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第44話 深層へ6
しおりを挟むひかるんの話によると、彼女は亜人症なのだそうだ。
亜人症はダンジョンがこの世界に誕生してから、生まれるようになった突然変異の子供たちにつけられる名だ。
そのメカニズムは今でも解明されていないらしい。
亜人には、ドワーフやエルフなんかもいるらしい。
ひかるんは亜人症のせいで、両親からひどい迫害を受け、それを隠すようになってしまった。
そのせいで引っ込み思案な性格になり、友達もあまりいないのだとか。
そんな秘密を知ってしまった今、彼女の味方をできるのは俺だけだ。
俺だけはずっとひかるんの友達でいようと思った。
「ひかるん、お母さんのいうことなんか気にする必要はないさ。俺がついてる」
「ありがとうございますハヤテさん」
「体の具合は、もう大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫みたいです。ちょっとグレートオーガにトラウマが……。駄目ですね……こんなんじゃ、下層クリアできません……」
それからしばらくして、ひかるんは無事に退院できた。
俺も日常に戻る。
ひかるんの秘密……まさかあんな秘密があったなんてな……。
なんとか力になってやりたいが、どうだろうな……。
それからまた数日して、なんと驚くべきweb記事が出た。
俺はその記事を見て、言葉を詰まらせた……。
【ひかるん、ソロでグレートオーガを討伐……!】
そんな記事がデカデカと、ネットニュースに乗っていたのだ。
俺は急いでひかるんに電話した。
「おいひかるん、これどういうことだ……!? 一人でグレートオーガ狩りにいったのか……!?」
血相を変える俺に対し、ひかるんは冷静に、なんでもないように答える。
「あ、はい。そうなんです。今回はハヤテさんの力なくても、自力で倒せるようになりました……!」
「発作は……トラウマは大丈夫なのか……?」
「え、ええ……なんとか……。えへへ……。大丈夫です。ちょっと危ない場面もありましたけど、無事です」
「そうか……よかった……」
とりあえず無事ならそれでいいと、電話を切る。
それから、俺は例の記事について調べた。
ひかるんがグレートオーガを倒したという一連の切り抜き動画が、さっそく動画サイトにあがっていた。
俺はそれを再生する。
ひかるんは、かなりしんどい思いをしながら、グレートオーガをなんとか命からがら倒せていた。
だが、正直危なっかしすぎる。
ひかるんはトラウマに苦心しながらも、なんとかグレートオーガに打ち勝った感じだった。
コメント欄はそんな勇敢なひかるんを賞賛するコメントばっかだったけど、正直俺は手放しで喜べない。
こんな無茶なことしてたら、身体も心もぶっこわれてしまう。
俺は社畜時代になんどかメンタルも体もやりかけてるから、よくわかる。
彼女はまるでなにかにとりつかれているようだった。
親からのストレスが原因なのかな……?
ひかるんはなにかに急かされるように、グレートオーガに立ち向かっていた。
こんな無理をする必要は、どこにもないのに。
ひかるん、メンタル大丈夫かな……。
グレートオーガにむりやり恐怖を克服しようとして、単独で立ち向かって……平気な顔してるけど、平気なわけない。
それに、親からあんなふうに扱われて……。
ひかるん、なにをそんなに焦っているんだ……。
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