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第5話 暴かれた不正(2)
しおりを挟むこれは、意図的に仕組まれた『真犯人の居ない』事件だ。
そういう性質だからこそ「そもそも不正利用など存在しない」という疑い方をしない限り、真実には辿り着けない。
そういう算段だったのだろうけど。
「元々犯人など居ないのですから、証拠を消す必要がない。証拠の捏造だけですから、工作するのも楽だったのでは?」
その部分を疑った、否、あらかじめ知っており、尚且つ『王の意思』に反目する意思を持つ人間が、ただ一人だけ存在した。
それこそが、きっと彼の計算違いだったのだろう。
「お前も――」
「因みに私は今まで王妃様から、何一つとして下知して頂いた事はありません」
そんな私に、一体どうやったら『国庫の不正利用』などという罪をかけられるだろう。
それに、だ。
「今まさに言おうとしたその言葉。もしその全てを言い切ってしまったら、その瞬間に私共々王妃様をも処刑しなければならなくなりますよ?」
それでも言えますか?
そんな言外の問いに、彼はグッと奥歯を噛み締めた。
結局彼は、王妃様を愛しているのだ。
だから彼女の苦手な物を彼女から遠ざけ、輝ける場所を用意し、そのフィールド内で全てを好きにできる権限を与えた。
まぁその結果が、一方では私との不仲の原因を作ってその私に「演説スキルで敗北する」という醜態を演じさせ、もう一方では国庫を圧迫させるに至ったというのだから――
(空回るにも、程がありますね)
私はそう、独り言ちた。
そしてダメ押しに、私は最後のカードを切る。
「因みにですが、王妃様の国庫利用状況に関する資料がコレです。――エドワーズ侯爵、読み上げてくださるかしら」
そう言って、私は貴族達の最前列に立つ男にとある紙を手渡した。
彼は、私の家とは敵対派閥の人間である。
しかし不正には手を染めない厳格で公正な性格の彼に、私はずっと敵ながら一定の好感を抱いてきた。
そんな彼にだからこそ、この世界でたった一つの不正の証拠を渡す事ができる。
訝しげな顔で私からその紙を受け取った侯爵は、すぐにその紙へと視線を落とした。
そして、みるみる内にその顔色を険しくい色へと変えていく。
「これは、今年の国庫決済書類の原本だ。そしてこれには、不正利用された筈の金額とまったくの同額が……王妃様使用分として計上されている」
彼の言葉に、貴族達が大きく揺れた。
頑ななまでの彼の厳格さと公正さについては、みんなもよく知っているのだ。
彼が嘘をつくはずがない。
つく意味もない。
それをみんな、ちゃんと分かっているのである。
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