甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

Love gauge:120 尊過ぎる恋心

＊2＊

頭の中はトキでいっぱいだけれど、『これは仕事、彼はビジネスパートナー。』と心の中で唱え続けながら彼の方を見ないようにして、ひんやりと涼しい鍾乳洞の中を進んでいく。

「すごいね。1cm伸びるのに70年から100年かかるんだって。ヒトの一生くらいなんだね。」

看板に書かれた説明を見ながらつらら石を見つめる。

自然が作った造形美。その圧倒的な大きさと不思議さに感動していた。そんな場所がカラフルにライトアップされているなんて興ざめ感もあったけれど、ライトがないと真っ暗だろうし、こういうものなのかもしれない。

他にも見学者がいるのかもしれないけれど誰にも会わなかった。水分を感じる洞窟の中は滑りそうなところや狭くて身を屈めなくてはいけないところがあるし階段も多くて結構疲れてきていた。最近寝不足なのもあるかもしれない。

「あそこのベンチで休もうか。」

そんな私に気づいてくれたのか前を歩くトキが振り返って声をかけてくれた。ホッとして『うん。』と言いながら一歩踏み出すとズルッと足が滑ってしまった。トキがサッと腕を掴んでくれる。『あ、ありがと・・・。』ちょうど翻訳中のゲームにもこんなシーンがあった。よくあるシチュエーションだ。

───ゲームではこの後抱き寄せられるんだよね・・・。

そう思っているとその通りに私はトキの胸に収まった。

「やっぱり、駄目だ・・・。」

彼が苦しげに呟いた。