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第十一話 クリスマスライブ
scene50 両想い
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―大知―
重たいサンタクロースの頭部を地面に下ろした。汗で張り付いた前髪を払う。
さっきまで俺を悠貴だと思い込んで話していた眞白は、顔をこわばらせたまま目の前で立ち竦んでいた。
使っていたスケッチブックとペンもサンタの頭のそばに置き、眞白の手に握りしめられたままのスマホを眞白の手ごと持ち上げ、指紋認証で画面を開かせた。いつもの音声アプリを起動し、口元に近づける。
「最初からちゃんとそう言って欲しかった」
思わず語気が強まる。
「何でハルには本音言うの。何でそんなに俺には遠慮するの?」
「……っ」
「眞白」
眞白の両手を取って握る。
「俺は無理なんかしてないよ。俺が会いたくて眞白に会いに来てるの。そばにいたいからいるだけだし、時間がかかっても眞白と話したいから話してるだけだから。何にも無理なんかしてない。だから、眞白が分かってくれるまで何度でも言うよ」
握り返してこない細い手を、離さないようにしっかり掴んだ。
「俺は、眞白が好きだ。聞こえない事とか、俺がアイドルだからとか、そういうの一回忘れよ。俺をちゃんと一人の男として見て。正直な眞白の気持ちを教えて」
俺が言った内容を確認した眞白の目が、赤くなる。
「……っ何も分かってへんやん、大知くんは!」
誰もいない夜の空間へ、眞白の叫びが響く。
「俺がどれだけファンの子に嫉妬しとるか知っとった?どんな思いで大知くんのこと振ったかほんまに分かっとる?」
「眞白……」
「今日だって、本当はステージ見たかった!かっこいい大知くんのこと見たかった!でも……っ、嫌やねん……っ!」
ぼろぼろと、白い頬へ大粒の涙が溢れ落ちる。
「会場入ったらファンの子めっちゃおるもん……大知くんの事見て笑って、楽しんどる姿みたら腹立つもん、嫉妬するもん……っ!同じように応援なんか出来ひん……っ」
しゃくり上げながら、でも、と続ける。
「そうやって、たくさんの人に応援されて、アイドルやってる、かっこいい大知くんが、……好きやから……っ」
「眞白……」
「……っ、ほんまに分かってないねん……俺がどれだけ、大知くんのこと、諦めなきゃって、思って……思っても、どうしようもなくて、好きで、仕方ないか……、っ」
堪らずに抱き寄せた。
あまり強く抱き締めたら折れそうな細い身体を、しっかり腕の中に収める。
「もっかい言って」
眞白と目を合わせ、もう一回、と手話をつける。
「すき……」
溢れた涙で濡れた、赤い唇が震える。
「大知くんが、好き」
「やっと言った……」
眞白の手を握る。
「それが一番聞きたかった」
眞白の唇を優しく塞ぐ。
緊張で強張った身体をそっとさすると、怖々と俺の背中に手が回されてきたので、もう一度強く抱き締めた。
このまま時間が止まってしまえばいいのにと思ったけれど、遠くから人のざわめきが聞こえてきた。見ると、会場の出口からファンが出てきている。
「わ、やば」
慌てて地面に置きっぱなしにしていたサンタの頭とスケッチブックを拾う。
「行かなきゃ……」
サンタの頭を抱えてから、眞白の方を見る。
眞白もファンが出てくる様子に気づいたらしく、出口の方を見ていた。
「眞白……あ、そうだ」
もう一回サンタの頭を地面に置き、また後でね、とスケッチブックに書いていると、そっと肩を叩かれた。
顔を上げると、頬に涙の跡が残ったままの眞白と目が合った。自分がしていた白いマフラーを外すと、俺の首に巻いて結んでくれる。
いつかそうしてくれたように口元を隠して巻かれたマフラーからは、眞白の匂いがした。
おっけー、と指で丸を作って微笑んでくれる。
「早く仕事に戻って」
はい、とサンタの頭を拾って渡してくれる。
「ちゃんとアイドルの大知くんに戻らなあかんで」
「……?」
気丈な物言いに不安になり、何か伝えなければとマフラーを口から外した。
ましろ、と名前を呼ぼうと開いた唇を素早く塞がれる。
すぐに離れた眞白の顔が、夜の暗がりでも分かるくらい赤くなった。
「……大丈夫やから」
ずれたマフラーを、またちゃんと上げてくれる。
「大知くんの気持ち、ちゃんと分かったから」
早く行って、と背中を押される。見れば、会場から出てくる人の数はどんどん多くなっていた。見つかる前に戻らないとまずい。
行こう、と踏み出しかけた足が止まる。
眞白の方を振り返った。
ツリーの前で佇む眞白に向かって伝える。
「(好きだよ)」
眞白は泣き笑いのような表情で、大きく手を振ってくれた。
重たいサンタクロースの頭部を地面に下ろした。汗で張り付いた前髪を払う。
さっきまで俺を悠貴だと思い込んで話していた眞白は、顔をこわばらせたまま目の前で立ち竦んでいた。
使っていたスケッチブックとペンもサンタの頭のそばに置き、眞白の手に握りしめられたままのスマホを眞白の手ごと持ち上げ、指紋認証で画面を開かせた。いつもの音声アプリを起動し、口元に近づける。
「最初からちゃんとそう言って欲しかった」
思わず語気が強まる。
「何でハルには本音言うの。何でそんなに俺には遠慮するの?」
「……っ」
「眞白」
眞白の両手を取って握る。
「俺は無理なんかしてないよ。俺が会いたくて眞白に会いに来てるの。そばにいたいからいるだけだし、時間がかかっても眞白と話したいから話してるだけだから。何にも無理なんかしてない。だから、眞白が分かってくれるまで何度でも言うよ」
握り返してこない細い手を、離さないようにしっかり掴んだ。
「俺は、眞白が好きだ。聞こえない事とか、俺がアイドルだからとか、そういうの一回忘れよ。俺をちゃんと一人の男として見て。正直な眞白の気持ちを教えて」
俺が言った内容を確認した眞白の目が、赤くなる。
「……っ何も分かってへんやん、大知くんは!」
誰もいない夜の空間へ、眞白の叫びが響く。
「俺がどれだけファンの子に嫉妬しとるか知っとった?どんな思いで大知くんのこと振ったかほんまに分かっとる?」
「眞白……」
「今日だって、本当はステージ見たかった!かっこいい大知くんのこと見たかった!でも……っ、嫌やねん……っ!」
ぼろぼろと、白い頬へ大粒の涙が溢れ落ちる。
「会場入ったらファンの子めっちゃおるもん……大知くんの事見て笑って、楽しんどる姿みたら腹立つもん、嫉妬するもん……っ!同じように応援なんか出来ひん……っ」
しゃくり上げながら、でも、と続ける。
「そうやって、たくさんの人に応援されて、アイドルやってる、かっこいい大知くんが、……好きやから……っ」
「眞白……」
「……っ、ほんまに分かってないねん……俺がどれだけ、大知くんのこと、諦めなきゃって、思って……思っても、どうしようもなくて、好きで、仕方ないか……、っ」
堪らずに抱き寄せた。
あまり強く抱き締めたら折れそうな細い身体を、しっかり腕の中に収める。
「もっかい言って」
眞白と目を合わせ、もう一回、と手話をつける。
「すき……」
溢れた涙で濡れた、赤い唇が震える。
「大知くんが、好き」
「やっと言った……」
眞白の手を握る。
「それが一番聞きたかった」
眞白の唇を優しく塞ぐ。
緊張で強張った身体をそっとさすると、怖々と俺の背中に手が回されてきたので、もう一度強く抱き締めた。
このまま時間が止まってしまえばいいのにと思ったけれど、遠くから人のざわめきが聞こえてきた。見ると、会場の出口からファンが出てきている。
「わ、やば」
慌てて地面に置きっぱなしにしていたサンタの頭とスケッチブックを拾う。
「行かなきゃ……」
サンタの頭を抱えてから、眞白の方を見る。
眞白もファンが出てくる様子に気づいたらしく、出口の方を見ていた。
「眞白……あ、そうだ」
もう一回サンタの頭を地面に置き、また後でね、とスケッチブックに書いていると、そっと肩を叩かれた。
顔を上げると、頬に涙の跡が残ったままの眞白と目が合った。自分がしていた白いマフラーを外すと、俺の首に巻いて結んでくれる。
いつかそうしてくれたように口元を隠して巻かれたマフラーからは、眞白の匂いがした。
おっけー、と指で丸を作って微笑んでくれる。
「早く仕事に戻って」
はい、とサンタの頭を拾って渡してくれる。
「ちゃんとアイドルの大知くんに戻らなあかんで」
「……?」
気丈な物言いに不安になり、何か伝えなければとマフラーを口から外した。
ましろ、と名前を呼ぼうと開いた唇を素早く塞がれる。
すぐに離れた眞白の顔が、夜の暗がりでも分かるくらい赤くなった。
「……大丈夫やから」
ずれたマフラーを、またちゃんと上げてくれる。
「大知くんの気持ち、ちゃんと分かったから」
早く行って、と背中を押される。見れば、会場から出てくる人の数はどんどん多くなっていた。見つかる前に戻らないとまずい。
行こう、と踏み出しかけた足が止まる。
眞白の方を振り返った。
ツリーの前で佇む眞白に向かって伝える。
「(好きだよ)」
眞白は泣き笑いのような表情で、大きく手を振ってくれた。
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