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第六章「結びあう魂」
7、エルメティア
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「なにが恨みよ。その場で返さずに後から言い出す負け犬に、仕返しの権利などあるものですか!」
言い合いながら同時に互いの剣をぶつけ合い、炎女神の剣から放たれた紅蓮の炎を、復讐の女神の剣の黒炎で押し返す。
「自分の立場を傘にきてやりたい放題の卑劣な女に、小出しに返したところでまるで効かないでしょう?
一気に地獄まで叩き落とすため、まとめて返せるように溜めておいたのよ!」
「ふん、よく言う。男を取られてキレただけの雑魚が!
要は私を妬んでいるんでしょう?」
ギリギリとつばぜりあいをしながら舌戦を交わす。
「そっちこそっ、さっきのセドリックへの言い様を聞くと、私にずっと嫉妬していたみたいじゃない?」
「――っ!? ふざけないでよ。あんな軟弱者の『お飾り王子』のために、誰が嫉妬などするものですか。
ちょうどお似合いの『色気虫』のあんたに、喜んでくれてやるわ!」
「色気虫? 女なんだもの綺麗にするのは当然でしょう?
好んで男みたいな騎士服を着る、あなたのほうがおかしいのよ」
「――おかしいのは、名剣の使い手に選ばれながら、着飾ることと男のことしか頭になかったあんたじゃない!」
そこでいったんお互いの剣を払って下がると、今度は交互に剣を出しあって剣戟を繰り広げる。
幼い頃から男勝りに毎日剣を振り回していただけあり、エルメティアは相当な手練れだった。
女も強制的に軍人として育てるバーン家で育ち、日々過酷な訓練を受けてきた私でも、わずかに騎馬と剣の腕が劣っている。
ただし「想い」と「覚悟」の強さは別だ!
そう思えども、炎女神の剣がまとう業火は復讐の女神の剣に匹敵するほど激しかった。
とうとうやり合ううちに徐々に実力差が出て、厳しい攻撃を受けきれず、バランスを崩した私は情けなくも馬から落ちてしまう。
当然のように間髪入れず上から追撃が降ってくる。
その攻撃をなんとか地面に伏せって避けながら、苦し紛れにエルメティアの乗る馬の前左足を斬る。
馬が倒れる前にエルメティアは地面に飛び降り、私が起き上がる間も与えず、炎女神の剣で突き刺しにかかった。
すんでで転がって避け、串刺しをまぬがれた、その時。
「うああああああぁっ!!」
かん高いセドリックの悲鳴が響き、一瞬、エルメティアの注意が、平行して戦っている二人へと向く。
もちろんその隙を見逃す私ではない。寝たまま、最速で守護剣を横振りにする。
瞬間、エルメティアははっとしたように飛ぶも避けきれず、両足首から下のみが地面に転がり落ちた。
「ぎゃあああああっ!!」
絶叫を上げ、足から血を噴きだしてエルメティアがうつ伏せに倒れ込む。
反対に立ち上がった私は、まずは炎女神の剣を踏みつけてから、背後を確認する。
幸いセドリックは大腿から血を垂れ流していたが、致命的な傷ではないようだ。
ひとまずほっとすると、改めてエルメティアを見下ろす。
望んでいたように地面でのたうつ惨めな姿を見ても、思ったほどには気が晴れない。
「最後は私をあなどって、戦い中に気を散らすような傲慢な性格が仇になったわね、エルメティア」
冷たく見下ろしながら、やはり私が憎いのはデリアンで、エルメティアはおまけでしかないのだと再確認する。
「……嘘よっ、こんなの嘘よ、カエイン!」
「残念ながら、今のカエインは私の命令しか聞かないので、呼んでも無駄よ。
このままだとあなたは間違いなく失血死する。
でも特別に、これまでのセドリックへの仕打ちを謝ったうえで、命乞いするなら助けてあげてもいいわ。
私については見下されても仕方がない面があったとしても、セドリックは違う。
誰よりも優秀で思いやりがあって、あなたにだっていつも気を使っていたはずよ。
馬鹿にされたり辛く当たられる理由など、一つもなかったわ」
瀕死の状態で少しは反省するかと思えば、エルメティアの口から出たのは、相変わらずの憎まれ口だった。
「……ふん、むしろ気を使われれば、使われるほど腹が立ったほどよ……。
いつもいつも………本かあなたにしか興味がなくて……こっちに見向きもしない。
セドの癖に、私に無関心だなんて、許せない――」
顔を上げて苦々しくそう言った彼女の、セドリックと良く似た緑色の瞳には、深い悲しみの色が滲むようだった。
「エルメティア、やはり、あなた……」
「……勘違いしないで……私はあなたや、兄嫁への嫉妬に狂って死んだ母とは違う。
自分を愛さない男にみっともなく執着するような女じゃないわ……!」
口では否定しながらも、失血で青ざめたエルメティアの瞳は、求めるように戦っているセドリックへと向けられた――
言い合いながら同時に互いの剣をぶつけ合い、炎女神の剣から放たれた紅蓮の炎を、復讐の女神の剣の黒炎で押し返す。
「自分の立場を傘にきてやりたい放題の卑劣な女に、小出しに返したところでまるで効かないでしょう?
一気に地獄まで叩き落とすため、まとめて返せるように溜めておいたのよ!」
「ふん、よく言う。男を取られてキレただけの雑魚が!
要は私を妬んでいるんでしょう?」
ギリギリとつばぜりあいをしながら舌戦を交わす。
「そっちこそっ、さっきのセドリックへの言い様を聞くと、私にずっと嫉妬していたみたいじゃない?」
「――っ!? ふざけないでよ。あんな軟弱者の『お飾り王子』のために、誰が嫉妬などするものですか。
ちょうどお似合いの『色気虫』のあんたに、喜んでくれてやるわ!」
「色気虫? 女なんだもの綺麗にするのは当然でしょう?
好んで男みたいな騎士服を着る、あなたのほうがおかしいのよ」
「――おかしいのは、名剣の使い手に選ばれながら、着飾ることと男のことしか頭になかったあんたじゃない!」
そこでいったんお互いの剣を払って下がると、今度は交互に剣を出しあって剣戟を繰り広げる。
幼い頃から男勝りに毎日剣を振り回していただけあり、エルメティアは相当な手練れだった。
女も強制的に軍人として育てるバーン家で育ち、日々過酷な訓練を受けてきた私でも、わずかに騎馬と剣の腕が劣っている。
ただし「想い」と「覚悟」の強さは別だ!
そう思えども、炎女神の剣がまとう業火は復讐の女神の剣に匹敵するほど激しかった。
とうとうやり合ううちに徐々に実力差が出て、厳しい攻撃を受けきれず、バランスを崩した私は情けなくも馬から落ちてしまう。
当然のように間髪入れず上から追撃が降ってくる。
その攻撃をなんとか地面に伏せって避けながら、苦し紛れにエルメティアの乗る馬の前左足を斬る。
馬が倒れる前にエルメティアは地面に飛び降り、私が起き上がる間も与えず、炎女神の剣で突き刺しにかかった。
すんでで転がって避け、串刺しをまぬがれた、その時。
「うああああああぁっ!!」
かん高いセドリックの悲鳴が響き、一瞬、エルメティアの注意が、平行して戦っている二人へと向く。
もちろんその隙を見逃す私ではない。寝たまま、最速で守護剣を横振りにする。
瞬間、エルメティアははっとしたように飛ぶも避けきれず、両足首から下のみが地面に転がり落ちた。
「ぎゃあああああっ!!」
絶叫を上げ、足から血を噴きだしてエルメティアがうつ伏せに倒れ込む。
反対に立ち上がった私は、まずは炎女神の剣を踏みつけてから、背後を確認する。
幸いセドリックは大腿から血を垂れ流していたが、致命的な傷ではないようだ。
ひとまずほっとすると、改めてエルメティアを見下ろす。
望んでいたように地面でのたうつ惨めな姿を見ても、思ったほどには気が晴れない。
「最後は私をあなどって、戦い中に気を散らすような傲慢な性格が仇になったわね、エルメティア」
冷たく見下ろしながら、やはり私が憎いのはデリアンで、エルメティアはおまけでしかないのだと再確認する。
「……嘘よっ、こんなの嘘よ、カエイン!」
「残念ながら、今のカエインは私の命令しか聞かないので、呼んでも無駄よ。
このままだとあなたは間違いなく失血死する。
でも特別に、これまでのセドリックへの仕打ちを謝ったうえで、命乞いするなら助けてあげてもいいわ。
私については見下されても仕方がない面があったとしても、セドリックは違う。
誰よりも優秀で思いやりがあって、あなたにだっていつも気を使っていたはずよ。
馬鹿にされたり辛く当たられる理由など、一つもなかったわ」
瀕死の状態で少しは反省するかと思えば、エルメティアの口から出たのは、相変わらずの憎まれ口だった。
「……ふん、むしろ気を使われれば、使われるほど腹が立ったほどよ……。
いつもいつも………本かあなたにしか興味がなくて……こっちに見向きもしない。
セドの癖に、私に無関心だなんて、許せない――」
顔を上げて苦々しくそう言った彼女の、セドリックと良く似た緑色の瞳には、深い悲しみの色が滲むようだった。
「エルメティア、やはり、あなた……」
「……勘違いしないで……私はあなたや、兄嫁への嫉妬に狂って死んだ母とは違う。
自分を愛さない男にみっともなく執着するような女じゃないわ……!」
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