2月31日 ~少しずれている世界~

希花 紀歩

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3月9日(月)

*2*

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「ごめんね~遅くなっちゃって。これお菓子。SNSで話題になってたの。皆で食べよう。」

訪ねてきたのは茉結だった。彼女が来ることは知らなかったけれど、いてくれるととてもありがたかった。

「わ、可愛い!写真撮ってアップしなきゃ。ありがとね!今ちょうどお茶入れてるとこ。カナとは話したよ。」

「そっか。ごめんね叶未かなみちゃん。パラレルワールドのこと勝手に話しちゃって。アリサちゃんなら信じてくれると思ったから。」

「ううん、ありがとう。あ、私もお菓子持ってきた。あの和菓子屋のアリサが好きなやつ。」

「わぁ!カナもありがとう!女子会しよしよ!何頼もっか。タイ料理とベトナム料理どっちがいいかな?両方頼んじゃう?」

アリサがスマホを開いてデリバリーメニューを選んでいる中、茉結が楽しげに思い出話を始めた。

「アリサちゃんとミコトくんの同棲・引っ越し祝いでここに来た時はインドカレーだったよね。ミコトくん辛いの苦手でね。甘口でもダメだったよね。」

「ま、茉結・・・!」

元いた世界でも同じようにここで皆でカレーを食べたけれど、今はミコトくんの話題は避けないとと思い制するがアリサは『そうそう、あのお店安くてめっちゃ美味しかったのに、移転しちゃったんだよね。』と残念がっている。

「あの時アリサちゃん、スーパーに売ってるキャラクターの絵がついたお子様用のカレーならミコトくんも食べられるから買ってくる、それをお店のナンにつけなよ、ってわざわざ買いに行ったんだよね。ミコトくんのこと愛してるなーと思った。」

「あー!そうだったねー!懐かしー!あれ、ここのお店、ポストにクーポンつきのチラシ入ってて出前してくれるって書いてあったとこかも。直接お店に頼んだ方が安くなるよね。どこだっけあのクーポン。」

アリサが奥に行ったタイミングで茉結に『今ミコトくんとの思い出話はしない方がいいよ。』と耳打ちするが『どうして?アリサちゃん平気そうじゃない?ここのアリサちゃんはさっぱりした性格だから。』と返される。

───ここにいる茉結も私が知ってる茉結と同じく察してくれる性格のはずなのに・・・ここははっきり言わないと駄目だ。

「私達を心配させたくなくて気丈に振る舞ってるだけだと思うよ。そういう子だし。」

そう言うと茉結は吹き出して『プッ!いつまで続くか見物だね。』と笑った。そのゾッとするような表情は私が知っている茉結のものではなかった。
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