16 / 26
寝落ちてしまったフィーリアは、一宿の恩を彼らに返す。
第6話 陽光の下、一宿の恩(1)
しおりを挟む差し込む朝日に促されて、ゆっくりと瞼を上げた。
一瞬ここはどこだっけと思い、あぁそうだと思い出す。昨日、結局あのまま寝てしまったのだ。
薄汚れた窓の外には青空が広がっていた。どうやら雨は上がったらしい。
辺りを見回せば、少し離れた床に昨日の彼らが転がっていた。
おそらく眠っているのだろう。近くに布が投げられていたのでせめてかけてあげようかと思ったが、一歩足を向けた所で床がギシリと音を立て、ディーダが「うぅん」と眉間に皺を寄せて唸った。
起こしてはいけないので、止めておく。
昨日は暗くて分からなかったが、ガラリとした室内を改めて見回すと室内は少し埃っぽい。
が、それも仕方がないのかもしれない。彼ら曰く、ここは誰の家でもない。昔住んでいた誰かが引っ越したか亡くなったかで、放置されていた家らしいから。
昨日、ここに連れて来られる道すがら教えてもらったのは、管理する人が居なくなって寂れて潰れるだけの家に、貧民たちは勝手に住み着くのだという事だった。
そんな事をして誰かに怒られたりしないのかと思ったが、どうやらその心配はないらしい。
「誰も何も言わねぇよ。他の街では違うらしいけど、ここじゃ領主は取り締まらない」
「興味がないだけでしょ、領主は」
自嘲気味に笑いながら肩をすくめたディーダに、ノインがキッパリと告げる。
そうなのか。知らなかった……だなんて、領主の妻だった人間が思う事すら、領民への無関心をよく示している。
身につまされて謝りたくなるものの、素性を教えて彼等を妙な事に巻き込むのと行けないと思えばそれも出来ず、結局何も言えなかった。
少なくとも今、二人はここに二人で住みついているらしい。しかし彼等は子どもだ。おそらく掃除をする習慣などは無いのだろう。
もしかしたら彼等は気にならないのかもしれないが、人が住むのなら綺麗な方がいいに決まっている。
この部屋を掃除すれば、少しはお礼になるだろうか。
結局昨日は泊めてもらってしまったし、何か恩返しをしなければならない。
確か昨日、近くに井戸があった筈。あとは、雑巾……は無いけれど、いつもみたいにスカートの裏地をちぎって使えば大丈夫。
彼等を起こしてしまわないように細心の注意を払いつつ、そっと家の外に出た。
井戸で水を汲み、それから着ているスカートを少したくし上げる。
何も足を洗う訳ではない。もちろん雑巾を作るためだ。
この服は、レイチェルさんから渡された時代遅れの古いスカートだ。彼女はこの服をダサいと揶揄して笑ったが、元々貴族の服である。生地も元々は良いものだし、裏地がきちんとついている。
すでに中途半端な丈になっているところの少し上を、掌よりも少し大きい面積になる様にビリッと引き裂いて、二枚用意しておいた。
うち一つを水に浸して絞る。もう一方は、仕上げの乾拭き用だ。
まずは窓の外側を拭いて、続いて内側を拭きに行く。
立てつけが悪いのか、窓がビクともしなかったから、また音をたてないように注意して室内へと入った。
中から窓をキュッキュと拭けば、一体どれほど放置していたのか。拭いた所とそうでない所が、クッキリと目に見えて分かる。
窓が綺麗になっていくのがよく分かるので、掃除していても気持ちがいい。
116
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました
おりあ
恋愛
アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。
だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。
失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。
赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。
そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。
一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。
静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。
これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。
彼女が微笑むそのときには
橋本彩里(Ayari)
ファンタジー
ミラは物語のヒロインの聖女となるはずだったのだが、なぜか魔の森に捨てられ隣国では物語通り聖女が誕生していた。
十五歳の時にそのことを思い出したが、転生前はベッドの上の住人であったこともあり、無事生き延びているからいいじゃないと、健康体と自由であることを何よりも喜んだ。
それから一年後の十六歳になった満月の夜。
魔力のために冬の湖に一人で浸かっていたところ、死ぬなとルーカスに勘違いされ叱られる。
だが、ルーカスの目的はがめつい魔女と噂のあるミラを魔の森からギルドに連れ出すことだった。
謂れのない誤解を解き、ルーカス自身の傷や、彼の衰弱していた同伴者を自慢のポーションで治癒するのだが……
四大元素の魔法と本来あるはずだった聖魔法を使えない、のちに最弱で最強と言われるミラの物語がここから始まる。
長編候補作品
【完結】令嬢は売られ、捨てられ、治療師として頑張ります。
まるねこ
ファンタジー
魔法が使えなかったせいで落ちこぼれ街道を突っ走り、伯爵家から売られたソフィ。
泣きっ面に蜂とはこの事、売られた先で魔物と出くわし、置いて逃げられる。
それでも挫けず平民として仕事を頑張るわ!
【手直しての再掲載です】
いつも通り、ふんわり設定です。
いつも悩んでおりますが、カテ変更しました。ファンタジーカップには参加しておりません。のんびりです。(*´꒳`*)
Copyright©︎2022-まるねこ
【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う
なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。
3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。
かつて自分を陥れた者たち
――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。
これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。
【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】
*お読みくださりありがとうございます。
ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
セントフェアファクス皇国徒士家、レイ家の長女ラナはどうしても持参金を用意できなかった。だから幼馴染のニコラに自分から婚約破棄を申し出た。しかし自分はともかく妹たちは幸せにしたたい。だから得意の槍術を生かして冒険者として生きていく決断をした。
【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた
そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた
しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう
婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ
婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか
この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話
*更新は不定期です
*加筆修正中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる