甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

Love gauge:20 嬉し過ぎる言葉

＊8＊

「その・・・か、可愛かったから、どうしようかと思って・・・。」

「か・・・！？」

『可愛かった』の部分は声が弱々しくて、まるで彼の人生で初めて発せられたかのように初々しい響きを持っていた。それ故ゆえにかなりの破壊力を誇っており、彼の戸惑いの何倍もの困惑が私を襲う。

あの男性ひとははっきりとした声で何度も『可愛い』と言ってくれた。でもどこかでなんだかこなれ過ぎているような、気持ちがこもっていないような、むしろ他の意味もこめられているようなそんな気もしてしまっていた。そんなわけない、と自分に言い聞かせていたのだけれど。

一方若泉さんの口から絞り出すように発せられた『可愛い』は私の体の中心を貫いてそこから熱を放ち全身を溶かしていくようだった。仕事ぶりだけではなく見た目までも誉められてしまいもう限界だ。なんだか急に喉が乾いてきたように感じる。

「・・・でも、あんたとだからこの翻訳が進められる。uniがおじさんチェッカーだったら・・・その、こんな風・・・に進めること出来なかったし。」

こんな風・・・つまり、翻訳の参考にする為に触れ合いながら、ということだ。

「・・・あ、あ、はは、なら、よかった、です・・・。」

なんて返したらいいのかわからずぎこちなくそう言ってベッドから立ち上がり自分の席に戻る。その背中に一瞬若泉さんの視線を感じだけれど、彼もすぐに自席に戻って作業を再開したのでホッとした。

けれどこの後の若泉さんの発言にすぐにまた心をかき乱されてしまうことになるのだった。