【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

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第8話 愛を知り、私はついに羽化をする(3)

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 すると、それに答えるように彼が優しく強く私を抱きしめ返してくれた。

「君がどうしたって他人の期待通りにしか生きられないというのなら、僕がずっと『ありのままの君』を望むよ」

 だから。
 そう告げて、彼は私を断罪する筈だった場で、敵ばかりの筈だった場所の真ん中で、ただまっすぐに私を見つめて愛を囁く。


「僕は君に、本物の君のままでずっと隣に居て欲しい」


 それは、生まれて初めてもらった私自身を求める言葉だった。

 そんなもの、嬉しくない筈が無い。


「ありがとうございます、『私』を見つけてくれて」


 声が、震えた。
 嬉しさに声が震える事もあるのだと生まれてはじめて知って、その発見を嬉しく思う。


 これはきっと、苦しみの先に見つけた幸福だ。

 そう思えた自分を、私はとても誇らしく思えた。




 そんな二人の姿が『本物』だということは、誰の目にも明らかだったのだろう。
 この場に居合わせたどの人間の口からも、二人を批判する言葉が投げ掛けられることは無かった。


 ただひとり、王だけが深い深いため息をついた。
 
 彼はおそらく気付いたのだろう。
 先に私が行った陛下への要求、その意味を正確に。


 一度瞑目した後で、陛下はゆっくりと瞼を上げた。
 そして、まるで呟く様に口を開く。

「……お前は、尚も私達を追い詰めるのだな」

 私の願いは、国外に出る私に追っ手を仕掛けない事。
 そして、『今後一切、この国と私には何の関わり無い』という事を保証してもらう事。

 つまりそれは「『冤罪の人間を実質的にこの国から追放する』という歴史的汚点を王族史に残す事」に他ならない。
 そして同時に、隣国の王子とこれから良好以上の関係性を築いていくだろう私をコネに使う事は出来ないという事でもある。


 王族が私になすりつけようとした冤罪は、ほぼすべて王族起因のものだった。
 それらをすべて暴いて白日の下に晒した上にその措置だ。

 陛下視点でそれを言葉にするとすれば、確かに「追い詰める」という表現にもなるだろう。

「断罪などして、そんなに楽しいか」

 疲れたような陛下の声が、私にそう尋ねてきた。

 全く思いも寄らなかった方面の問いに、私は一瞬キョトンとしてしまった。
 しかしすぐに素の笑顔を浮かべ、私はこう答える。

「これは断罪などではありません。ただの事実確認ですよ」

 それは、まるでついに羽化した蝶の様に清々しく水々しい微笑みだった筈である。


~~Fin.
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