召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

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一年生

年の功です!

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「カイ!これほど似ているなんてな!これは俺の負けだ!」

嬉しそうに俺の背中を叩く親父に、

「ホントにねぇ……お義父さんそっくりだよぉ……」

しみじみとした言葉遣いでセイロウさんを見る母さん。

「そうだろう?俺もセイロウさんに会ったときびっくりして思わず声をかけちゃったよ」

「ほっほっほっ、それほど似ておるのかのぉ。なにやらお前さんらが他人の様に感じなくなってきたぞい」

「それは嬉しいですな!王都に滞在している間ですが、仲良くしてやってください!」

「こちらこそ、よろしくのぉ。それで何か食べていくのかな?」

「そうそう。親父のおごりでお勧めくれますか?」

「ああ、よいぞい。大量に仕込んでおいたのが残っている」

「おい!おごりとはどういう了見だ!?」

「賭けに負けたんだから飯代を出してもらおうか。当然ここにいる皆の分もな!」

「くっ……お前以外に出すのは構わんというのに!悔しい!」

「おう。普通は息子に対して甘いもんじゃないのか?ルースのとこはそうだぞ?」

「はぁ?むさ苦しい男に金を出せるか。可愛い女の子なら別だがな」

「ルースは男だぞ?」

「ルース君は別だ。というかお前とルース君を比べるな。失礼だろうが」

「実の息子にそこまで言うか?クソ親父」

「ああん?やるのか?」

バチバチと視線を合わせる俺たちに母さんがげんこつを放った。

「「いでぇぇぇ!!」」

「ちったぁ迷惑を考えな!このスットコドッコイ共め!」

げんこつを繰り出してすぐにシルヴィさんへと話しかける母さん。
完全にペースを握られている。

「シルヴィちゃん、空いている席に座ってもいいのかい?」

「はい!どうぞどうぞ!」

シルヴィさんもまったく動じないで俺たちを席に案内していく。
母さんが一番奥のテーブルに着いたので、親父が隣に座りその向かいに俺とルースが並ぶ。
そしてその背後に女子組が座った。
これだけで店内の半分の席が埋まっている。
そんな中で、なにやらいい香りが漂い始めた。

「なんだかいい香りですね?」

俺はシルヴィさんに問いかける。

「そうでしょう?とっても美味しいお料理なんで楽しみにしておいてください!」

「ほい、シルヴィ。上がったぞい」

「はーい」

早い。
注文を通してから五分も経っていないというのに八人分がもう用意できたのか?

「お待たせしました!青藍亭特製カレーです!」

おおっ。これは米料理ではないか。
最近栽培が始まった穀物で食べてみたかったんだよ。
白くキラキラと輝く米に茶色いソースがかかっている。
そのソースから、なんとも言えない食欲をそそる香りが立ちのぼっていてもうたまらない。

「いただきます!」

俺が一手先に手を叩くと、他の皆も我先にと手を叩いた。
そしてスプーンで米とソースを掬って口に放り込んだ。
ピリリとした辛味とジューシーな肉汁がとてつもなく良いマッチをしてくれて、とても美味しい。

「これは、美味しいですね!セイロウさん!」

「ほほほ、そう言ってくれると嬉しいのぉ。儂が考案したものなのでな」

「それは凄いですね!料理の才能があるなんて!」

「そうじゃな。そう思ってくれたら幸いじゃ」

セイロウさんの表情は少し陰りがあるように見えるが、気の所為だろうか?

「ぷはぁ!満腹満腹!」

「うわぁ……仕込んであったもの全部なくなったね?おじいちゃん」

「ホホホ、それだけ気に入ってくれたようで良かったじゃないか」

「それじゃお会計して帰るか。親父頼むぞ」

「わかってるわい」

そうして親父が精算をしている頃、ファーナが話しかけてくる。

ご両親の宿泊先を探していたのではないですか?

ああ!そうだった!

「セイロウさん!この辺りで宿泊施設ないですか!?」

「宿泊施設?あるにはあるがのう。どこもいっぱいじゃぞ?」

「やっぱりそうですよね……」

俺はがっくりと肩を落とした。

「親父、やはり一旦逮捕されるという方向で」

「ならば貴様も道連れだ!」

「俺は明日決勝戦があるの!捕まっていられるか!」

「どうしたんですか?」

「それがね?シルヴィちゃん」

母さんはシルヴィさんに事情を話した。

「なるほど。泊まるところがないということですね!ならばうちに泊まっていってください!狭いですがお布団とお部屋はありますので!」

「いいんですか?」

シルヴィさんの提案は嬉しいものだったけれど、少し遠慮をしてしまう。

「何言ってるの!こんなときはお姉ちゃんを頼ってよね!お父さんお母さんもそれでよろしいでしょうか?」

「……」

「私はご厚意に甘えようと思うのだけど、あなたは何を感激してんだい?」

「娘にお父さんと呼ばれることって、いいんだなぁ……母さん、俺たちももう一回頑張ってみないか?」

「そうは言うけどねぇ……あたしも歳だし……」

「そんなことは息子がいないとこでやってくれ!」

両親の子作り計画など聞いてたまるか。

「あははは!おじいちゃん、それじゃお二人はお部屋にご案内するね?」

「ああ、頼んだぞい。さて今日は夜まで店を閉めることにしようかのぉ」

「そうですか。のれん下ろしておきますよ」

「おお、ありがたい。……ところでじゃが、カイ君に話したいことがある」

「ん?お聞きしますよ?」

「少し外で話さないか?出来れば二人が嬉しいのじゃ」

「そうですか……わかりました」

改めてのことに不思議に思ったが、皆に少し出てくるから待っていてくれとお願いして青藍亭から出ていく。

「少し、歩こうか」

「はい」

夕焼けの空の下、こうして二人で並んで歩いていると、本当のじいちゃんと歩いているような気分になる。

「ここでよいかのぉ」

少し町外れの広場、子どもたちはもっと広い場所で遊んでいるのか、人が誰もいない。

「それで俺になんの話しがあるんですか?」

「おぬしの決勝戦の相手の娘のことじゃ」

「アリシアのことですか?」

「うむ、彼女の闘い方を見てわかったのじゃが、彼女は戦闘狂だな」

「それはなんとなくわかります」

「クリスちゃんも戦闘を楽しんでおるが、アリシアちゃんは命のやり取りそのものを楽しんでおるように見える。彼女が本気を出したら……凄まじい殺気を放ってくるであろうな」

「セイロウさん……?」

好々爺としたセイロウさんの話し方が変わっていく。
静かに、深みのある声に。

「カイ君。君には多大な恩を受けた。儂が返せるのはこれだけだ。よいか?腹に力を入れろ」

「は、はい」

圧倒的な迫力に俺はただ従うのみだった。

「すぅ……」

俺は腹からの呼吸で吸い込んだ後に大きく息を吐いた。

「それでいい。それでは……いくぞ!」

「がはっ!」

セイロウさんから放たれたのは俺を殺すという意志が込められた殺気だった。
その濃厚さに俺は恐怖でガタガタと身体が震える。

「よく知っておくがいい。これが本気の殺気というものだ」

今までに闘技場で感じていた敵意なんてものは霞むほどの圧であり、俺はストンと腰を落とした。

「ほほほ、恥ずかしがらんでいい。よく耐えられた方じゃぞ?カイ君は」

「セイロウさんは……いったい?」

「なぁに。今はただの料理人じゃ」

ファーナ……どう思う?

恐らくでありますが、魔獣を狩るハンターによく似た殺気を感じました。
ただ、随分と手加減をされた様子ですね。

「……ご教授、ありがとうございました!」

「なに、ここまで来たらカイ君に優勝してほしいからの。年寄りからの餞別じゃて。ここでしばらくゆっくりしてから帰っておいで」

どうやら足が痺れていることを見抜かれている。

「ありがとうございます」

「それでは儂は一足先に失礼するぞい」

セイロウさんは背を向けたまま、手を振って去っていった。

本当に何者なんだろうな?あのおじいさん。

不思議な方ですが、悪い人ではありませんよ。

それはわかってるよ。
こうしてアリシアの対策も教えてくれたし。

まだまだ歩けない様ですけどね。

それは言わないでくれ……

長時間正座したかのようにブルブルと震える自分の足を情けなく思いつつ、痺れが治るの待つのだった。






───セイロウの帰り道───
前方から帽子を被った黒いスーツの男がやってきた。

(老師。突然殺気を出さないでください。何ごとかと思いましたよ)

(なぁに、ちょっとした戯れじゃ)

(戯れで裏社会に抗争の火種となりえるのです)

(もう儂は引退している。ただの料理人じゃよ)

(そうはおっしゃいますが……)

(今回のことは特別だ。もう二度とやらんから許せ)

(……かしこまりました)

すれ違いざまに会話をした二人は、そのまま別の道を行く。

「決勝戦が楽しみじゃのう」

そう言ってセイロウは朗らかに笑うのだった。
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