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第七話
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「兄さん、姉さんはもう僕の婚約者なんだ。兄さんとは婚約できないよ」
「なっ?! なぜお前とマリアが!」
マティスは酷く驚いているようだった。
そして、とんでもないことを言い始めた。
「マリアは俺の女だぞ! 手を出していいと思っているのか!」
「「はぁ?」」
何を言っているんだこの馬鹿王子は。
自分から婚約破棄をしたくせにまた婚約を迫ってきて、あまつさえ自分の女だと言い張るとか、自己中心的過ぎませんか?
あまりに勘違いした言動に、私は思わず口を挟んだ。
「マティス様。まず貴方とはもう婚約していないので、あなたの女呼ばわりされる筋合いはありません。そもそも、あなたが婚約破棄しましたよね?」
私がそう正論をぶつけるととマティスはぐっと言葉をつまらせたが、すぐに私を睨みつけて叫んだ。
「う、うるさい! お前は黙って俺に従っていればいいんだ! この──売女が!」
マティスがそう言った瞬間、ロマンがマティスを殴り飛ばしていた。
ロマンの拳がマティスの顔にめり込み、マティスは吹き飛ばされた。
「撤回しろ。僕の婚約者を侮辱するな」
「な、何をするんだ! 俺は第一王子だぞ!」
「いいえ、兄さん。あなたはもう第一王子ではありませんよ」
「なに……?!」
ロマンはとある書状を取り出した。
そしてそこに書かれている内容を読み上げる。
「ここには最近兄さんの素行が手に負えないこと。そしてこの先改善される見込みもないこと。また度重なる権力濫用に、王としての教育が不十分であることから、王位継承権を取り上げ、平民へと落とすことが書かれています」
ロマンが書状の内容を読み上げるとマティスは驚愕に目を見開く。
「そ、そんなバカな! こんなことがあるわけが無い!」
「いいえ、ありますよ。これは父上のサインです」
ロマンが指を差したところにはしっかりと国王のサインがなされていた。
「ああ、母上からは『自分のしたことの責任は持つように』とのことです。アンリエットとの婚約解消は未来永劫禁止。自分でアンリエットの面倒を見ろ、とのことですよ」
マティスは矢継ぎ早に言われたことを理解して、わなわなと口を震わせている。
「僕は最初ここまでする必要は無いと思っていましたが、さっきの姉さんへの侮辱を聞いて考えが変わりました。──もうあなたを兄だとは思わない」
ロマンはマティスに近づき、顔を寄せる。
「ヒッ……!」
「新たな第一王子として命じます。もう姉さんに近づくな!」
「……くそっ! くそくそっ!」
マティスは悔しげに歯を食いしばり、ロマンを睨みつけていたが、もう手も足も出ないことに気づいたのか、悪態をついて逃げて行った。
マティスの背中が見えなくなるとロマンが私に振り返った。
「ごめん、姉さん。傷ついただろう?」
「ううん。庇ってくれて嬉しかったわ」
実は、マティスの権力剥奪は前から決まっていたことだった。
しかしマティスの権力を剥奪すると、私にまで影響が及んでしまう。
国王様と王妃様は婚約者の私ことを心配して、賢く優秀なロマンと婚約をさせようとしたらしい。
そしてどうにか婚約を解消させてやれないかと試行錯誤していたところ、タイミング良くマティスが私との婚約の破棄を望んだ。
そこを渡りに舟と今回の書状を書いたらしい。
これが今回起こったことの全貌だった。
「姉さん、これから僕たちでよりよい国を作ろう」
ロマンが私を抱き寄せる。
「ええ、ロマン。あなたとならきっと出来るわ」
私たちは軽くキスをする。
未来はダイヤモンドのように輝いていた。
fin
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「なっ?! なぜお前とマリアが!」
マティスは酷く驚いているようだった。
そして、とんでもないことを言い始めた。
「マリアは俺の女だぞ! 手を出していいと思っているのか!」
「「はぁ?」」
何を言っているんだこの馬鹿王子は。
自分から婚約破棄をしたくせにまた婚約を迫ってきて、あまつさえ自分の女だと言い張るとか、自己中心的過ぎませんか?
あまりに勘違いした言動に、私は思わず口を挟んだ。
「マティス様。まず貴方とはもう婚約していないので、あなたの女呼ばわりされる筋合いはありません。そもそも、あなたが婚約破棄しましたよね?」
私がそう正論をぶつけるととマティスはぐっと言葉をつまらせたが、すぐに私を睨みつけて叫んだ。
「う、うるさい! お前は黙って俺に従っていればいいんだ! この──売女が!」
マティスがそう言った瞬間、ロマンがマティスを殴り飛ばしていた。
ロマンの拳がマティスの顔にめり込み、マティスは吹き飛ばされた。
「撤回しろ。僕の婚約者を侮辱するな」
「な、何をするんだ! 俺は第一王子だぞ!」
「いいえ、兄さん。あなたはもう第一王子ではありませんよ」
「なに……?!」
ロマンはとある書状を取り出した。
そしてそこに書かれている内容を読み上げる。
「ここには最近兄さんの素行が手に負えないこと。そしてこの先改善される見込みもないこと。また度重なる権力濫用に、王としての教育が不十分であることから、王位継承権を取り上げ、平民へと落とすことが書かれています」
ロマンが書状の内容を読み上げるとマティスは驚愕に目を見開く。
「そ、そんなバカな! こんなことがあるわけが無い!」
「いいえ、ありますよ。これは父上のサインです」
ロマンが指を差したところにはしっかりと国王のサインがなされていた。
「ああ、母上からは『自分のしたことの責任は持つように』とのことです。アンリエットとの婚約解消は未来永劫禁止。自分でアンリエットの面倒を見ろ、とのことですよ」
マティスは矢継ぎ早に言われたことを理解して、わなわなと口を震わせている。
「僕は最初ここまでする必要は無いと思っていましたが、さっきの姉さんへの侮辱を聞いて考えが変わりました。──もうあなたを兄だとは思わない」
ロマンはマティスに近づき、顔を寄せる。
「ヒッ……!」
「新たな第一王子として命じます。もう姉さんに近づくな!」
「……くそっ! くそくそっ!」
マティスは悔しげに歯を食いしばり、ロマンを睨みつけていたが、もう手も足も出ないことに気づいたのか、悪態をついて逃げて行った。
マティスの背中が見えなくなるとロマンが私に振り返った。
「ごめん、姉さん。傷ついただろう?」
「ううん。庇ってくれて嬉しかったわ」
実は、マティスの権力剥奪は前から決まっていたことだった。
しかしマティスの権力を剥奪すると、私にまで影響が及んでしまう。
国王様と王妃様は婚約者の私ことを心配して、賢く優秀なロマンと婚約をさせようとしたらしい。
そしてどうにか婚約を解消させてやれないかと試行錯誤していたところ、タイミング良くマティスが私との婚約の破棄を望んだ。
そこを渡りに舟と今回の書状を書いたらしい。
これが今回起こったことの全貌だった。
「姉さん、これから僕たちでよりよい国を作ろう」
ロマンが私を抱き寄せる。
「ええ、ロマン。あなたとならきっと出来るわ」
私たちは軽くキスをする。
未来はダイヤモンドのように輝いていた。
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