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第4話 『本当に悪い』のは、一体どちらなのでしょう(1)
しおりを挟む映像が途切れ、貴族達の囁き声だけが室内に残った。
しかし私はそんな連中には目もくれず、王族席へと視線を戻す。
「殿下、その方が貴方に相談されたのは、母親の形見が壊されたからではありませんか……?」
調べて分かったが、エリーゼの嫌がらせはずいぶん前からあったようだった。
なのに今更問題になったという事は、その令嬢にとって『流石に耐えられない何か』があったのだろう。
そう、推察したのだが。
その問いの答えは、一向に返ってこなかった。
しかし怒りと驚愕に染まったその顔だけで十分事実は推し量る事ができる。
「ならば、少なくとも『彼女を悲しませた罪』は、私にはありませんね?」
私のそんな言葉と共に、やっと殿下が起動する。
色濃い怒りに満ちた視線を、彼はエリーゼへと向けて。
「これは一体どういう事だ」
「で、殿下、これはその――」
それこそ今ここで衛兵にエリーゼの斬首を命じてもおかしくない。
その声は、そう思わせるには十分な怒気を孕んでいた。
エリーゼは、その声に何とか弁明をしようと口を開く。
が。
(ソレでは困る。だって私のターンは、まだ終わっていないのです)
そんな気持ちを込めて「次に」と告げれば、その声が『断罪』に傾いた場の空気をど真ん中から切り裂いた。
皆の視線が一気に集まるのを感じながら、私は続きを切り出した。
「『他貴族に対し権力を振りかざした』という罪についてですが、私に思い当たるところはありません」
二つ目の罪の否定。
それを聞いた貴族達は、つい今し方一つ目が冤罪だと分かった事もあり「もしやこれも冤罪か……?」という空気になる。
しかしそれに逆らう者も居た。
その最筆頭が、私の声に嘲笑を被せてくる。
「一つ罪が晴れたからといって、他の事実まで煙に巻こうとするのは良しなさい。社交場での貴女の行いは、私がずっとこの目できちんと見てきたのですよ」
それは王妃の声だった。
その物言いには「自分の言葉こそが最大の証拠だ」という確信が詰まっていた。
しかし。
(そうやって自身の言葉を押し通そうとする事こそ、権力を振りかざすという事なのでは……?)
自覚がないのだろうか。
だとしたら、そちらの方が余程重症だ。
と、ここまで思い至ったところで、思考が本題から逸れている事に気がついた。
だからそれは一度横に置いておいて、改めて本題について考える。
(……王妃様が言うところの『社交場での行い』、何か心当たりがあるとすれば)
そうして、思い当たる部分を順に論う。
「例えば、社交場で貴族の品格を逸脱して騒ぐ子達に注意をする。または作法がなっていない子達にソレを指摘する」
しかし、並べ立ててみたところでやはり思う。
「それらについては、今でも『必要な措置だった』と胸を張って言えますよ?」
思ったままに答えると、王妃様は「しめた」と言わんばかりの笑みを浮かべた。
「自覚が無いのが一層問題なのですよ。他の大人達が、貴女と同じ指摘をしましたか? 無かったでしょう?」
他の大人達でさえ指摘しない事を貴方が指摘するなんて、そんなに自分を偉いと思っているのか。
どうやらそう、言いたいらしい。
しかし。
(――なるほど、そういう事ですか)
私は一人、納得する。
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