れてみた。
 アーロンのゲテモノ料理はやはりうまい。今回ももつ煮込みのようで、コリコリと歯ごたえがあるが、柔らかく一口食べると癖になる味で、結局、お代わりまでしまった。

 既に深夜なので、寝ることになったが、僕はなかなか寝付けなかった。
 明日はいよいよ魔王との対戦だが、本当に魔王とまともに戦えるのだろうか。
 持って来てた回復薬は、ほとんど消費し、残りはエクストラポーションが一つと、マナポーションが一つで、毒消しや、ホーションを作る薬草も、もう何もない状態だ。
 トルスタンのロケット砲も全弾使い果たし、僕とユリは、肋骨骨折に外傷性血気胸で、アーロンは脇腹を抉られている。
 スキルが使えれば、まだ可能性はあるが、そのスキルさえ、無効化されている状態だ。

 初見で勝てる相手とは、思っていないが、何度か再戦するにしても、こんな装備じゃ勝てる気がしない。
 ファゼルが紳士で、僕らを見逃してくれるならいいが、そうでないと、確実に死者をだしてしまう。
 僕があの時、トルスタンのヒーラー、リブルスを殺して居なければ……。そんな後悔までしてしまう自分がなさけなくてならなかった。


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