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第十話 誰よりも大切な存在
scene45 ジュエリーショップ
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-大知-
あちこちで瞬くイルミネーションの光が、やたらと目に眩しかった。
クリスマスムードに浮かれる繁華街の通りを一人、ぼんやりと歩く。
昨日、悠貴に言われた事がずっと頭の中を巡っている。気持ちの整理がつかなくて、仕事終わりに一人歩いて帰る途中だった。
週末の夜だからか、平日にも関わらず人通りは多い。今から食事にでも行くのか近い距離で歩く男女の姿も多かった。手を繋いで歩く学生のカップルも目につく。
正直、羨ましかった。
幼い頃からずっと芸能界で生きてきて、恋愛は自分にとって縁遠いものだと思っていた。
恋人がいた事が無いわけじゃない。でも長く続いた試しが無かった。仕事が忙しく、なかなか会えないでいるうちに相手の気持ちが冷めてしまう。アイドルとして活動を始めてからは、ますますそういう事からは遠ざかっていった。
でももしかしたら、心のどこかでブレーキを掛けていただけかもしれない。
碧生の言っていた事もよく分かる。
アイドルはファンに夢を見せる存在だ。
特定の恋人の存在は、その夢を壊してしまう。
応援してくれるファンに対して誠実であろうとする為には、本当の自分を押し殺すしかない。
"―応援してくれるファンに、嘘つくようなことしたらあかんと思う"
……そうだね、眞白。分かってる。
だけど、君を想う気持ちに嘘をついてまで俺がアイドルを続ける意味って何なんだろう。
たった一人の好きな子の事すら笑顔にしてあげられなくて、ファンの前でどうやって笑えばいい……?
ふと、通り沿いにあるジュエリーショップが目に留まった。若い男女が店から出てくる。
幸せそうに微笑む彼女の手には、店のロゴが印字された小さな紙バッグが持たれていた。
何となくショーウィンドウを覗きこむ。
一番人目につきやすいウィンドウには、ダイヤモンドが輝くエンゲージリングが飾られていた。その隣には大きさの違う似通ったデザインのリングが並んでいる。たぶん結婚指輪だろう。
……眞白の指、細かったな。
ウィンドウに自分の手をかざしてみる。
無意識に視線が向いていたのは、左手の薬指だった。
『―いつか好きな人ができて結婚したとしても、俺の中では眞白が誰よりも一番大切な存在や』
『―中途半端な気持ちなら、もう眞白に近づかんといて』
悠貴の台詞が耳の奥で響く。
―中途半端な気持ちなんかじゃない。
こんなに誰かを好きになる事は、きっともう二度とないから。
ガラス戸の取っ手に手を掛ける。
店の中へ足を踏み入れた。
あちこちで瞬くイルミネーションの光が、やたらと目に眩しかった。
クリスマスムードに浮かれる繁華街の通りを一人、ぼんやりと歩く。
昨日、悠貴に言われた事がずっと頭の中を巡っている。気持ちの整理がつかなくて、仕事終わりに一人歩いて帰る途中だった。
週末の夜だからか、平日にも関わらず人通りは多い。今から食事にでも行くのか近い距離で歩く男女の姿も多かった。手を繋いで歩く学生のカップルも目につく。
正直、羨ましかった。
幼い頃からずっと芸能界で生きてきて、恋愛は自分にとって縁遠いものだと思っていた。
恋人がいた事が無いわけじゃない。でも長く続いた試しが無かった。仕事が忙しく、なかなか会えないでいるうちに相手の気持ちが冷めてしまう。アイドルとして活動を始めてからは、ますますそういう事からは遠ざかっていった。
でももしかしたら、心のどこかでブレーキを掛けていただけかもしれない。
碧生の言っていた事もよく分かる。
アイドルはファンに夢を見せる存在だ。
特定の恋人の存在は、その夢を壊してしまう。
応援してくれるファンに対して誠実であろうとする為には、本当の自分を押し殺すしかない。
"―応援してくれるファンに、嘘つくようなことしたらあかんと思う"
……そうだね、眞白。分かってる。
だけど、君を想う気持ちに嘘をついてまで俺がアイドルを続ける意味って何なんだろう。
たった一人の好きな子の事すら笑顔にしてあげられなくて、ファンの前でどうやって笑えばいい……?
ふと、通り沿いにあるジュエリーショップが目に留まった。若い男女が店から出てくる。
幸せそうに微笑む彼女の手には、店のロゴが印字された小さな紙バッグが持たれていた。
何となくショーウィンドウを覗きこむ。
一番人目につきやすいウィンドウには、ダイヤモンドが輝くエンゲージリングが飾られていた。その隣には大きさの違う似通ったデザインのリングが並んでいる。たぶん結婚指輪だろう。
……眞白の指、細かったな。
ウィンドウに自分の手をかざしてみる。
無意識に視線が向いていたのは、左手の薬指だった。
『―いつか好きな人ができて結婚したとしても、俺の中では眞白が誰よりも一番大切な存在や』
『―中途半端な気持ちなら、もう眞白に近づかんといて』
悠貴の台詞が耳の奥で響く。
―中途半端な気持ちなんかじゃない。
こんなに誰かを好きになる事は、きっともう二度とないから。
ガラス戸の取っ手に手を掛ける。
店の中へ足を踏み入れた。
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