魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

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家政婦始めました

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三、家政婦始めました

程なく退院した私を約束通り団長様が迎えに来てくれた。

「本当に雇って頂いても宜しかったのですか?私の素性も知らないと思うのですが……」

団長様は少し笑って答えた。

「そう言われたらそうだな。君については病院で聞いたこと、ティナ•フィオレッタという名前と君の両親が旅商人だったことくらいか。でも君も俺のことをよく知らないのに家政婦を引き受けて良かったのか?」

私には助けてくれた恩人に対して絶対の信頼がある。

それに団長様にはアストリエ王国の魔法師団長という立派な立場がある。

団長様こそ、もっと料理がうまいベテランの家政婦でも、見た目が良い家政婦でもよりどりみどりだったのに私で良かったのか。

「もちろん。君に家政婦を頼んで良かったと思っている。あまり過剰に構われるのは好きではないし、家を留守にすることも多いから信用できる人間に頼みたいんだ」

それは私は信用してもいいってこと?

団長様の期待に添える仕事ができるよう全力を尽くそう。

一人で意気込んでいると、団長様の足が止まった。

「着いたぞ。ここが俺の家だ」

「……ここですか……?」

団長様はこじんまりした家と言っていたが、充分に大きい。

しっかりした門構えの立派なファミリー向けの家で、庭も広い。

「庭は全く手入れが行き届いていなくてな。申し訳ない」

団長様は雑草が生い茂った庭に目をやって申し訳なさそうに言った。

「いえ、むしろ燃えます」

「燃える?」

「このお庭は畑とかを作っても良いのですか?」

家庭菜園なんかできたら素敵だ。

「もちろんだ。君の好きにしてもらって構わない」

やった! 何を植えよう。

「次は家の中を案内しよう。と言ってもそんなに広いものでもないが」

そう言うと、団長様はドアを開けて中に入った。

「玄関を入って左手がキッチンとダイニング。右側がリビングだ」

少し埃っぽいがキッチンは綺麗だ。というか使った形跡がほとんどない。

「ほとんど自炊はしないから、ほぼ使っていない」

私の視線を感じ取ったのか、団長様が答えた。

リビングには居心地の良さそうなソファがあるが、その上にいろんな服やタオルが乗っている。

「奥の2つの扉が風呂とトイレだ」

お風呂だと!?

「お風呂があるのですか!?」

一般庶民は家にお風呂などないのに、さすが魔法師団の団長様宅だ。

「ああ、いつでも好きな時に入ればいい。すぐにお湯が出る魔道具が付けてある」

「私もお風呂に入ってよろしいのですか?」

食い気味に聞いてしまった。

お風呂なんて、両親と温泉というお湯が湧き出す町に行った時以来だ。

「あ、ああ。もちろんだ」

「ありがとうございます」

なんていい職場だ。

「その他にも家にあるものは何でも勝手に使っていい。ただし魔道具は使い方を間違えると危ないものもあるから最初に覚えるように」

「はいっ」

次に階段を上って二階に上がった。

「二階は三部屋ある。ここは俺の部屋」

左の部屋は団長様の部屋ですね。

「ここは今、物置にしている」

団長様は右の部屋を指差す。

「この真ん中の部屋は前の住人が残したベッドがあるから君はこの部屋を使うといい」

ガチャリと真ん中の部屋のドアを開けるとベッドと小さな洋服箪笥があった。

「ここが私の部屋……」

今まで旅をしていた生活だったので、自分の部屋どころか家もなかった。

密かに憧れていた自分の部屋がこんな形で実現するなんて。

「すごいです! こんな素敵な部屋に住めるなんて夢のようです」

「大袈裟だな」

「大袈裟なんかじゃないです。家政婦にこんな立派な部屋がいただけるなんて。
精一杯働きますのでよろしくお願いします」

私はぺこりと頭を下げた。

「俺のことはレオニスと呼んでくれ。君のことはティナと呼んでも構わないか」

「はい! レオニス様」

「様、はいらないけどな。まあ、今日からよろしく頼む」

「よろしくお願いします!」

そして、私とレオニス様の生活が始まったのだ。
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