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温泉宿の夜
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「僕のチョイスはお気に召しませんか?」
茉美は真也が買ってくる飲食物に手を付けない。
スラリとした体型は少食を連想させるが、興味すら示さないので真也は不安になってしまう。
「アタシは言いたいことがあれば言う。そんなくだらんことは客人が不満をこぼした時に考えろ」
ガチャリ。
扉が開き、スーツ姿の中年男性が入店した。
コーヒーの香りが漂う中、深田哲郎と名乗る男は話し始めた。
「これは大学の時の話だ。
卒業旅行に男友達と山奥にある温泉宿に泊まった。
篤史は周囲から一目置かれる存在で、銀行に就職が決まっていた。
裕一郎は実家の商店を継ぐと言っていた。
俺は夢も責任もなく、気楽に受けた会社から内定をもらい、まぁ最後にパーっと羽を伸ばしたいと思っていた。
三者三様の俺たちだったが、これからも友達でいようと言い合える関係だった。
宿に着いたのは夕方5時。
部屋に荷物を置くと、俺は早く温泉に入りたくて落ち着きがなかった。
部屋は男3人が泊まるには少し狭いが、小綺麗で寝るだけなら悪くない。
裕一郎は
『以外とこういう場所に御札があるんだよなー』
と室内を物色した。
畳を裏返してみたり、押入れの中を探してみたり。
篤史は
『例え曰く付きでも、客から見える場所に貼らないだろ』
と呆れた。
俺も同感だった。
『そんなことより早く露天風呂に行こう!』
と2人を急かした。
露天風呂は木々に囲まれ、自然に癒されながら汗を流した。
乳白色の湯は美肌効果がなんたらと看板に書かれていたが、俺たちには関係ない。
他に客がいなかったこともあって、馬鹿デカイ声で下ネタに走ったり、子供みたいに泳いだりした。
体も温まって気分が良くなっている頃、篤史が苛立った声を上げた。
『オイ! 俺の脚を触ってんの誰だよ』
俺と裕一郎は身に覚えのない怒りをぶつけられた。
第一、俺にはそんな趣味はなく、裕一郎の距離からでは篤史に触ることすらできない。
認めようとしない俺たちに、篤史は不服そうだった。
『女の生足みたいなのが、股間に当たってくんだよ』
どうせ旅行に彼女を連れていけなくて欲求不満なんだろと思った。
だが俺も何か脚に触れた感覚があった。
湯は乳白色だから中の様子が見えない。
気持ち悪さを感じて、他の2人にビビってると気付かれる前に
『腹減ったから飯食おうぜ』
とさっさと上がった。
温泉宿の飯は俺たちを十二分に満足させた。
酒も入ってますます気分良くなった俺たちは、宿の外で遊べる場所がないかを女将に尋ねた。
女将は頭を下げて
『申し訳ございません。この辺りは若い方々が楽しめるような施設はなく、何より他のお客様に迷惑ですので……』
俺たちはバツが悪くなり、大人しく部屋に帰ることにした。
『なぁ、俺たちの他に客いるか?』
裕一郎の疑問は俺も篤史も抱いていた。
『要は騒がずに大人しく寝てろってことだろ』
と言った篤史は、もう酔いが冷めているようだった。
就寝したのは23時頃だったと思う」
茉美は真也が買ってくる飲食物に手を付けない。
スラリとした体型は少食を連想させるが、興味すら示さないので真也は不安になってしまう。
「アタシは言いたいことがあれば言う。そんなくだらんことは客人が不満をこぼした時に考えろ」
ガチャリ。
扉が開き、スーツ姿の中年男性が入店した。
コーヒーの香りが漂う中、深田哲郎と名乗る男は話し始めた。
「これは大学の時の話だ。
卒業旅行に男友達と山奥にある温泉宿に泊まった。
篤史は周囲から一目置かれる存在で、銀行に就職が決まっていた。
裕一郎は実家の商店を継ぐと言っていた。
俺は夢も責任もなく、気楽に受けた会社から内定をもらい、まぁ最後にパーっと羽を伸ばしたいと思っていた。
三者三様の俺たちだったが、これからも友達でいようと言い合える関係だった。
宿に着いたのは夕方5時。
部屋に荷物を置くと、俺は早く温泉に入りたくて落ち着きがなかった。
部屋は男3人が泊まるには少し狭いが、小綺麗で寝るだけなら悪くない。
裕一郎は
『以外とこういう場所に御札があるんだよなー』
と室内を物色した。
畳を裏返してみたり、押入れの中を探してみたり。
篤史は
『例え曰く付きでも、客から見える場所に貼らないだろ』
と呆れた。
俺も同感だった。
『そんなことより早く露天風呂に行こう!』
と2人を急かした。
露天風呂は木々に囲まれ、自然に癒されながら汗を流した。
乳白色の湯は美肌効果がなんたらと看板に書かれていたが、俺たちには関係ない。
他に客がいなかったこともあって、馬鹿デカイ声で下ネタに走ったり、子供みたいに泳いだりした。
体も温まって気分が良くなっている頃、篤史が苛立った声を上げた。
『オイ! 俺の脚を触ってんの誰だよ』
俺と裕一郎は身に覚えのない怒りをぶつけられた。
第一、俺にはそんな趣味はなく、裕一郎の距離からでは篤史に触ることすらできない。
認めようとしない俺たちに、篤史は不服そうだった。
『女の生足みたいなのが、股間に当たってくんだよ』
どうせ旅行に彼女を連れていけなくて欲求不満なんだろと思った。
だが俺も何か脚に触れた感覚があった。
湯は乳白色だから中の様子が見えない。
気持ち悪さを感じて、他の2人にビビってると気付かれる前に
『腹減ったから飯食おうぜ』
とさっさと上がった。
温泉宿の飯は俺たちを十二分に満足させた。
酒も入ってますます気分良くなった俺たちは、宿の外で遊べる場所がないかを女将に尋ねた。
女将は頭を下げて
『申し訳ございません。この辺りは若い方々が楽しめるような施設はなく、何より他のお客様に迷惑ですので……』
俺たちはバツが悪くなり、大人しく部屋に帰ることにした。
『なぁ、俺たちの他に客いるか?』
裕一郎の疑問は俺も篤史も抱いていた。
『要は騒がずに大人しく寝てろってことだろ』
と言った篤史は、もう酔いが冷めているようだった。
就寝したのは23時頃だったと思う」
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