甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

Love gauge:10 甘過ぎるお仕事

＊14＊

「・・・あの、ゆ、夕飯てもう食べました？」

夕飯後も仕事を続ける場合はそれぞれのタイミングでダイニングで夕食をとっていたが、仕事を終わりにしている場合彼は自室で食べることがほとんどだった。

「いや、後で冷凍の炒飯かカップ麺でも食べようかと。」

その言葉に意を決してゆっくりとドアを開ける。私の手には彼の分の夕食が乗ったお盆があった。

「あ、あの、もしよかったら、その、食材たくさん買ったから、ご迷惑じゃなければ、えっと、荷物持って頂いたし、あ、嫌いなものとか・・・。」

しどろもどろになっていると彼は立ち上がりこちらにやって来た。

「・・・これ、全部作ったの？」

お盆の中を覗き込んだ彼は驚きを含んだような声を出した。今年の夏はやたらと暑いので夏バテ予防や疲労回復を意識したメニューにしてみた。帆立と茗荷みょうがの炊き込みご飯に冬瓜とキムチのスープ、豚肉の梅しょうが焼き、オクラとプチトマトの冷製茶わん蒸し、茄子とちりめんじゃこのポン酢和えだ。

「は、はい、あの、お口に合うか・・・。」

言っている途中でお盆が持ち上げられた。

「頂くよ。」

そう言った彼の表情はいつもより柔らかく見えた。

「あ、はい、あの、お皿は・・・」

「洗って水切りに置いとくから。」

『シンクに置いておいてください。』と言おうとしたのを遮られて、なんと返したらいいのかわからず曖昧に頭を下げて逃げるようにドアを閉めた。