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第一章 数の暴力は雑魚キャラを最凶にする
初仕事は突然やってくる
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執務室の扉が無作法に開かれ、瀬戸は慌ただしげな様子で鍵箱に向かう。
「スライムの発生源を調べに行くよ」
「場所は?」
瀬戸を目で追いながら望月は問う。
「スライムで配水管が詰まったっていう郵便局近くの、発見報告が無い住宅街。郵便局とその近くに在るコンビニに車を停めて、そのまま聞き込みに行く。僕は郵便局で風見さんと合流するから、君達はコンビニの方に。着いたら連絡して」
「分かりました。ところで、醍醐さんは今居ないのだけど」
「そんなに人員は要らないよ。ただ、車に一人留守番が要るから、此処に居る人だけは全員来て」
「分かりました」
瀬戸は公用車の鍵を手に、急ぎ足で駐車場へと向かう。
「私達も行きましょう」
望月は机の上の地図を軽く畳む。
「獲夢ちゃん、係長に調査に行く旨を連絡して。車は私が出すわ。天野さんも付いて来て」
「あ、はい!」
突然の出動に困惑しながら、瀬戸の後を追う望月と草薙に従い、天野は執務室を飛び出した。
「あの、調査って、何の準備もしてないですけど、何するんですか?」
エレベーターを待ちながら、天野は望月に尋ねた。
「聞き取り調査をするだけよ。おそらくスライムもどきの発生源に目星が付いたのよ」
「はぁ……」
「聞き取り調査の経験は?」
「それなりには」
「そう。なら心配ないわね」
一同はエレベーターに乗り、地下の駐車場に向かう。
「獲夢ちゃんは助手席にお願い。それと留守番も」
「えー」
望月から地図を渡される草薙は不服げに眉を顰める。
「天野さんには東京の人に慣れて貰わないといけないのよ」
「はーい……」
一対の猫耳を持つ草薙は、その外見から自分が除け者にされた様な感情が拭い切れず、表情を曇らせたまま車へと向かう。
「天野さんもいずれは運転する事になるし、多少道は覚えるつもりで居て下さいね」
地価の駐車場を出た車両は東京都心を抜け、八王子方面に続く道路を進んだ。
「そろそろ着くかしら」
「うん。この通りを左に曲がったら、コンビニだよ」
草薙の案内に従い、望月は指定されたコンビニエンスストアの駐車場に車を入れた。
「あら、瀬戸さんと風見さん、待っていてくれたみたいね」
車を止め、望月は外に出る。
「待って居て下さったの?」
「サンプルを預けなきゃならないからね。留守番は?」
「草薙さんです」
瀬戸は風見を見遣り、風見は望月にトランクを手渡した。
「草薙さんには、開封したら昼飯抜きだと言っておいてくれ、封印している分には安全だが、開けた時の保証はないんでな」
「分かりました」
「それと、郵便局の人には話を聞いてるから、望月さん達は住宅街の方の聞き取りに行ってくれ」
「何を聞けば?」
「最近、大量の水を流している家が有るかどうか、それと、最近まで空き家だった住宅が有るかどうかだ」
「どういう事かしら」
「上空からこの一帯を見てみたんだが、どうも、何かが焦げたような異臭がしている。煙は見えないんで家事ではなさそうだが、地上に降りるとひっきりなしに水が流れていた。勿論、住宅地じゃあ当然かもしれないが、上水も下水も同じ様にずっとかなりの量が流れているようで気になったんだ。それで少し考えてみたところ、金属のゼリー寄せの話を思い出してな」
「砂金回収の錬金術ですね」
「あぁ。前に武寿賀さんから聞いた事が有ってな。それと、大量の水で思いついたのが、前に平賀先生が研究室でやってた薬品の希釈。液体と逆の性質の薬剤を混ぜて中和したら流せる物もあると言っていた。それに加えて焦げ臭いのは、灰を作ってるんじゃないのかと」
「どういう事かしら」
「灰汁で洗濯をするって話を知ってるか?」
「えぇ、古い時代の洗濯択方法ですよね」
「その時点じゃあ思い付きだったが、平賀先生に尋ねてみたら、海藻からアルカリが作れなくは無いと言っていた。そして、例のスライムの主成分は海藻の多糖類の可能性……平賀先生曰く、金属の水溶液を作って金属を回収しているのかもしれない、と」
「でも、金属のゼリー寄せって水の中でも出来るの?」
「いや、水溶液を使う時は微生物を使うんだが、おそらくスライムはその微生物を操るために使うプラスチックの流出による副産物じゃないかと」
「そうね……それじゃあ、早速聞き取りに行きましょう」
「あぁ、頼んだよ」
風見と瀬戸は顔を見合わせ、瀬戸は短く挨拶をして風見に付き従った。
望月は窓を開けてそれまでのやり取りを聞いていた草薙にトランクを手渡す。
「くれぐれもよろしくね。それと天野さん……さっきの話、分かったかしら」
「何となくは……金属のゼリー寄せの話も、多少お聞きしていたので」
「じゃあ話は早いわね、行きましょう」
望月に促され、天野はシートベルトを外した。
「それじゃあ行ってきます、草薙さん、後の事、お願いします!」
「スライムの発生源を調べに行くよ」
「場所は?」
瀬戸を目で追いながら望月は問う。
「スライムで配水管が詰まったっていう郵便局近くの、発見報告が無い住宅街。郵便局とその近くに在るコンビニに車を停めて、そのまま聞き込みに行く。僕は郵便局で風見さんと合流するから、君達はコンビニの方に。着いたら連絡して」
「分かりました。ところで、醍醐さんは今居ないのだけど」
「そんなに人員は要らないよ。ただ、車に一人留守番が要るから、此処に居る人だけは全員来て」
「分かりました」
瀬戸は公用車の鍵を手に、急ぎ足で駐車場へと向かう。
「私達も行きましょう」
望月は机の上の地図を軽く畳む。
「獲夢ちゃん、係長に調査に行く旨を連絡して。車は私が出すわ。天野さんも付いて来て」
「あ、はい!」
突然の出動に困惑しながら、瀬戸の後を追う望月と草薙に従い、天野は執務室を飛び出した。
「あの、調査って、何の準備もしてないですけど、何するんですか?」
エレベーターを待ちながら、天野は望月に尋ねた。
「聞き取り調査をするだけよ。おそらくスライムもどきの発生源に目星が付いたのよ」
「はぁ……」
「聞き取り調査の経験は?」
「それなりには」
「そう。なら心配ないわね」
一同はエレベーターに乗り、地下の駐車場に向かう。
「獲夢ちゃんは助手席にお願い。それと留守番も」
「えー」
望月から地図を渡される草薙は不服げに眉を顰める。
「天野さんには東京の人に慣れて貰わないといけないのよ」
「はーい……」
一対の猫耳を持つ草薙は、その外見から自分が除け者にされた様な感情が拭い切れず、表情を曇らせたまま車へと向かう。
「天野さんもいずれは運転する事になるし、多少道は覚えるつもりで居て下さいね」
地価の駐車場を出た車両は東京都心を抜け、八王子方面に続く道路を進んだ。
「そろそろ着くかしら」
「うん。この通りを左に曲がったら、コンビニだよ」
草薙の案内に従い、望月は指定されたコンビニエンスストアの駐車場に車を入れた。
「あら、瀬戸さんと風見さん、待っていてくれたみたいね」
車を止め、望月は外に出る。
「待って居て下さったの?」
「サンプルを預けなきゃならないからね。留守番は?」
「草薙さんです」
瀬戸は風見を見遣り、風見は望月にトランクを手渡した。
「草薙さんには、開封したら昼飯抜きだと言っておいてくれ、封印している分には安全だが、開けた時の保証はないんでな」
「分かりました」
「それと、郵便局の人には話を聞いてるから、望月さん達は住宅街の方の聞き取りに行ってくれ」
「何を聞けば?」
「最近、大量の水を流している家が有るかどうか、それと、最近まで空き家だった住宅が有るかどうかだ」
「どういう事かしら」
「上空からこの一帯を見てみたんだが、どうも、何かが焦げたような異臭がしている。煙は見えないんで家事ではなさそうだが、地上に降りるとひっきりなしに水が流れていた。勿論、住宅地じゃあ当然かもしれないが、上水も下水も同じ様にずっとかなりの量が流れているようで気になったんだ。それで少し考えてみたところ、金属のゼリー寄せの話を思い出してな」
「砂金回収の錬金術ですね」
「あぁ。前に武寿賀さんから聞いた事が有ってな。それと、大量の水で思いついたのが、前に平賀先生が研究室でやってた薬品の希釈。液体と逆の性質の薬剤を混ぜて中和したら流せる物もあると言っていた。それに加えて焦げ臭いのは、灰を作ってるんじゃないのかと」
「どういう事かしら」
「灰汁で洗濯をするって話を知ってるか?」
「えぇ、古い時代の洗濯択方法ですよね」
「その時点じゃあ思い付きだったが、平賀先生に尋ねてみたら、海藻からアルカリが作れなくは無いと言っていた。そして、例のスライムの主成分は海藻の多糖類の可能性……平賀先生曰く、金属の水溶液を作って金属を回収しているのかもしれない、と」
「でも、金属のゼリー寄せって水の中でも出来るの?」
「いや、水溶液を使う時は微生物を使うんだが、おそらくスライムはその微生物を操るために使うプラスチックの流出による副産物じゃないかと」
「そうね……それじゃあ、早速聞き取りに行きましょう」
「あぁ、頼んだよ」
風見と瀬戸は顔を見合わせ、瀬戸は短く挨拶をして風見に付き従った。
望月は窓を開けてそれまでのやり取りを聞いていた草薙にトランクを手渡す。
「くれぐれもよろしくね。それと天野さん……さっきの話、分かったかしら」
「何となくは……金属のゼリー寄せの話も、多少お聞きしていたので」
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