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第6話 私が行う要求は
しおりを挟む罪の正体を全て暴かれ、丸裸にされて。
王は諦めたような深いため息を吐いた。
「……お前の力量を、どうやら見誤っておったようだな」
看破されるどころか、まさかこうして全てを白日の元に晒す度胸まであるとは。
そう言いたげに寄せられた眉間の皺を、彼は摘んで揉みほぐす。
そして。
「それで、この様にワシらの地位を揺るがせて、お前の目的は一体何だ」
罪の撤回か、謝罪か、はたまた金品か。
重々しい声でそう尋ねてきた陛下に、私は思わずクスリと笑う。
「別に、何も」
「何も、だと?」
「えぇ、何も」
片眉を釣り上げて訝しむ彼には悪いが、言葉の通りだ。
要求したい物なんて、私には何一つとして無い。
私はただ「彼らが望んだ『悪役』」をやり切っただけであり、王族の地位が揺らぐような事態に陥っているのはただの結果論でしかない。
だから。
(呪うのなら、言葉だけを鵜呑みにしてろくに下調べもしなかった自分や、自己中心的な考えで他人を貶めようとした自分。そして無実と分かっていながら明らかな贖罪を生む事を選んだ自分の方にして欲しいですね)
とは流石に言えなかった。
しかし。
「まぁでもそうですね……全ては冤罪だという事が証明できたと思いますので、勿論極刑は無しになるでしょうが」
せっかく相手が『要求して良い』と言っているのだ、少しくらいなら頂いておいてもバチは当たらないだろう。
そう思いながら、私は『悪役』らしく悠然と微笑んだ。
「私はこれから、国外へと出ます。陛下には今ここで、私に追っ手を仕掛けない事と「今後一切、この国と私には何の関わり無い」という事を保証していただきたいのです」
その言葉に、陛下は訝しさを抱いたようだった。
何故そんな事を言う。
そう言いたげな彼の下にその理由の一端がやってくる。
バタバタという幾人かの足音と「おやめください!」という静止の声を皮切りに。
何の音だ。
そんな気持ちを乗せて向けられた視線の先で、扉がバァンッと蹴破られた。
そして。
「リリアンヌ!」
会場内の全員の視線がそちらへと釘付けになる中、現れた男が私の名を呼ぶ。
彼の衣装は良い生地で、実に凝った装飾が為されていた。
艶やかな金色の髪、澄み渡った青の瞳、そして普段は柔和さを演出する中性的なその顔立ちが、今は怒りと焦りに染まっている。
そんな彼が、私を見つけた途端に安堵に緩む。
普段の柔和さの上に喜色を重ねて、彼がタッと床を蹴った。
そしてふわりと温もりに包まれる。
彼の温かにこんなに深く触れたのは初めてだった。
彼と私が直に触れ合ったのは、おそらくこれで3回目。
一度目は、王子と共に招かれたパーティーでダンスをした時。
そして二度目は、彼が応急に招かれた時。
その時には庭で悩んでいた私の手を、包むように握ってくれた。
久しぶりに与えられた人からの温もりに、妙な安堵感を抱いた記憶がある。
どちらも、その行いに好意は感じても邪な感情は見て取れなかった。
紳士で思いやりに溢れた温かみだった。
しかしこれは違う。
そう、私の心が告げる。
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