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第七話
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「ふう、中々いいイベントだったな」
イベントが終わり、神社を出るために歩きながら言った泰希の言葉に俺と夕希さんは揃って頷く。
「だな。歌ってた曲はどれもいい感じだったし、合間合間のトークも上手で話し方も好印象だった。これはたしかに人気も出るなと思ったよ」
「そうだね。ここの話題出さなかったらわざわざ来ようとは思わなかったし、これはしば君に感謝しないとなあ」
「そんなことないです。むしろここに来ようと言ってくれた夕希さんのおかげですよ。いい経験をさせてくれてありがとうございます、夕希さん」
「しば君……ふふ、それならそういう事にしておこうかな」
「はい、そうしてください」
夕希さんの言葉に答えていた時、目の前を歩いていた同年代らしき一団の一人のポケットから白い綺麗なハンカチが落ちるのが見えた。そして俺はそれをすぐに拾うと、それを持ちながら落とした人の肩を叩いた。
「すみません、ハンカチ落としましたよ」
「え? あ、本当だ。すみません、ありがとうございます」
「いえいえ」
ハンカチを手渡すとその人は嬉しそうに微笑んだ。短い黒髪に平均的な高さの背丈、カジュアルな服装に身を包んだその人は俺達と同じくらいの歳に見え、正直容姿的に目立つ方ではなかった。けれど、漂わせている雰囲気は見ているだけでこちらを安心させる物であり、隣に立っている白いワンピース姿の美少女も同じような雰囲気を漂わせていた。
「危なかった……早穂さんに生地を選んでもらって、芽衣子さんに織ってもらった大切なハンカチだし、失くさないようにより気を付けないと」
「大切な恋人二人からの世界に一つだけの贈り物だしな。歩、失くさないように本当に気を付けろよ?」
「貰った次の日に学校に持ってきてた時の喜びようは本当にスゴかったよね。なんだか見てるこっちまで嬉しくなるくらいだったし」
「ふふ、それだけ喜んでいただけるのは嬉しい事です。そうですよね、芽衣子?」
「はい、そうですね」
芽衣子と呼ばれたパンツルックの女性が頷く中、俺はさっきの言葉に疑問を覚えた。
「大切な恋人二人……?」
「はい。僕は共田歩、そしてこちらの二人が僕の恋人の御供早穂さんと吉良芽衣子さんで、こっちの二人が僕の友達の魚倉進君と四季陽花さん。さっきまでイベントをしていた夏葉さんは陽花さんの従姉妹で、僕達も夏葉さんの友達なのでイベントを揃って見に来たんです」
「四季夏葉の従姉妹っていう情報も中々驚いたけれど、恋人が二人っていうのが現実にあるのも驚いたな……」
「たしかに……」
「ふふ、それはそうですよね。でも、二人の気持ちはしっかりと受け止めた上で決めた関係ですし、僕も二人の事を同じくらいに愛しています。これまでもそしてこれからも」
歩の言葉に早穂さんと芽衣子さんは嬉しそうな笑みを浮かべる。それだけこの三人の絆は固いもので、世間からの風当たりが強くとも自分の想いを大事にするのだという強い意思を感じた。
「……なんか良いな、そういうの」
「ありがとうございます。そういえば皆さんも夏葉さんのイベントを観にいらしたんですか?」
「そうだ。本当は神社に来る事が目当てだったんだけど、入り口のところでイベントの存在を知ってせっかくだから観てみようって話になったんだ」
「そうだったんで──」
「ハルちゃーん! みんなー!」
そんな声が聞こえて俺達はそちらに顔を向けた。すると着替えた四季夏葉が走ってきていて、それに驚く間もなく四季夏葉は陽花さんに突然抱きついた。
「わっ……もうお姉ちゃんったら……」
「えへへぇ、ハルちゃんだぁ。来てくれてほんとに嬉しいなぁ」
さっきまでのハキハキした明るい話し方とはまるで別人のようにうっとりとした言い方で四季夏葉は陽花さんに抱きついており、歩達はそれを見てまたかといった顔をしていた。
「あはは……夏葉さん、本当に陽花さんの事が大好きだなぁ」
「そうみたいだな……」
「けど、このままでもよくないし、みんなでどっかに移動しようぜ」
「だね。あ、皆さんもよかったらどうですか?」
突然のその言葉に俺達は驚く。
「え、良いの?」
「はい。大勢の方が楽しいですから。夏葉さんもいいですか?」
「うん、いいよ。さっきのイベントを見てくれてた人達だし、どんな風に見えたか感想も聞きたいな」
「そういう事なら……というか、俺達の顔を覚えてたんですね」
「ふふっ、誰かの顔を覚えるのは得意なんだ。職業柄、お仕事で会った人の顔を覚えないといけない時は多いし、元から友達が多い方がいいなって思ってるから。ということで、みんなも友達になってくれたら嬉しいな」
夏葉さんの言葉に俺達が頷くと、歩はにこりと笑った。
「よし、それじゃあ行こうか。ファミレスとかでいいかな?」
「いいと思うぜ。ファミレスならのんびりいても問題ないしな」
「ふふ、だね」
そして俺達はファミレスに向けて歩き始めたが、歩いていく歩の背中は大きく見え、さっきまでとは違う心強さで満ちていた。
イベントが終わり、神社を出るために歩きながら言った泰希の言葉に俺と夕希さんは揃って頷く。
「だな。歌ってた曲はどれもいい感じだったし、合間合間のトークも上手で話し方も好印象だった。これはたしかに人気も出るなと思ったよ」
「そうだね。ここの話題出さなかったらわざわざ来ようとは思わなかったし、これはしば君に感謝しないとなあ」
「そんなことないです。むしろここに来ようと言ってくれた夕希さんのおかげですよ。いい経験をさせてくれてありがとうございます、夕希さん」
「しば君……ふふ、それならそういう事にしておこうかな」
「はい、そうしてください」
夕希さんの言葉に答えていた時、目の前を歩いていた同年代らしき一団の一人のポケットから白い綺麗なハンカチが落ちるのが見えた。そして俺はそれをすぐに拾うと、それを持ちながら落とした人の肩を叩いた。
「すみません、ハンカチ落としましたよ」
「え? あ、本当だ。すみません、ありがとうございます」
「いえいえ」
ハンカチを手渡すとその人は嬉しそうに微笑んだ。短い黒髪に平均的な高さの背丈、カジュアルな服装に身を包んだその人は俺達と同じくらいの歳に見え、正直容姿的に目立つ方ではなかった。けれど、漂わせている雰囲気は見ているだけでこちらを安心させる物であり、隣に立っている白いワンピース姿の美少女も同じような雰囲気を漂わせていた。
「危なかった……早穂さんに生地を選んでもらって、芽衣子さんに織ってもらった大切なハンカチだし、失くさないようにより気を付けないと」
「大切な恋人二人からの世界に一つだけの贈り物だしな。歩、失くさないように本当に気を付けろよ?」
「貰った次の日に学校に持ってきてた時の喜びようは本当にスゴかったよね。なんだか見てるこっちまで嬉しくなるくらいだったし」
「ふふ、それだけ喜んでいただけるのは嬉しい事です。そうですよね、芽衣子?」
「はい、そうですね」
芽衣子と呼ばれたパンツルックの女性が頷く中、俺はさっきの言葉に疑問を覚えた。
「大切な恋人二人……?」
「はい。僕は共田歩、そしてこちらの二人が僕の恋人の御供早穂さんと吉良芽衣子さんで、こっちの二人が僕の友達の魚倉進君と四季陽花さん。さっきまでイベントをしていた夏葉さんは陽花さんの従姉妹で、僕達も夏葉さんの友達なのでイベントを揃って見に来たんです」
「四季夏葉の従姉妹っていう情報も中々驚いたけれど、恋人が二人っていうのが現実にあるのも驚いたな……」
「たしかに……」
「ふふ、それはそうですよね。でも、二人の気持ちはしっかりと受け止めた上で決めた関係ですし、僕も二人の事を同じくらいに愛しています。これまでもそしてこれからも」
歩の言葉に早穂さんと芽衣子さんは嬉しそうな笑みを浮かべる。それだけこの三人の絆は固いもので、世間からの風当たりが強くとも自分の想いを大事にするのだという強い意思を感じた。
「……なんか良いな、そういうの」
「ありがとうございます。そういえば皆さんも夏葉さんのイベントを観にいらしたんですか?」
「そうだ。本当は神社に来る事が目当てだったんだけど、入り口のところでイベントの存在を知ってせっかくだから観てみようって話になったんだ」
「そうだったんで──」
「ハルちゃーん! みんなー!」
そんな声が聞こえて俺達はそちらに顔を向けた。すると着替えた四季夏葉が走ってきていて、それに驚く間もなく四季夏葉は陽花さんに突然抱きついた。
「わっ……もうお姉ちゃんったら……」
「えへへぇ、ハルちゃんだぁ。来てくれてほんとに嬉しいなぁ」
さっきまでのハキハキした明るい話し方とはまるで別人のようにうっとりとした言い方で四季夏葉は陽花さんに抱きついており、歩達はそれを見てまたかといった顔をしていた。
「あはは……夏葉さん、本当に陽花さんの事が大好きだなぁ」
「そうみたいだな……」
「けど、このままでもよくないし、みんなでどっかに移動しようぜ」
「だね。あ、皆さんもよかったらどうですか?」
突然のその言葉に俺達は驚く。
「え、良いの?」
「はい。大勢の方が楽しいですから。夏葉さんもいいですか?」
「うん、いいよ。さっきのイベントを見てくれてた人達だし、どんな風に見えたか感想も聞きたいな」
「そういう事なら……というか、俺達の顔を覚えてたんですね」
「ふふっ、誰かの顔を覚えるのは得意なんだ。職業柄、お仕事で会った人の顔を覚えないといけない時は多いし、元から友達が多い方がいいなって思ってるから。ということで、みんなも友達になってくれたら嬉しいな」
夏葉さんの言葉に俺達が頷くと、歩はにこりと笑った。
「よし、それじゃあ行こうか。ファミレスとかでいいかな?」
「いいと思うぜ。ファミレスならのんびりいても問題ないしな」
「ふふ、だね」
そして俺達はファミレスに向けて歩き始めたが、歩いていく歩の背中は大きく見え、さっきまでとは違う心強さで満ちていた。
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