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第35話龍虎の提案
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「こおおぉぉぉぉ……」
中華料理は火力が命。
油のなじんだ中華鍋を手足の様に操り、厳選された具材の数々が炎を泳ぐ。
僕が炎を支配した時、料理もまた味という形で応えてくれるはずだ。
しかし僕の格好は神木さんに対して少々中華感が足りなかったか? 髪か? 髪を剃ればそれっぽいか?
今更なひらめきだが、チャンスがあれば試みよう。
高く頭の上にそびえたつコック帽にかけて、今回の料理は外せない。なにせマジなので。
猛烈なスピードで用意される料理と、すでに完成され盛りつけられた色とりどりの料理の数々を、神木さんが次々と運び入れる。
宴の空気でポロッと神木さんにお得情報を漏らしてくれれば最高なのだが、残念ながらそううまくはいかないだろう。
だが白蓮様と海青様以外の妖怪達も趣向を凝らした料理に興味津々だった。
「……うーむ。なんとも香しい」
まず白蓮様はじっと香り立つ料理を見つめていた。
そして意を決してガブリとかじりつく。
「……おおおお!」
口にした瞬間、ビビビと体が震えて毛が逆立っていた。
「むむ……」
海青様は大きな杯に並々注がれた酒を前に唸っていた。
しばらくして、恐る恐る口をつけると一気に飲み干し、ゴハァーと熱い息を吐いた。
「これが味というモノか……! おい、海青。こいつは……すごいな!」
「……うむ。刺激が―――違う! 」
「よし! 大丈夫だ! どんどん行くぞ!」
「酒だ! 」
「はい! ただいま!」
どうやら試みは娯楽として合格してくれたみたいだ、ひとまず第一関門突破といったところだった。
こいつは忙しくなってきた。
おつきの妖怪達も集まってきて踊りだし、宴会は盛況だった。
こんな歓迎がどの程度意味があるかは未知数だったが、幸いなことにご機嫌な龍と虎は僕を呼び尋ねた。
「それで太平よ? 我らを呼び出したのには理由があるのだろう? 言うてみろ言うてみろ」
「まぁそうだろうな。まぁ遠慮せずに言ってみるがいい」
海青様も乗ってくれたので、僕は渡りに船とさっそく相談を始めた。
「ええ。実は神木さんの身を守る方法を考えていまして、いい案はないものかと知恵を貸していただきたいのです」
すると白蓮様は楽しそうに、そして海青様の表情は露骨に渋くなった。
「ああ。こいつの差し金で、お前の家に賊が侵入した件だな………無理もない」
「うぐ………いや。我は別に命じたわけではないのだぞ?」
「もちろん。その辺りは納得しております。しかし、今後は神木さんも色々と妖怪界隈との縁が出来るでしょうから、何か対策をしたいのです。そこでお二方の意見を伺いたいなと思いまして」
「「うーん」」
僕の相談を聞いた神様達は悩まし気に唸る。
そして海青様が口を開いた。
「お前の言う対策とは我が侵入出来ないほどに堅牢な守りということだよな? しかし、我は言ってしまえば水の化身。水の侵入を阻むのは難しい。それはたとえ山を司る土地神であったとしてもだ」
海青様がチラリと白蓮様に視線を送ると、白蓮様は眉をピクリと動かして面白くなさそうに頷いた。
「……そうかもしれんな。霊的防御という意味では、お前の家は城とも言えるほど強固なのだ。だがどんなに堅牢な城であろうとも、侵入する方法はあるものだ。しかし太平よ? 最初の方向性はよかったのではないか?」
「というと?」
「白の奴を護衛としてつけたことだよ」
「?」
護衛としてつけるというか、ここらの案内役として白と神木さんが一緒に行動しようというやつか。
確かに結果的に白が一緒にいたことで神木さんの身の安全が守られたのは間違いない。
「……個人的には最善だったというにはちょっと厳しいですが」
僕としては素直に頷きがたいが、やはり直接戦った海青様の白への評価は高かった。
「ふむ。まぁ確かにそうだ。あの狐は強かった」
そうだろうと白蓮様は頷いた。事実アイテムを使ったとはいえ、それだけの実力を見せつけたのだから白の奴もうまくやったものだった。
「今も昔も守りを固める方法など変わらんだろう。固い壁を作る。罠を張る。鍵をかける……そして護衛を雇うのはかなり効果的だ」
「護衛を雇うですか……」
「そうとも。もっと守りに長けた者を探すもよし、数に物を言わせるのもよい」
「ああ。確かに」
僕は頷く。
そこは人間だろうが妖怪だろうが変わらないのかもしれない。
「眼鏡に適う者がいなければそこそこの者を強化すればよい。お前が依り代を作ればこれ以上は中々なかろう」
白蓮様は自分の体、この場合は僕の作った依り代をさしてニヤリと笑った。
白蓮様の言う通り、僕の模型を使えば強化も可能だが問題はその中身だった。
「しかし、都合よく雇われてくれますかね?」
神木さんが安心感を得るためには、少なくとも白以上に守りに長けて、信頼出来る護衛が最低条件だ。
そんな都合の良い妖怪のボディーガードがいるかどうか?
無謀のような気がするが、白蓮様がわざわざそういう方向に話を振ってきた以上当てがあるとみるべきか。
するとやはり楽しそうに白蓮様がフムと頷いた。
「心当たりがある。ただし相応の危険が伴うが?」
「……なんです?」
聞くからに、不安になる語り口である。
そして案の定白蓮様の提案は、なかなかハードだった。
「東の方にタタリが出た。元は鬼神だという噂だ」
「……げぇ」
つい聞いた瞬間に僕は声を漏らしてしまった。
慌てて口をふさぐが、そんな様子に龍と虎は楽しそうに笑った。
「そう嫌な顔をするな。タタリは止めねばならん。それに鬼神というのが本当ならこれほど守りに長けた者もいまい。幸い汚れを祓うのにちょうど良い縁もある。なぁ?」
そう白蓮様から振られて、今度は海青様も髭を揺らして頷いた。
「……まぁ良かろう。今回の一件、我も当事者であるからな。連れてくることが叶うのなら協力しよう」
おやおや、これは自分で言い出した手前もは引っ込みがつかない感じか。
僕は苦虫を嚙み潰した心地で、しかしグッと表情が崩れるのを堪えていると、白蓮様は人間の顔でいつも以上に楽しそうに見える表情を浮かべ僕を指さす。
「信頼を得たいのなら男を見せろよ太平。まぁ本物の鬼神相手ではそうも言っていられないだろうが」
「……ありがとうございます」
よりにもよってタタリとは、どうしたものだろうか?
僕は結局眉間に皺を寄せた。
中華料理は火力が命。
油のなじんだ中華鍋を手足の様に操り、厳選された具材の数々が炎を泳ぐ。
僕が炎を支配した時、料理もまた味という形で応えてくれるはずだ。
しかし僕の格好は神木さんに対して少々中華感が足りなかったか? 髪か? 髪を剃ればそれっぽいか?
今更なひらめきだが、チャンスがあれば試みよう。
高く頭の上にそびえたつコック帽にかけて、今回の料理は外せない。なにせマジなので。
猛烈なスピードで用意される料理と、すでに完成され盛りつけられた色とりどりの料理の数々を、神木さんが次々と運び入れる。
宴の空気でポロッと神木さんにお得情報を漏らしてくれれば最高なのだが、残念ながらそううまくはいかないだろう。
だが白蓮様と海青様以外の妖怪達も趣向を凝らした料理に興味津々だった。
「……うーむ。なんとも香しい」
まず白蓮様はじっと香り立つ料理を見つめていた。
そして意を決してガブリとかじりつく。
「……おおおお!」
口にした瞬間、ビビビと体が震えて毛が逆立っていた。
「むむ……」
海青様は大きな杯に並々注がれた酒を前に唸っていた。
しばらくして、恐る恐る口をつけると一気に飲み干し、ゴハァーと熱い息を吐いた。
「これが味というモノか……! おい、海青。こいつは……すごいな!」
「……うむ。刺激が―――違う! 」
「よし! 大丈夫だ! どんどん行くぞ!」
「酒だ! 」
「はい! ただいま!」
どうやら試みは娯楽として合格してくれたみたいだ、ひとまず第一関門突破といったところだった。
こいつは忙しくなってきた。
おつきの妖怪達も集まってきて踊りだし、宴会は盛況だった。
こんな歓迎がどの程度意味があるかは未知数だったが、幸いなことにご機嫌な龍と虎は僕を呼び尋ねた。
「それで太平よ? 我らを呼び出したのには理由があるのだろう? 言うてみろ言うてみろ」
「まぁそうだろうな。まぁ遠慮せずに言ってみるがいい」
海青様も乗ってくれたので、僕は渡りに船とさっそく相談を始めた。
「ええ。実は神木さんの身を守る方法を考えていまして、いい案はないものかと知恵を貸していただきたいのです」
すると白蓮様は楽しそうに、そして海青様の表情は露骨に渋くなった。
「ああ。こいつの差し金で、お前の家に賊が侵入した件だな………無理もない」
「うぐ………いや。我は別に命じたわけではないのだぞ?」
「もちろん。その辺りは納得しております。しかし、今後は神木さんも色々と妖怪界隈との縁が出来るでしょうから、何か対策をしたいのです。そこでお二方の意見を伺いたいなと思いまして」
「「うーん」」
僕の相談を聞いた神様達は悩まし気に唸る。
そして海青様が口を開いた。
「お前の言う対策とは我が侵入出来ないほどに堅牢な守りということだよな? しかし、我は言ってしまえば水の化身。水の侵入を阻むのは難しい。それはたとえ山を司る土地神であったとしてもだ」
海青様がチラリと白蓮様に視線を送ると、白蓮様は眉をピクリと動かして面白くなさそうに頷いた。
「……そうかもしれんな。霊的防御という意味では、お前の家は城とも言えるほど強固なのだ。だがどんなに堅牢な城であろうとも、侵入する方法はあるものだ。しかし太平よ? 最初の方向性はよかったのではないか?」
「というと?」
「白の奴を護衛としてつけたことだよ」
「?」
護衛としてつけるというか、ここらの案内役として白と神木さんが一緒に行動しようというやつか。
確かに結果的に白が一緒にいたことで神木さんの身の安全が守られたのは間違いない。
「……個人的には最善だったというにはちょっと厳しいですが」
僕としては素直に頷きがたいが、やはり直接戦った海青様の白への評価は高かった。
「ふむ。まぁ確かにそうだ。あの狐は強かった」
そうだろうと白蓮様は頷いた。事実アイテムを使ったとはいえ、それだけの実力を見せつけたのだから白の奴もうまくやったものだった。
「今も昔も守りを固める方法など変わらんだろう。固い壁を作る。罠を張る。鍵をかける……そして護衛を雇うのはかなり効果的だ」
「護衛を雇うですか……」
「そうとも。もっと守りに長けた者を探すもよし、数に物を言わせるのもよい」
「ああ。確かに」
僕は頷く。
そこは人間だろうが妖怪だろうが変わらないのかもしれない。
「眼鏡に適う者がいなければそこそこの者を強化すればよい。お前が依り代を作ればこれ以上は中々なかろう」
白蓮様は自分の体、この場合は僕の作った依り代をさしてニヤリと笑った。
白蓮様の言う通り、僕の模型を使えば強化も可能だが問題はその中身だった。
「しかし、都合よく雇われてくれますかね?」
神木さんが安心感を得るためには、少なくとも白以上に守りに長けて、信頼出来る護衛が最低条件だ。
そんな都合の良い妖怪のボディーガードがいるかどうか?
無謀のような気がするが、白蓮様がわざわざそういう方向に話を振ってきた以上当てがあるとみるべきか。
するとやはり楽しそうに白蓮様がフムと頷いた。
「心当たりがある。ただし相応の危険が伴うが?」
「……なんです?」
聞くからに、不安になる語り口である。
そして案の定白蓮様の提案は、なかなかハードだった。
「東の方にタタリが出た。元は鬼神だという噂だ」
「……げぇ」
つい聞いた瞬間に僕は声を漏らしてしまった。
慌てて口をふさぐが、そんな様子に龍と虎は楽しそうに笑った。
「そう嫌な顔をするな。タタリは止めねばならん。それに鬼神というのが本当ならこれほど守りに長けた者もいまい。幸い汚れを祓うのにちょうど良い縁もある。なぁ?」
そう白蓮様から振られて、今度は海青様も髭を揺らして頷いた。
「……まぁ良かろう。今回の一件、我も当事者であるからな。連れてくることが叶うのなら協力しよう」
おやおや、これは自分で言い出した手前もは引っ込みがつかない感じか。
僕は苦虫を嚙み潰した心地で、しかしグッと表情が崩れるのを堪えていると、白蓮様は人間の顔でいつも以上に楽しそうに見える表情を浮かべ僕を指さす。
「信頼を得たいのなら男を見せろよ太平。まぁ本物の鬼神相手ではそうも言っていられないだろうが」
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