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5話
しおりを挟む「クソッ! どうなっているんだ!」
私達家族は食堂へと戻った。
そして次々に愚痴を言い合う。
「サイアク! 買いたい服があるのに!」
「私も欲しい宝石があるのにこれじゃ買えないわ!」
「僕は盛大なパーティーを開いて格の違いを見せつけてやりたかったのに、これじゃ出来ない!」
次女のウェンディが私に向かって甲高い声でキャンキャンと吠えた。
「ねぇお父様、これはどういうことなの!」
私は考えなしで私に聞いてくるその能天気な声にイライラとした。
「黙れ!私にも分からんのだ!」
「なんで! おかしいじゃない! お父様はこの家の当主じゃなかったの!」
「当主に決まっているだろう!」
「でもあいつらは違うって言ってたわ!」
「ぐっ……!」
確かにそうなのだ。
あの不届き者たちは私ではなくアリスが当主だと言っていた。
そんなことありえるはずが無いのに。
その時長男のマークがぼそりと呟いた。
「もしかして、本当にアリスがアトキンソン家の当主になったんだとしたら……」
私は思いっきりマークを殴りつけた。
「貴様ァ! 父に向かってなんて無礼なことを言うんだ!」
「すっ、すみません父上!」
「許すわけあるか! このっ! このっ!」
マークを何度も殴りつける。
目が腫れ、顔中が青くなってきたが止めない。
きっちりと教育しなければならないからだ。
そして何も言わなくなったマークから手を離す。
「貴様は親に無礼を働いたことを一日中反省してろ」
そして次に私は料理長を呼んだ。
「おい、こいつの今日の夕食はパンだけにしろ。ああ、そうだ。腹が減ったから今から食事を用意しろ」
「かしこまりました」
私は運動したあとのしっかりと教育を施した達成感と共に椅子に座る。
これでマークはまた立派な大人へ一歩近づいただろう。
夕食はすぐに出てきた。
やけに早いなと感心していると、テーブルに食事が並べられていく。
しかしその様子が少しおかしい。
テーブルの上に小さなパンが一つずつ置かれた後に何も料理が出てこないのだ。
私は使用人に声をかける。
「おい、夕食はどこだ」
「それが夕食でございます」
「は!? 何を言っているんだ! 確かにマークの食事をパンだけにしろと言ったが、私達までしろとは言ってないぞ!」
「いえ、確かに命令されました」
「私はしていないと言っているだろう!」
「違います。アリス様にです」
私はここでも出てきたアリスの名前に驚愕する。
「なっ、何だと!?」
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