昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景

文字の大きさ
6 / 12

第六話

しおりを挟む
 大通りや小さな商店街を抜けながら歩く事およそ30分、俺達は件の神社に着いた。そこはいつものように厳かな雰囲気だったが、いつもよりもなんだか人も多くて少し賑やかな感じであり、その雰囲気に俺は珍しさを感じていた。


「あれ、何だろう……? 人も多いし、なんだか賑やかだ」
「何かイベントでもあるのかな? しば君、普段はこんなに賑やかじゃないんだよね?」
「はい。たまに参拝客は多い時はありますけど、初詣とかでもないのにこんなに多いのは珍しいです。ほんとになんでなんだろ……」


 俺はもう一度境内に目を向ける。初詣の時によく見るような屋台も多く出ており、境内や俺達のように鳥居の前にいる人達の顔はワクワクして何かを待っている感じだった。そういう様子を見て夕希さんはイベントでもあるのかと判断したのだろう。

 そして何があるのかと思いながら辺りを見回すと、鳥居のそばに立て看板が置かれているのが見えた。その内容は俺でも名前を知っている声優のイベントを報せる物で、どうやらそれがこの人だかりを生んだ理由のようだった。


「四季夏葉なつは……なんか位置情報を使ったアプリゲームの主題歌を歌ったり登場キャラクターの声をやったりして一気にメディアの露出も多くなった声優だったよな? でもこの人、こっちの出身だっけか?」
「噂だと従姉妹がこっちの方に住んでるんだってさ。なんでも俺達と同い年らしいぜ?」
「へー、そうなのか。それじゃあそれが理由でこっちでイベントをするって感じなのかな?」


 そうだとしたら四季夏葉は相当な従姉妹好きなのかもしれない。そんな事を思いながら苦笑いを浮かべていると、夕希さんが静かに頷いた。


「そうかもね。せっかくだから、私達も見てみる? 声優さんが出てくるイベントにいく機会は中々ないし、こっちの方でやること自体が稀なとこあるしさ」
「そうですね。これも何かの縁だと思いますから俺は賛成です。泰希はどうだ?」
「俺も賛成だな。間近で声優を見る機会はたしかに中々ないし、この賑やかさに乗らない理由はないからな。よっし、そうと決まれば中に入ろうぜ」


 俺達は鳥居をくぐって中に入った。本当は礼儀通りに鳥居の前で一礼をしたかったけれど、他の人の邪魔になるのでそれはしなかった。そして中に入ると、イベントを待ちわびる人達の熱気で少し暑いくらいであり、初詣の時並みの人の多さと賑やかさに困惑するくらいだった。


「これはスゴいな……テレビとかでたまに見る程度だったけど、四季夏葉ってそんなに人気の声優だったんだな」
「まあ新人時代からアニメやゲーム好きからの人気はあったみたいだし、それが一般の人にも広がればこんなもんだろ。大和、姉ちゃんが迷子にならないようにしとけよ。こんなに人が多いんだし、この騒ぎに乗じて何かをしでかそうとしてる奴もいるだろうしな」
「わかってる。夕希さん、俺の手を握っててくださいね」
「う、うん……」


 夕希さんが俺の手を握った後、俺は痛くならない程度に握り込んだ。そして人混みの中を進み、長い参道や二つある石段を越えていくと、そこには拝殿があり、元日などに九星の運勢が飾られるところにはよくテレビで見るアナウンサーやイベントの主役である四季夏葉の姿があった。


「おっ、今はインタビュー中みたいだな」
「だな。イベントはまだみたいだし、ここで待っとくか。」
「そうだね。それにしても、夏葉ちゃんって本当に可愛いね。前に雑誌のグラビア飾ってるのを見かけたけど、生で見るとより可愛く見えるよ。流石は人気声優さんって感じ」
「そうかもしれませんけど、夕希さんだって負けてないと思ってますよ。ただ綺麗なだけじゃなくて大人の色気もありますし、スタイルも良いですから。モデルとか女優やっててもおかしくないくらいですし、それで表紙とか飾ってたら即買いますよ」
「そ、そっか……ありがとね、しば君」
「どういたしまして」


 俺が答える中、泰希は俺達を見ながらニヤニヤしていた。そして数分が経った頃、四季夏葉にマイクが渡されると、俺達を見ながらにこりと笑った。


「みなさーん! こんにっちはー!」
『こんにちはー!』
「大きな返事、ありがとうございまーす! いま話題の人気絶頂声優、四季夏葉でーす! あー、そこの人! 自分で言うのかいって思ったでしょー!」


 そのお客さん弄りに会場が沸く。


「あははっ、そういうのもあるんだな!」
「だな。結構そういうの慣れてそうだし、こういうトークにも期待出来そうだな」
「たしかにね」


 俺達が話す中、四季夏葉は笑みを浮かべながらトークを続けた。


「今回は従姉妹にも馴染みがあるこの神社でイベントをさせてもらえる事になって非常に嬉しいです。歌やトークでいっぱい楽しませていくつもりなので最後まで見てもらえると嬉しいです。よろしくお願いします!」


 その言葉に拍手が送られると、四季夏葉はマイクを片手に笑みを浮かべた。


「それじゃあまずは一曲。私がキャラクターボイスも務めていた『妖怪さんとGO!』の主題歌、“Walking!”」


 軽快なリズムの音楽がスピーカーから流れる中、四季夏葉は楽しそうに歌い始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

処理中です...