くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。

くずもち

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第26話手遅れでした。

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 僕、楠 太平は神木さんと白達の居場所を探し回った。

 それはもう血眼である。

 ここ最近でここまで必死に行動したことなど、プラモの極小パーツがどこかに飛んで行って全然見つからなかった時くらいだろう。

 いや、心理的な焦りはそれとは比較にならない。

 さらに増員した狼軍団の案内でたどり着いたのは、学校の裏山にあった地元民も未発見の洞窟だった。

 そこからの鍾乳洞の探索は中々ハードで、軽い冒険家の真似事をする羽目になった。

「ゼーッ……ハー……ゼーッ……ハー……いい加減にしろ! どこまでこっそりする気だ! いきなりアドベンチャーパートはさすがにきつい!」

 運動不足の体をかろうじて支えているのは、日々の山道下校と体育の時間である。

 息も絶え絶えだが、だからこそ僕は言わねばならなかった。

「はー……白。お前はやってはならん領域に手を出したな……」

「ゴボゴボ!」

 何でか水の中にいる白は気まずげに目を泳がせた。

 これで後ろめたいことがあるのは確定だ。

 そして笑顔なのか泣き顔なのかわからない表情でへたり込んでいる神木さんと、なぜだかどこかで見たことがある龍が目に入った。

「……なに、何の遊び? すごい怖い」

 意味が分からず僕が思い切り首をかしげると、龍は雷みたいな声で笑い始めた。

「その力! 貴様が犯人か!」

「えぇ!」

 ウネウネ体をくねらせて龍は飛び上がる。

 洞窟の中いっぱいに広がった龍は暗闇の中で目を光らせると、全身から神々しいオーラを発して僕を威圧した。

「さて貴様、名を名乗れ!」

「楠 太平です。貴方は……川の水神様ですよね?」

 唐突な展開についていけないが、僕はその龍に心当たりがあった。

 この龍の水神はつい先日、怒りのあまり暴走して半強制的に静められたばかりだ。

 だがやっぱりやり方がお気に召さなかったらしく、水神様はお怒りであると。

「そうとも。先日の無礼、実に許しがたい。貴様の命を贄として、怒りを鎮めるとしよう」

 荒ぶる龍が厄介なことを言い始めたが、僕にも言い分がある。

「……それはどうでしょう?」

「なんだと?」

「貴方が怒りに我を忘れるのはまずいです。妖怪も人間もただでは済まない」

 水を司る妖怪は力が大きいほどそのあたり厄介だ。

 普段は子供とだって遊べるほど穏やかな気性なのに、一度荒ぶると被害が洒落にならないほど甚大になるのは、性質に近いものがある。

「知ったことか! だいたい百歩譲ってそうだとしても……水神に意識を飛ばすような攻撃を食らわすか!?」

「……いやー……それは僕じゃないからなぁ」

 どう言ったものかと頭を捻るが、まぁ確かに戦車の弾をいきなり後頭部にぶちかますのは手荒すぎるとは思うけど。

 その辺り塩梅は神のみぞ知る……とか説明しても怒らせそうだった。

「ごちゃごちゃと往生際の悪い! ……その死をもって人柱としてくれるわ!」

 龍は体に雲を纏い始めて、雷が発生した。

 どうやら怒りをぶちまけるつもりらしい。

 このまま黙ってそれをさせたら、僕達はもちろん死ぬだろう。

「やばいなー」

 突然すぎてなんも準備してないぞと冷や汗をかいていると、完全に龍の意識から外されていた白が水の中から神木さんに思念を飛ばした。

「杏樹! アレを私様に投げろ!」

「させるか!」

 龍は水を飛ばすがストラップ姿の狼達がすべてブロック。

 神木さんは助走をつけると勢いよくジャンプして、カバン事白の閉じ込められた水球の中に飛び込んだのだ。

「え? 何をして……」

 僕は神木さんの意図がつかめずにいたが、神木さんが投げたカバンから飛び出した箱を見つけてゾワッと鳥肌が立った。

「それは―――!」

 僕は血相を変え、駆け出していた。

 手を伸ばすが、当然間に合うはずもなく。

 箱はカバンから飛び出し、ポロリと中身がぶちまけられた。

「ひぃ!」

 僕は悲鳴を上げた。

 水の中にいる神木さんに中身は見えているのだろうか?

 僕は祈る。

 見えないでいてくれと。

 飛び出したのは、何度も何度もヤスリで磨き上げ、理想の形に整えられた女性の模型。

 オーダーメイド品の……いわゆる一つの美少女フィギュア。狐バージョンである。

 初制作の美少女フィギュアをクラスメイトの女子に見られるとかどんな拷問だよ! と僕のピュアな部分が叫んだ。

 しかし今更手を伸ばしても、僕のこの手は届かない。

「勘弁して!」

 苦し紛れに叫んだが、無情にも原型は白の手の中だった。

 瞬間、嵐のような力が吹き荒れて、白を捕らえていた水は弾け飛んだ。

「ヌゥゥゥゥ!」

 龍もあまりに巨大な力に振り向き、白に向かって唸る。

「あ、ああ……」

 僕は文字通り手遅れだった自分の手を下ろし、力なく膝をついた。

 弾け飛んだ水球の中から現れたのは、狐ではない。

 真っ白な狐の面と赤いマントをつけた美女だ。

 ただし筋肉がムキッと浮き上がった、ピチッとスーツを着ている美女はアメリカンコミック風だったが。
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