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3月14日(土)
*10*
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「なっ!?何を・・・!?」
男性はかなり動揺しているようだが、この状況を作った張本人である私の方がもっと動揺しているに違いない。
「こ、ここ、これなら、私の頭頂部しか見えませんよ・・・ね?」
「いや、でもこれはさすがに・・・。」
男性と密着してすぐ下着も完全に消え去った。彼の体温が上がってきているように感じる。
───早く、着いて・・・。
願いながら目を閉じる。
「もう間もなくです。」
しばらくしてホッとしたように言われ、目を開ける。辺りが明るくなってきていた。
───はっ!指輪は・・・!?
男性から体を少し離し、下半身を隠している左手を見る。
───よかった・・・ある・・・あれ、でも少し薄くなってる!?
思わず手のひらを目の前に持ってくると、指輪はわずかに消えかけていた。
「だめ!!消えないで!!お願い!!風凛くんとの唯一の・・・!」
血が止まってしまいそうなくらい強く薬指を握りしめる。
「ざ、ざ残念ですが、その、あちらの世界のものは何も・・・持ち帰ることが出来ません・・・記憶は消えません、が・・・。」
男性の口調は先程より動揺していた。はっと気づくと私の身体の全てが彼の目に晒されていた。
「いやあああ!!」
風凛くんがプロポーズと共にはめてくれた指輪が消えてしまうことへの絶望、そしてつい先程出会ったばかりの異性に裸を見られている羞恥心から叫んで薬指を握ったまま崩れ落ちた。地面や床と言えるところに感触はない。かといってふわふわと浮いているわけでもなかった。
固くて冷たい指輪の感触がなくなり握った指を開くとスーッと消えていくところだった。
元の世界に戻り風凛くんとはもう二度と会えなくなることについて、自分は受け入れられたと思っていた。でも、とても受け入れられる事実ではなかった。今になって感情が爆発する。
「風凛くん!!風凛くん!!ああぁ~!!」
なりふり構わず号泣しているうちに感触がなかった床が固くなっていく。それと同時進行で私の身体の恥ずかしい部分が少しずつ濃くなる下着によって隠されていき、その後洋服を身に付け始めた。
見慣れた自分の部屋の全身鏡の前に着いた時には私の全身は完全に洋服で覆われていて、頬には涙の筋がいくつも通っていた。
男性はかなり動揺しているようだが、この状況を作った張本人である私の方がもっと動揺しているに違いない。
「こ、ここ、これなら、私の頭頂部しか見えませんよ・・・ね?」
「いや、でもこれはさすがに・・・。」
男性と密着してすぐ下着も完全に消え去った。彼の体温が上がってきているように感じる。
───早く、着いて・・・。
願いながら目を閉じる。
「もう間もなくです。」
しばらくしてホッとしたように言われ、目を開ける。辺りが明るくなってきていた。
───はっ!指輪は・・・!?
男性から体を少し離し、下半身を隠している左手を見る。
───よかった・・・ある・・・あれ、でも少し薄くなってる!?
思わず手のひらを目の前に持ってくると、指輪はわずかに消えかけていた。
「だめ!!消えないで!!お願い!!風凛くんとの唯一の・・・!」
血が止まってしまいそうなくらい強く薬指を握りしめる。
「ざ、ざ残念ですが、その、あちらの世界のものは何も・・・持ち帰ることが出来ません・・・記憶は消えません、が・・・。」
男性の口調は先程より動揺していた。はっと気づくと私の身体の全てが彼の目に晒されていた。
「いやあああ!!」
風凛くんがプロポーズと共にはめてくれた指輪が消えてしまうことへの絶望、そしてつい先程出会ったばかりの異性に裸を見られている羞恥心から叫んで薬指を握ったまま崩れ落ちた。地面や床と言えるところに感触はない。かといってふわふわと浮いているわけでもなかった。
固くて冷たい指輪の感触がなくなり握った指を開くとスーッと消えていくところだった。
元の世界に戻り風凛くんとはもう二度と会えなくなることについて、自分は受け入れられたと思っていた。でも、とても受け入れられる事実ではなかった。今になって感情が爆発する。
「風凛くん!!風凛くん!!ああぁ~!!」
なりふり構わず号泣しているうちに感触がなかった床が固くなっていく。それと同時進行で私の身体の恥ずかしい部分が少しずつ濃くなる下着によって隠されていき、その後洋服を身に付け始めた。
見慣れた自分の部屋の全身鏡の前に着いた時には私の全身は完全に洋服で覆われていて、頬には涙の筋がいくつも通っていた。
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