6 / 52
第二話 コーヒーとラブストーリー
scene6 収録後
しおりを挟む
―大知―
どうにか収録開始時間には間に合ったけれど、動揺していたのか台本を読むのに随分噛んでしまった。
「あんなに噛んでる大知くん、レアやなあ。きっと放送されたら、ファンが喜ぶで」
スタジオから出たところで、悠貴がからかってくる。
「本当ごめん……時間見てなくて慌てちゃった」
「あはは、さすが大知くん。マイペースやなあ」
「ほんとだよね、気をつけないと」
「まあまあ、ええんちゃう。間に合って良かったわ」
控室で荷物をまとめ、電源を落としていたスマホのスイッチを入れる。同じようにスマホを触っていた悠貴が、あれ、と呟いた。くすくすと笑い始める。
「あー、そういう事かあ」
「え、何」
「大知くん、眞白に会ったんやね?」
どき、と心臓が跳ねた。
「何で……眞白、何か言ってた?」
声が上擦る。すると、悠貴は画像が表示された画面をこちらに向けてきた。
テーブルの上にぽつんと置かれたコーヒーが写っている。
「……あ!」
「大知くんの忘れ物、やって」
「あー……」
時間を見てあまりに慌て過ぎて、全く口を着けずに置いてきてしまったのだ。
「ごめん、って言っておいて……」
「言っとくわ。これから眞白と待ち合わせやし」
「あ、そうなの?」
「うん、ご飯行くねん。ラジオの収録って言ってあったから、近くのカフェで時間つぶしとったんやわ」
「そういうことね」
荷物をまとめ、上着を羽織る。
「何食べに行くの」
「んー、どうしよかな。実は眞白のおばあちゃんが東京遊びに来ててな。今から一緒に行くんやけど」
「へえ、おばあちゃんが」
「何か展覧会の絵を見がてら、孫に会いに来たらしいわ。何で俺までって思うんやけどまあ、眞白のばあちゃんとは顔見知りやからな。久しぶりに会ってくるわ」
「さすが幼なじみ」
「長い付き合いやで。…っと、はよ行かな」
急いでリュックを背負い、控室の戸に手をかけようとした悠貴が、ふと思いついた様に俺の方を振り返った。
「そうや、大知くんも今度ご飯行く?」
「ハルと?いいよ、いつでも」
「そうじゃなく。眞白と三人で」
「…へ?」
踏み出しかけた足が固まる。悠貴は戸を開けながら、くすくすと笑った。
「大知くん、眞白のこと気になるんやろ」
「え、何で」
「隠さんでもええで。じゃ、また計画しとくな」
「ちょ、ハル…」
例によって相変わらず、勝手にそう言い残して悠貴は廊下を小走りに駆けて行っってしまった。
どうにか収録開始時間には間に合ったけれど、動揺していたのか台本を読むのに随分噛んでしまった。
「あんなに噛んでる大知くん、レアやなあ。きっと放送されたら、ファンが喜ぶで」
スタジオから出たところで、悠貴がからかってくる。
「本当ごめん……時間見てなくて慌てちゃった」
「あはは、さすが大知くん。マイペースやなあ」
「ほんとだよね、気をつけないと」
「まあまあ、ええんちゃう。間に合って良かったわ」
控室で荷物をまとめ、電源を落としていたスマホのスイッチを入れる。同じようにスマホを触っていた悠貴が、あれ、と呟いた。くすくすと笑い始める。
「あー、そういう事かあ」
「え、何」
「大知くん、眞白に会ったんやね?」
どき、と心臓が跳ねた。
「何で……眞白、何か言ってた?」
声が上擦る。すると、悠貴は画像が表示された画面をこちらに向けてきた。
テーブルの上にぽつんと置かれたコーヒーが写っている。
「……あ!」
「大知くんの忘れ物、やって」
「あー……」
時間を見てあまりに慌て過ぎて、全く口を着けずに置いてきてしまったのだ。
「ごめん、って言っておいて……」
「言っとくわ。これから眞白と待ち合わせやし」
「あ、そうなの?」
「うん、ご飯行くねん。ラジオの収録って言ってあったから、近くのカフェで時間つぶしとったんやわ」
「そういうことね」
荷物をまとめ、上着を羽織る。
「何食べに行くの」
「んー、どうしよかな。実は眞白のおばあちゃんが東京遊びに来ててな。今から一緒に行くんやけど」
「へえ、おばあちゃんが」
「何か展覧会の絵を見がてら、孫に会いに来たらしいわ。何で俺までって思うんやけどまあ、眞白のばあちゃんとは顔見知りやからな。久しぶりに会ってくるわ」
「さすが幼なじみ」
「長い付き合いやで。…っと、はよ行かな」
急いでリュックを背負い、控室の戸に手をかけようとした悠貴が、ふと思いついた様に俺の方を振り返った。
「そうや、大知くんも今度ご飯行く?」
「ハルと?いいよ、いつでも」
「そうじゃなく。眞白と三人で」
「…へ?」
踏み出しかけた足が固まる。悠貴は戸を開けながら、くすくすと笑った。
「大知くん、眞白のこと気になるんやろ」
「え、何で」
「隠さんでもええで。じゃ、また計画しとくな」
「ちょ、ハル…」
例によって相変わらず、勝手にそう言い残して悠貴は廊下を小走りに駆けて行っってしまった。
21
あなたにおすすめの小説
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい
日向汐
BL
番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
過保護なかわいい系美形の後輩。
たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡
そんなお話。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
【攻め】
雨宮千冬(あめみや・ちふゆ)
大学1年。法学部。
淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。
甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。
【受け】
睦月伊織(むつき・いおり)
大学2年。工学部。
黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる