4 / 16
序章 魔窟列島の夜明け
異星から来た学者
しおりを挟む
「あ、おじいさま。こんな所に居たの?」
「散歩のついでですよ」
テイクアウトできるカフェが並ぶ通りを歩いていたのは、雪の様に白い髪のエルダールだった。
「セレーニアこそ、今日は出勤ではなかったのですか?」
「お昼ご飯の買い出しよ。この近くにライスバーガーのお店が出来たって聞いたから、テイクアウトしてきたの」
「そうでしたか」
「それじゃあ、お腹を空かせた人達が待ってるから」
「お気を付けて」
白い髪の穏やかな眼差しで見送るのは、艶やかな黒髪の娘。ほんの百五十年ほど前までは、こんな生活を送っているとは考えもしなかったと思い返しながら、若者の多い賑やかな通りを再び歩きはじめる。
彼がこの場所、地球にやって来たのは、今からおよそ百五十年前の事。兎獣人の娘が突如として姿を消した事件を調べる内、彼もまた不思議な連絡通路に迷い込み、この星にやって来たのだ。
そんな今から百五十年前、地球の一角である日本列島では、御神木の根元や火山の中腹に、人間とは特徴の異なる人型の知的生命体、あるいは人間によく似た生命体が突如として現れる事件が多発していた。白い髪のエルダールもまたそうした事件に巻き込まれた一人であったが、彼は他の知的生命体と異なり学者であり、彼が地球に出現した事で奇妙な事件は解決に至った。
彼が地球に出現したその日、彼が元居た星のとある場所では土砂降りで、突然の雨から逃れるべく大木の下に駆け込んだところ、彼は連絡通路に迷い込んだ。視界が一瞬暗転したかと思うと、其処は先程の土砂降りとは打って変わった快晴で、見た事の無い植物や建築物の有る場所だったのだ。
そこは東京渋谷区の明治神宮の御神木の下、不審人物として守衛に確保され警察に引き渡された彼は、警察署の暦と、自分が持っていた手帖の暦の違いに興味を示し、そこでケプラー777星について知る事になった。そしてケプラー777星、彼がエザフォスと呼ぶ土地を含む惑星と地球に連絡通路が生じている事、連絡通路が生じるのは二つの惑星の衛星、地球における月とエザフォスにおけるセレーネーの位置が関係している事が導き出され、エザフォスの民が地球に迷い込んでいると結論が出された。
彼はその後も地球での調査に協力し、それぞれの星の入り口と出口は一致せず、彼が出現した明治神宮の御神木の下はケプラー777星からの出口であるが、地球からの入り口ではなく、反対に失踪者を出した箱根山の中腹にある不自然なくぼみは地球からケプラー777星への入り口である事が判明した。
さらにその後、ケプラー777星への帰還を望んだ出現者の協力によって出入り口の関係性が複数判明するとともに、何故、日本にだけ奇妙な連絡通路が存在するのかについても検討が行われた。その結果、いずれの星でも連絡通路の出現場所が火山付近である事から、日本列島は近くの活動が活発である事が影響しているとの仮説が立てられ、ご神木のような古い樹木の根元に関しては、深くまで木の根が到達している事による影響が検討され、今に至る。
ただ、出現した異星人が人間の言葉を、日本語を理解出来る状態になっているという不可解な現象については科学的な仮説が立てられないままだった。とはいえ、日本の地球人は言語が通じるなら何とかなるだろうと大雑把な思考に落ち着き、星間渡航者の管理に乗り出した。そして彼はケプラー777星、エザフォスの事情に精通した有識者として星間渡航者の管理に助言を行う立場となり、それが今の彼の立場につながっている。
人間の世代にして、既に三世代以上を地球で過ごしたエルダールにとって、東京の街並みはめまぐるしく移り変わる不思議な空間だった。だが、彼はそれを楽しんでいる。最近回転されたばかりの、高層ビルの屋上で育てた野菜を使っている事が売りのサンドイッチ屋の行列の中ほどに立っているくらいには。
――そういえば、明日は新しい捜査官が着任するんでしたね。
「散歩のついでですよ」
テイクアウトできるカフェが並ぶ通りを歩いていたのは、雪の様に白い髪のエルダールだった。
「セレーニアこそ、今日は出勤ではなかったのですか?」
「お昼ご飯の買い出しよ。この近くにライスバーガーのお店が出来たって聞いたから、テイクアウトしてきたの」
「そうでしたか」
「それじゃあ、お腹を空かせた人達が待ってるから」
「お気を付けて」
白い髪の穏やかな眼差しで見送るのは、艶やかな黒髪の娘。ほんの百五十年ほど前までは、こんな生活を送っているとは考えもしなかったと思い返しながら、若者の多い賑やかな通りを再び歩きはじめる。
彼がこの場所、地球にやって来たのは、今からおよそ百五十年前の事。兎獣人の娘が突如として姿を消した事件を調べる内、彼もまた不思議な連絡通路に迷い込み、この星にやって来たのだ。
そんな今から百五十年前、地球の一角である日本列島では、御神木の根元や火山の中腹に、人間とは特徴の異なる人型の知的生命体、あるいは人間によく似た生命体が突如として現れる事件が多発していた。白い髪のエルダールもまたそうした事件に巻き込まれた一人であったが、彼は他の知的生命体と異なり学者であり、彼が地球に出現した事で奇妙な事件は解決に至った。
彼が地球に出現したその日、彼が元居た星のとある場所では土砂降りで、突然の雨から逃れるべく大木の下に駆け込んだところ、彼は連絡通路に迷い込んだ。視界が一瞬暗転したかと思うと、其処は先程の土砂降りとは打って変わった快晴で、見た事の無い植物や建築物の有る場所だったのだ。
そこは東京渋谷区の明治神宮の御神木の下、不審人物として守衛に確保され警察に引き渡された彼は、警察署の暦と、自分が持っていた手帖の暦の違いに興味を示し、そこでケプラー777星について知る事になった。そしてケプラー777星、彼がエザフォスと呼ぶ土地を含む惑星と地球に連絡通路が生じている事、連絡通路が生じるのは二つの惑星の衛星、地球における月とエザフォスにおけるセレーネーの位置が関係している事が導き出され、エザフォスの民が地球に迷い込んでいると結論が出された。
彼はその後も地球での調査に協力し、それぞれの星の入り口と出口は一致せず、彼が出現した明治神宮の御神木の下はケプラー777星からの出口であるが、地球からの入り口ではなく、反対に失踪者を出した箱根山の中腹にある不自然なくぼみは地球からケプラー777星への入り口である事が判明した。
さらにその後、ケプラー777星への帰還を望んだ出現者の協力によって出入り口の関係性が複数判明するとともに、何故、日本にだけ奇妙な連絡通路が存在するのかについても検討が行われた。その結果、いずれの星でも連絡通路の出現場所が火山付近である事から、日本列島は近くの活動が活発である事が影響しているとの仮説が立てられ、ご神木のような古い樹木の根元に関しては、深くまで木の根が到達している事による影響が検討され、今に至る。
ただ、出現した異星人が人間の言葉を、日本語を理解出来る状態になっているという不可解な現象については科学的な仮説が立てられないままだった。とはいえ、日本の地球人は言語が通じるなら何とかなるだろうと大雑把な思考に落ち着き、星間渡航者の管理に乗り出した。そして彼はケプラー777星、エザフォスの事情に精通した有識者として星間渡航者の管理に助言を行う立場となり、それが今の彼の立場につながっている。
人間の世代にして、既に三世代以上を地球で過ごしたエルダールにとって、東京の街並みはめまぐるしく移り変わる不思議な空間だった。だが、彼はそれを楽しんでいる。最近回転されたばかりの、高層ビルの屋上で育てた野菜を使っている事が売りのサンドイッチ屋の行列の中ほどに立っているくらいには。
――そういえば、明日は新しい捜査官が着任するんでしたね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる