幸せな人生を目指して

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第1章 新しい世界

3 誕生日パーティーと…(6歳)

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姉様から魔法を教わり始めて早い事もう一年。
一年ってあっという間だなとつくづく思う今日この頃。魔法の腕は一年前と比べたらかなり上達しているはず。

私が教えてもらったのは自分を守るための防衛魔法、それから相手を気絶させる程度の攻撃魔法。
自分の身を自分で守るのも大切な事。貴族の令嬢は護衛と言う名のそれぞれ従者がついているけど、私にはまだいないし。

あ、それと暗い所等で便利な、光を灯す点火の魔法も習得済み。
書庫に引きこもっている時間が長かった私には本当に便利で、いつの間にか暗くなっている、なんて事が良くあったから今の所一番役立っているかも。
若干将来、目悪くならないかなってそんな不安もあったりするけどね。


そんな日々を過ごしていた私も今日で六歳。本日はその誕生日パーティーが大広間で開催されている。
去年まではこんな大がかりな事はしなかったのに、今年から大げさのような豪華なパーティーをする事になったんだよね。

なんでも、貴族と言うものは自分の顔を知ってもらってなんぼ。交流も人脈作りも大事で、それを小さい頃から接客的に行っていくのが普通だとか。はぁ、貴族の子どもも大変だよね。なんて、自分の事棚に上げたくなるよ。
任脈作りに交流…まだ年端もいかない子どもにさせるって、世界が違えば常識も違うんだな。
前の人生では考えられない事だったからな。

まぁそれはとりあえず置いておいて。
今回のパーティーには家族は勿論、悲しくも友達のいない私に友達が出来るように図らった父様が、交流のある貴族の方達を呼んで下さったみたい。

その気持ちは嬉しいけどね、見るからに令嬢しかいないのはどうしてなのかな、父様?
後でこっそり母様に聞いておこうっと。

それはともかくとして……、やっぱり我が父は流石と言うか、偉大と言うか。父様と交流がある人達はもうレベルが違うって私でも分かるよ。

爵位も上位の家柄ばかりで、この日の為に私もそれなりに着飾っているけど、それ以上に目立ってるよ?周りの人達。
そんな人達の輪に自ら突入して行かなければと考えると……。もう行きたくない。帰りたい!
…まぁここ自分の家だけど、そんな気持ちって事だね。

そんなこんなであたふたしていると、何やら広間の方で令嬢達が歓声を上げている。それに良く見ると見惚れているようにも見えた。

誰か来たのかな?お出迎えに行かないと。
そう思い近づいて行ったら、貴族の子息と言うには華やかな衣装で、只者ではない雰囲気を醸し出した少年がそこにいた。年は私と同じくらいみたいだね。
それにしても、金髪に蒼眼、驚く程整ったその顔は芸術ですか?と突っ込みを入れたくなるような容姿。
白いタキシードに身を纏ったその姿はまるで天使のよう。

令嬢達の目を釘付けにするのも納得。私ですらこんなに可愛い生き物存在したの?って思う程だからね。
それ程目立っているのに当の本人は全く気にしてないようだけど。

あっ、挨拶に行かないと。
嫌々と思いながらも今日は何人もの人達に挨拶をして回っていた。そして終わったと思ったんだけど……、凄い人来ちゃった……。

大丈夫っ!仕事、仕事と思えば平気っ!

「そこの娘」

えっ?

「は、はいっ」

話しかけるべき立場の私より先に少年に声を掛けられて驚いた。

「私はアルフレッド・オルデシアだ。貴殿が今宵の主役か?」

少年は花が綻ぶような笑みを浮かべ、それに令嬢達が羨ましいそうにこちらを見ている。
その中には嫉妬を含んだものもある。でも気にしていられない!私は今それ所じゃないのっ!

と言うか、今この少年オルデシアって名乗っていなかった?
えぇっ!そんなまさか…。だってオルデシアって……。えっ、本当にっ!?

「あ、あの、貴方はもしかして……」

「ん?王家のものだが。それがどうかしたか?」

えーっ!やっぱり本当に本当だったっ!この人オルデシア王家の王子様だっ!

「し、失礼いたしました王子。わ、私はシェフィールド侯爵家の次女、エルシアと申します…」

私は慌てて名乗り頭を垂れた。

「こ、今宵のパーティーは父が私の誕生を祝い開催いたしました」

遅かれながら先程の質問に答える。気丈に振舞うように心掛けたけど、まさかの人物に心の動揺は収まらない。

「顔を上げてくれ。そんな畏まらなくて良い」

困惑状態の私。けど王子の言葉とあっては従わない訳にはいかず、ゆっくりと顔を上げた。

その時――

「殿下っ!」

「ディランか」

タイミング良く乱入してくる声。それはパーティーの主催者でもある父様だった。
その父様は殿下を見つけると駆け寄ってくる。

「お越し頂けて何よりです、殿下。心より歓迎致します」

父様は私の隣に立つとそう言い一礼する。

「あぁ、貴殿からの誘いだ。断る理由もない。それに父上の方が貴殿の娘に会いたがっていたぞ」

「それはそれは。では後日娘を連れて拝謁を申し入れたいと思います」

「そうか。私からも伝えておこう。きっと父上も喜ぶだろう」

私をよそに二人の会話は進んで行く。

父様!今、拝謁って言いましたよね?拝謁って偉い人、国王陛下に会うって事だよね…。何勝手に決めてるんですか!
そう言いたいけど口に出せない雰囲気の状況。父様の言葉に王子も乗り気になっちゃってるし…。

「では今宵のパーティー、娘エルシアと楽しんで行って下さいね」

「ふむ。そうさせてもらうぞ」

そして気がつけば終わっていた二人の会話。
父様は去り際に私の頭を人撫ですると、言葉を交わす事なく奥へ行ってしまった。
私はその背中を何とも言えない、複雑な気持ちで見送ったのだった。


父様が去ると今度こそは、と王子は私に話しかける。

「さて、話は戻るが、私も皆と一緒にエルシアの誕生を祝わせもらっても良いだろうか?」

そう言って手をこちらに差し出す王子に、フリーズした脳を一生懸命働かせる私。
えっと、これは握手?握り返して良いの?

そして悩んだ末――

「はいっ、ありがとうございます」

手を取り軽く握り返した。もし失礼とかだったら後で父様に謝ろう……。

お互いどちらともなく手を離し、改めて向かい合った所で一番の疑問を尋ねてみた。

「あの、お聞きしたいのですが、王子が侯爵邸にお越しくださったのは、その……」

「知らないのか?貴殿の父と私の父は友人の間柄なんだ。それで貴殿の父にパーティーの招待状を貰い、こうして私が足を運んだと言う訳だ。そうでなくとも、父の友人の娘には興味があったからな。どんな娘なのかと。まさか私と同じ年の少女だったとは知らなかったが」

……父様と国王陛下がご友人!しかも話しぶりからして結構仲が良さそうだよ。……全然知らなかった。と言う初耳なんですけど。
それに父様、王城に手紙を送ったの?そんな大事な事なんで言ってくれないの!あっ、言わなかったのわざとですね、父様っ!

と心の中で父様に抗議しながら、見た目にはその葛藤は出さずに一生懸命笑顔を意識。

「そうなのですね。初めて聞いたので驚きました」

「そうか。話さなかったのは何か理由でもあったのか……」

そう言って考えこんじゃう王子。深く考えないでください王子。どうせこう言う時、父様の考えている事は碌でもないものだから。
声に出してそう言いたかったけどそれは心の中だけで留める。

「まぁそれは良いか。それよりもだ。エルシア、私の事は王子ではなく名前で呼んでくれないか?年も同じだろう?」

はい!?とんでもないお願い来ちゃった。いくら王子の頼みと言え、そのお願いは流石に聞けませんよ。
同じ年と言っても身分が違うからね。
そんな事したら、下手したら私死罪?になっちゃうよ……。笑えないよっ!

王子が私をどう呼ぼうと何も思わないけど、私が王子を名前で呼ぶなんてとてもじゃないけど…恐れ多い事だよ。
それをさらっと言ってしまう王子も王子だけど……。

と言う事で、

「では……殿下とお呼びしてもよろしいでしょうか?名前でお呼びするのは恐れ多い事ですので。ですが私の事はお好きなように呼んでください」

殿下ってあまり変わってないけど、他に呼び方がないから仕方ないよね。見れば嬉しそうだし、良いよね。

「仕方ないな。ではエル、と呼んでも良いか?」

「はい」

答えたら益々嬉しそう。…ぐぬぬ…そこは可愛いな。

「それともう一つ良いか?」

「はい、何でしょう?」

何か言いた気な殿下に私は首を傾げる。

「…エル、私の、友人になってはくれないか」

殿下から言われたのは予想外の事だった。
友人?それって父様達みたいって事?嬉しいけど良いのかな?一国の王子ですよ?ってあれ…?何でこんなに冷静なんだろう私。

「……殿下が宜しいのでしたら」

はっ、つい返事を…。何言ってるんだ私は!恐れ多くも王子様と友人って…。

やってしまったと思いながら殿下を見たら当の本人は凄く嬉しそうで。それを見てしまったらもう何も言い返せなくなってしまう。

……っ!
そうして漸く気が付く。周りの令嬢達の鋭くて刺のように刺さる視線に…。


はぁ…。楽しいはずのパーティーで男性を目の前にした令嬢は怖いと、そんな事を身を持って知る事になるとは……。

そんな中、鈍感なのか(結構失礼)、殿下は私を引きずり食事や話に夢中で終始その視線には気が付かないのだった。

普通の友人がいて、他愛もない話をする。それが出来て本当に嬉しいんだろうね。
私も友達出来て嬉しいけど、周りからの視線が刺さる刺さる…。こんな調子でこの先、この世界で生きて行けるのかな……?幸せになるどころか、生きる事さえ大変になりそうで、先の未来を案じて泣きたくなったのだった。


そしてその日のパーティーは何事もなく?終わり、帰って行く人達をお見送りした。
その際はしっかり父様も一緒でね。

そしてパーティーを楽しんだ殿下も、私にまた会おうと言い残して侯爵邸を去って行った。

後で父様から良かったね、と言われたのに対し、少し怒りが込み上げてきたけど。

まぁ何はともあれ、この波乱を生んだ六歳のお祝いパーティーはこうして幕を閉じた。
大変は大変だったけど…、でも嬉しい事もあったからこれはこれで良しとしよう。

王家の王子、名前をアルフレッド・オルデシア。彼が私の唯一無二な、大切な友人になってくれたのだから。
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