【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

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第2話 虐めていた、犯人は(3)

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 殿下は元々、贔屓の激しい人である。

 だから自分にとって都合の良い人間の顔と名前はすぐに覚えるが、一方でそれ以外の物覚えはどうしようもなく悪い。


 つい先ほどまでの私は「そこは私がフォローすればいい」と思っていた。
 むしろ、それこそが自分の存在意義なのだとすら思っていた。

 しかし『悪役』に転じた今になって思うのは、彼の明らかな力量不足だ。
 

 彼は将来一国の王となる人物である。
 そんな彼が現状のままで、一体どうやって国内外の重鎮達と円滑に社交を行うというのか。

(役割を果たせない、名ばかりの王子。一体それのどこに、尽くす理由があるというのかしら)

 一度そう思ってしまえは、もうダメだ。
 王子としての彼を尊敬する事など、最早できはしないだろう。



 一方、私がサラリと行った暴露に、殿下は眉を釣り上げた。


 彼はずっと「名前が覚えられない云々は周りに秘匿するように」と言い、そんな言葉に私は今まで従順だった。
 
 しかしそうして守られてきた『何でも出来る王太子』というイメージが、突然の反逆によって今まさに打ち砕かれた。

 そう考えれば、殿下が怒るのも頷ける。


 しかし。

 そんな彼に、私は悠然と微笑んだ。

 すると彼は一度その瞳に更なる怒りを浮かべて、しかしすぐに何か思いついたかのようにフンッと鼻を鳴らす。

「今更そんな戯言を言ったところで、言い逃れはもう出来ん。実際に嫌がらせをされた物品に目撃証言、証拠は既に出揃っているのだからな!」

 勝ち誇った様な顔で、彼は高らかにそう告げると、周りの貴族達がそれに賛同の空気を醸し出す。

 そんな彼を見やり、私は思った。

(自らがひどく不安定な足場の上に立っている事に、貴方は気づいていないのですね)

 と。


 
 これが冤罪である事は、私自身が1番よく知っている。

 だからこそ気になっていた。
 一体どうやって、その『言い逃れのできない理由』とやらが作られたのか、と。
 だから私は調べたのである。

 そしてついに、真実を手に入れたのだ。

「その証言、教会派の方々から得たのではないですか?」

 私がしたそんな指摘に、彼は訝しげな表情を浮かべた。

 なぜ知っている。
 聞かなくても、そう思っているのは明白だ。


 彼の訝しみ顔に、私はサラリとこう応じた。

「その御令嬢を虐めていたのは教会派の重鎮・エイロー公爵家の御令嬢、エリーゼ様です」

 殿下そう告げると、私は視線をスイっと後ろにずらした。

 そして視界に入った貴族達の中から目当ての人を見つけ、「ねぇ? エリーゼ様」と尋ねる。


 教会相手ならば、虚偽の報告をさせる事もさぞかし簡単だってでしょうね?

 そう言って微笑めば、つい今し方までほくそ笑んでいた彼女の表情が劇的に凪いだ。

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