15 / 16
第8話 愛を知り、私はついに羽化をする(3)
しおりを挟むすると、それに答えるように彼が優しく強く私を抱きしめ返してくれた。
「君がどうしたって他人の期待通りにしか生きられないというのなら、僕がずっと『ありのままの君』を望むよ」
だから。
そう告げて、彼は私を断罪する筈だった場で、敵ばかりの筈だった場所の真ん中で、ただまっすぐに私を見つめて愛を囁く。
「僕は君に、本物の君のままでずっと隣に居て欲しい」
それは、生まれて初めてもらった私自身を求める言葉だった。
そんなもの、嬉しくない筈が無い。
「ありがとうございます、『私』を見つけてくれて」
声が、震えた。
嬉しさに声が震える事もあるのだと生まれてはじめて知って、その発見を嬉しく思う。
これはきっと、苦しみの先に見つけた幸福だ。
そう思えた自分を、私はとても誇らしく思えた。
そんな二人の姿が『本物』だということは、誰の目にも明らかだったのだろう。
この場に居合わせたどの人間の口からも、二人を批判する言葉が投げ掛けられることは無かった。
ただひとり、王だけが深い深いため息をついた。
彼はおそらく気付いたのだろう。
先に私が行った陛下への要求、その意味を正確に。
一度瞑目した後で、陛下はゆっくりと瞼を上げた。
そして、まるで呟く様に口を開く。
「……お前は、尚も私達を追い詰めるのだな」
私の願いは、国外に出る私に追っ手を仕掛けない事。
そして、『今後一切、この国と私には何の関わり無い』という事を保証してもらう事。
つまりそれは「『冤罪の人間を実質的にこの国から追放する』という歴史的汚点を王族史に残す事」に他ならない。
そして同時に、隣国の王子とこれから良好以上の関係性を築いていくだろう私をコネに使う事は出来ないという事でもある。
王族が私になすりつけようとした冤罪は、ほぼすべて王族起因のものだった。
それらをすべて暴いて白日の下に晒した上にその措置だ。
陛下視点でそれを言葉にするとすれば、確かに「追い詰める」という表現にもなるだろう。
「断罪などして、そんなに楽しいか」
疲れたような陛下の声が、私にそう尋ねてきた。
全く思いも寄らなかった方面の問いに、私は一瞬キョトンとしてしまった。
しかしすぐに素の笑顔を浮かべ、私はこう答える。
「これは断罪などではありません。ただの事実確認ですよ」
それは、まるでついに羽化した蝶の様に清々しく水々しい微笑みだった筈である。
~~Fin.
52
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された王太子妃候補は第一王子に気に入られたようです。
永野水貴
恋愛
侯爵令嬢エヴェリーナは未来の王太子妃として育てられたが、突然に婚約破棄された。
王太子は真に愛する女性と結婚したいというのだった。
その女性はエヴェリーナとは正反対で、エヴェリーナは影で貶められるようになる。
そんなある日、王太子の兄といわれる第一王子ジルベルトが現れる。
ジルベルトは王太子を上回る素質を持つと噂される人物で、なぜかエヴェリーナに興味を示し…?
※「小説家になろう」にも載せています
婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!
偽りの断罪、真実の愛~追放悪役令嬢は隣国の冷徹公爵(実は一途な狼)に娶られ、甘く蕩けるほど愛される~
放浪人
恋愛
侯爵令嬢エレオノーラは、長年婚約者であったエドワード王子から、夜会の席で突然の婚約破棄を告げられる。
「真実の愛を見つけた」と隣に可憐な男爵令嬢リリアナを伴う王子。
身に覚えのない罪状を次々と並べられ、「悪役令嬢」として断罪されるエレオノーラ。
しかし彼女は知っていた。これは全て、自分を陥れるための茶番劇であることを。
国外追放を言い渡され、全てを失ったかに見えたエレオノーラだったが、そんな彼女に手を差し伸べたのは、以前から彼女に注目していた隣国の若き公爵アレクシスだった。
冷徹と噂される彼だが、エレオノーラにだけは見せる顔があるようで…?
「お前の無実は、私が証明する。そして、必ずお前を私のものにする」
不遇の令嬢が、一途な男性からの強引なまでの寵愛を受け、やがて真実の愛に目覚める溺愛ラブストーリー。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
わたくしが悪役令嬢だった理由
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、マリアンナ=ラ・トゥール公爵令嬢。悪役令嬢に転生しました。
どうやら前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したようだけど、知識を使っても死亡フラグは折れたり、折れなかったり……。
だから令嬢として真面目に真摯に生きていきますわ。
シリアスです。コメディーではありません。
悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する
青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。
両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。
母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。
リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。
マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。
すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。
修道院で聖女様に覚醒して……
大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが
マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない
完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく
今回も短編です
誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる