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第47話 深層へ9
しおりを挟む「なあひかるん、亜人症のことについて、研究者とかには話したのか……?」
「いえ、それは特に……誰にも知られないようにしていましたから」
ひかるんの話によると、研究に参加している亜人症の人もいるらしい。
研究に協力することで、国からお金がもらえるのだとか。
配信がうまくいっていて、お金にこまっていないひかるんは、受けなかったらしい。
「俺の知り合いに、信頼できる研究者がいるんだ。相談してみないか? なにかわかるかもしれない」
「そうですね……わかりました」
ということで、俺たちは慶翠大学の美寄透音教授の元を訪れた。
美寄教授、以前におもちたちの体調が悪くなったときに助けてくれた人だ。
「ということなんです。美寄教授。なにか力になってくれませんか?」
「そうですね。確かに亜人症の寿命は短い……。今のところ、ひかるんの体調には問題はなさそうだけど……長くはないのは確かね」
美寄教授は検査結果を見ながら言った。
「どうにかなりませんか」
「そうね、たしかにひかるんの言うとおり、ダンジョンに潜ればなにかわかるかもしれない。深層はまだまだ解明されていない現象の宝庫よ。たしかに深層踏破なんてできれば、画期的な治療法がみつかるかもしれないわね」
「やはりそうですか……」
どうやらそれしか方法はなさそうだ。
だが、深層を踏破といっても、無策ではどうしようもない。
腕のいい攻略組の探索者数人がかりでも不可能なことをやり遂げようというのだ、それなりに無茶な方法をとらないといけないだろう。
「まあ、私は亜人症を治療っていう言い方にもちょっと疑問を抱いているのだれどね」
美寄教授はそんなことを言い出した。
そこは研究者によっても、意見がわかれるところなのだろう。
「というと?」
「だって、ひかるんたち、彼女らにとっては、生まれたときから亜人なんだもの。それは彼女たちのアイデンティティの一部でもあるわ。日本人を治療しようなんて言わないでしょう? それは生まれもった性質。私は治療法が見つかっても、亜人であることをやめさせるようなものなら反対だわ。もちろん、寿命の問題は解決すべきだとは思うけど……」
「なるほど……それは難しい問題ですね」
たしかに、亜人であることはそのまま本人のアイデンティティでもある。
生まれつきの性質を治療するなんて言われても、気分のいいものではないだろう。
亜人症は病気というよりはむしろ、特性といったほうがいいのかもしれない。
そこは発達障害なんかに似たものを感じる。
それ自体が悪いわけではなく、周りの環境によって不利になる。
それとも人種のようなものだろうか。
特定の人種を別の人種に治療するなんていったら、炎上しそうだしな。
そのへんは、まだまだ社会の亜人症に対する理解が進んでいないのかもしれない。
ただ一番やっかいなのが、寿命の問題だ。
そればかりはそうそうに解決しなければいけない。
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