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おばあちゃん家②
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「本来ないはずの襖がある理由は分かりませんでしたが、ここは屋根裏だと思いました。
危ないから入っちゃダメと言われていた屋根裏。
襖の奥からはゴンゴンと聞き覚えのある音が聴こえてきます。
私は神様の顔を見ようと、そっと襖を開けました。
8帖ほどの和室に、右手と左足を欠損した子供がいました。
子供は壁沿いに体を擦り付けながら移動しています。
居間で私が聞いていたのは、壁に頭部が当たる音だったのです。
襖を開けた時、正面の壁を転がっていた子供は、反時計回りに移動していました。
私は襖を閉めることを忘れ、子供の奇妙な動きに釘付けでした。
部屋の左側を移動し始めて、ようやく襖を閉めようとしますが、何かが引っかかって動きません。
ゴンゴンという音は次第に近くなり、とうとう私の目の前に子供はたどり着きました。
少しの隙間から、眼球はえぐり取られたように空洞になった眼球が、私をじっと見ました。
眼球はないのに目が合っていたのです。
突然襖がガバッと開き、私はそれの本当の姿をはっきりと見ました。
部屋からはち切れんばかりの巨大な球体に、何百本もの手足がうねうねと動いていました。
その上にちょこんと乗っかる頭だけはあの子供で、天井近くから私を見下ろしていました。
私は悲鳴を上げる代わりに、布団から飛び起きました。
おばあちゃんは
『夢を見ていたんだよ』
とジュースを持ってきてくれました。
怖い夢を見たなんて言っていないのに、どうしておばあちゃんは嘘の吐いたのでしょう。
えぇ、夢だなんて嘘っぱちなのです。
おばあちゃんは今年の2月に亡くなりました。
叔母が遺品整理をしている時に、屋根裏から出てきたそうです。
重箱に詰められた大量の小さな生爪が」
佐藤奈緒は話し終えると、頭を軽く下げてすぐに店を出た。
ティサの客には、用が済んだら長居は無用という暗黙のルールが語り継がれている。
誰が決めたか分からないルールだ。
客は帰っても真也には薄気味悪い余韻が広がる。
「生爪ってその子供の物ってことですか?」
「彼女の祖母は怨念を閉じ込めていたんだろう」
「1人2人じゃない。とてつもなく多くの子供が犠牲になっているはずだ。とある地方には、かつて子供を生贄にするという悪習があった。嫌がる子供は逃げ出そうとするから、大人は無慈悲にも子供の手足を切断して、神に捧げた」
今は無くなったとはいえ、当時の子供たちを想って真也は眉をしかめる。
「切断……。 なんてひどい」
「生爪を残したのはせめてもの供養か、それとも呪物への利用を考えたか。……無垢な子供を神の供物にする人間の考えることなど分からんな」
そう言うと茉美は奥の部屋へと消えた。
ゴチソウサマ、ゴチソウサマ。
危ないから入っちゃダメと言われていた屋根裏。
襖の奥からはゴンゴンと聞き覚えのある音が聴こえてきます。
私は神様の顔を見ようと、そっと襖を開けました。
8帖ほどの和室に、右手と左足を欠損した子供がいました。
子供は壁沿いに体を擦り付けながら移動しています。
居間で私が聞いていたのは、壁に頭部が当たる音だったのです。
襖を開けた時、正面の壁を転がっていた子供は、反時計回りに移動していました。
私は襖を閉めることを忘れ、子供の奇妙な動きに釘付けでした。
部屋の左側を移動し始めて、ようやく襖を閉めようとしますが、何かが引っかかって動きません。
ゴンゴンという音は次第に近くなり、とうとう私の目の前に子供はたどり着きました。
少しの隙間から、眼球はえぐり取られたように空洞になった眼球が、私をじっと見ました。
眼球はないのに目が合っていたのです。
突然襖がガバッと開き、私はそれの本当の姿をはっきりと見ました。
部屋からはち切れんばかりの巨大な球体に、何百本もの手足がうねうねと動いていました。
その上にちょこんと乗っかる頭だけはあの子供で、天井近くから私を見下ろしていました。
私は悲鳴を上げる代わりに、布団から飛び起きました。
おばあちゃんは
『夢を見ていたんだよ』
とジュースを持ってきてくれました。
怖い夢を見たなんて言っていないのに、どうしておばあちゃんは嘘の吐いたのでしょう。
えぇ、夢だなんて嘘っぱちなのです。
おばあちゃんは今年の2月に亡くなりました。
叔母が遺品整理をしている時に、屋根裏から出てきたそうです。
重箱に詰められた大量の小さな生爪が」
佐藤奈緒は話し終えると、頭を軽く下げてすぐに店を出た。
ティサの客には、用が済んだら長居は無用という暗黙のルールが語り継がれている。
誰が決めたか分からないルールだ。
客は帰っても真也には薄気味悪い余韻が広がる。
「生爪ってその子供の物ってことですか?」
「彼女の祖母は怨念を閉じ込めていたんだろう」
「1人2人じゃない。とてつもなく多くの子供が犠牲になっているはずだ。とある地方には、かつて子供を生贄にするという悪習があった。嫌がる子供は逃げ出そうとするから、大人は無慈悲にも子供の手足を切断して、神に捧げた」
今は無くなったとはいえ、当時の子供たちを想って真也は眉をしかめる。
「切断……。 なんてひどい」
「生爪を残したのはせめてもの供養か、それとも呪物への利用を考えたか。……無垢な子供を神の供物にする人間の考えることなど分からんな」
そう言うと茉美は奥の部屋へと消えた。
ゴチソウサマ、ゴチソウサマ。
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