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第5章 学院生活
5 危機一髪
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魔力はすぐに現象となって私達の目に映る。形作られたそれは、レヴィ君が勢いよく振り下ろした手と同時に光のような速さで目の前を一瞬照らした。人為的に作られた稲妻。それが天から落ちて後から激しい風を巻き起こし、遅れて凄まじい轟音を響かせた。
一瞬の出来事だったけど周りにいた生徒達は何事かと目を見開き、唖然としていた。
流石の威力に私も恐怖を覚えて、咄嗟にシールドを張り耐えたものの災害レベルの破壊力だよ。
上位と呼ばれる魔法は桁違いも良いところ。本当に恐ろしい魔法だなって改めて思い知らされるね。
とは思ったけど成功?した、って事で良いんだよね……?
辺りは静まり返り、当のレヴィ君さえ微動だにしないでその場に立ち尽くしている状態だけど。
「ねえ、彼様子が変じゃないかしら?」
沈黙を切り裂くように発せられる声は隣で同じように見ていたユキから。
ユキに言われるままに見ると明らかに様子がおかしい事に気付いた。こちらに背を向けているから表情が見えないけど、少し前かがみになっていて苦しんでいる様な体制をしている。
「レヴィ君っ!?」
私は思わず叫んだ。その声は彼に届いたはずだけどそれにも反応を示さない。
おかしいっ、どうして!?ライトニングボルトは成功していたはずなのに。
状況を整理できていないけど、とにかくレヴィ君の様子を見に行こう。
「エルっ!」
突っ走る私を制止する声が背中越しにかけられる。流石のユキも焦っているようだったけど、それに答えている余裕が私にもなくて、とにかく走りながら後ろを少し振り返るとユキに聞こえるように声をかけた。
「ユキお願いします!リーサさんにこの事を伝えて下さいっ、一刻も早く!」
それだけ言うとユキの返事も聞かない内に先を急いで走った。
彼の周りにはまだ消え去っていない魔力が渦巻き、来るものを拒むかのように強い風が吹き荒れていて近づくのさえ苦労した。
それに雷の魔法と言うだけあって、近づけば近づくほど体が痺れる。だから自分の周りにもう一度シールドを張って、余波を防ぎつつ彼の元へと急ぐ。
「レヴィ君っ!」
「……うっ」
辿り着くとそこには額に汗を浮かべて、さっきよりも苦しそうに蹲るレヴィ君の姿が……。
急いで私もその場に膝をついて呼びかけたけど、それに答えられる余裕が今の彼にはないみたいで、呻き声をあげるだけ。
胸を押さえているその様子を見て私はハッとある事に思い至る。
……これはもしかして、魔力の暴走……?
発動し終わった後、未だに魔力が身体から流れ続けている。彼の周りに漂う魔力が彼自身を蝕んでいるかのように。
どうしてなの?呪文も、魔力を放つタイミングも合っていたと思うのに。それに発動直後まで彼はちゃんと膨大な魔力を制御出来ていたのに、何処で暴走してしまったのか。
制御されていない魔力の余波は、このままだと周りの生徒達にまで被害を出してしまう。それにレヴィ君もずっと魔力が流れ続けたら大変な事になる。早く何とかしないとっ!
「レヴィ君っ!しっかりして下さい!私の声聞こえますか?」
何とかしないとと思う一心で必死に呼びかける。
「……はぁ……っう……、はぁ……はぁ」
やっぱり返事はない。それに呼吸が荒くなってきていて、私は冷静に、でも急いで頭を回す。
確か前にルカに教えてもらった事があるよね、魔力の暴走の止め方。
えっと……、えっと……。あっ!思い出したっ、あれだ!
必死に頭を回転させて何とかその方法を思い出した。
その方法は確か二つあった。
一つは暴走していても意識があるなら、本人次第で自ら暴走を止める事が出来る方法だった。
けど今のレヴィ君を見る限りそれは難しそう。ならば残りのもう一つの方法で止めるしかない。
私は覚悟を決めるとまだいる周りの生徒に叫んだ。
「皆さんここは危険です、この場から早く避難して下さいっ!」
声に弾かれたように、呆然としていた生徒達が我先にとその場を離れて行くのを確認すると私は大きく深呼吸をした。
焦りそうになる心を落ち着かせて今一度レヴィ君の様子を見る。まだあった意識も今は大分朦朧としているみたい。
意識が混濁している今の状況でこれから行う行為をしたら、次に起きたときは覚えていないかもしれないけど、私はその方が良いと思う。彼のためにもね……うん。
……よし!
「レヴィ君、ごめんっ」
聞こえていないだろうけど一応断りを入れておこう……。
行いやすいように彼をその場に寝かせると私は前かがみになり彼に顔を近づけた。そしてそっと彼の唇に自分の唇を重ねる。
恥ずかしいけど、これは治療!我慢よ、私!余計な考えを振り払うように目を閉じて集中する事に専念した。
今私が行っているのはもう一つの方法。魔力の量を同等か、それ以上持っている人が、暴走させてしまった人に代わって止める方法。
暴走と言うのは自分の身体に魔力が何らかの理由で収まらなくなり、身体の中でも制御が利かなくなってしまったものが好き勝手に暴れている状態の事。
だから溢れ出した魔力は無理だけど、中で暴れている魔力を吸収して正常な状態に戻せれば暴走は止まるって事。口で言うのは簡単だけど実際はそう簡単じゃない。
それに本来なら口に直接じゃなくてもその人に触れてさえいれば出来る方法なんだけど、そうすると吸収するのに時間がかかってしまう。特に今回は凄くまずい状態で、一刻を争う事態なのにただ触れただけでは到底間に合わない。だから最終手段、口からって形になった。
見た感じ、人工呼吸みたいだけど実際行っていることは、口を通してレヴィ君の魔力をただ私の身体に移しているだけ。
私が上手く吸収出来れば後はレヴィ君次第になるけど。
それにしてもレヴィ君の魔力って本当に強いな……。私以上なんじゃ……?
余裕そうにそんな事を思ったけど、本当は結構大変です……。
屈んで口づけしている体制で、それほどしない内にレヴィ君の身体の中で暴れていた魔力が安定して来た。それに気づいて私はゆっくりと唇を離して彼の様子を伺う。
ギリギリまで保っていた意識は今はない。でも苦しさは軽減されたようで、表情は幾分か和らいだように見える。
成功した、のかな……?
「エルっ!」
「エルシア様っ!」
ほっとしてその場で安堵していると名前を呼ばれて私はハッと振り返った。そこにいたのはリーサさんと、彼女を呼びに行ってくれたユキ、そしてこの場に居るはずのない人……。
「エルっ、良かった、無事みたいだね」
「……父様っ!?どうしてここに!」
何故か父様がいて、他の二人と一緒に急いでこちらに駆け寄って来る。
「学院に用があってね。来てみたら何やら騒ぎがあったと聞いて、途中で見かけた彼女達と一緒に駆けつけたんだ」
「そう、だったんですか」
父様を見たら凄く安心して強張っていた身体から力が抜けて行く。それを見て傍へ来るなり父様はそっと私を抱きしめてくれる。
父様は何も言わないけど、良く頑張ったって言われている気がして何だか嬉しかった。
でもすぐにレヴィ君の事を思い出して横たわっている彼を見たら、傍らに膝をついたリーサさんが治癒魔法を施してくれていた。
その効果はすぐに現れ、レヴィ君から規則正しい息遣いが聞こえてくる。
……良かった。
「父様」
「大丈夫、分かっているよ」
私の言い分を父様は全て分かっていると言う顔で、安心させるように私に微笑んだ。
一瞬の出来事だったけど周りにいた生徒達は何事かと目を見開き、唖然としていた。
流石の威力に私も恐怖を覚えて、咄嗟にシールドを張り耐えたものの災害レベルの破壊力だよ。
上位と呼ばれる魔法は桁違いも良いところ。本当に恐ろしい魔法だなって改めて思い知らされるね。
とは思ったけど成功?した、って事で良いんだよね……?
辺りは静まり返り、当のレヴィ君さえ微動だにしないでその場に立ち尽くしている状態だけど。
「ねえ、彼様子が変じゃないかしら?」
沈黙を切り裂くように発せられる声は隣で同じように見ていたユキから。
ユキに言われるままに見ると明らかに様子がおかしい事に気付いた。こちらに背を向けているから表情が見えないけど、少し前かがみになっていて苦しんでいる様な体制をしている。
「レヴィ君っ!?」
私は思わず叫んだ。その声は彼に届いたはずだけどそれにも反応を示さない。
おかしいっ、どうして!?ライトニングボルトは成功していたはずなのに。
状況を整理できていないけど、とにかくレヴィ君の様子を見に行こう。
「エルっ!」
突っ走る私を制止する声が背中越しにかけられる。流石のユキも焦っているようだったけど、それに答えている余裕が私にもなくて、とにかく走りながら後ろを少し振り返るとユキに聞こえるように声をかけた。
「ユキお願いします!リーサさんにこの事を伝えて下さいっ、一刻も早く!」
それだけ言うとユキの返事も聞かない内に先を急いで走った。
彼の周りにはまだ消え去っていない魔力が渦巻き、来るものを拒むかのように強い風が吹き荒れていて近づくのさえ苦労した。
それに雷の魔法と言うだけあって、近づけば近づくほど体が痺れる。だから自分の周りにもう一度シールドを張って、余波を防ぎつつ彼の元へと急ぐ。
「レヴィ君っ!」
「……うっ」
辿り着くとそこには額に汗を浮かべて、さっきよりも苦しそうに蹲るレヴィ君の姿が……。
急いで私もその場に膝をついて呼びかけたけど、それに答えられる余裕が今の彼にはないみたいで、呻き声をあげるだけ。
胸を押さえているその様子を見て私はハッとある事に思い至る。
……これはもしかして、魔力の暴走……?
発動し終わった後、未だに魔力が身体から流れ続けている。彼の周りに漂う魔力が彼自身を蝕んでいるかのように。
どうしてなの?呪文も、魔力を放つタイミングも合っていたと思うのに。それに発動直後まで彼はちゃんと膨大な魔力を制御出来ていたのに、何処で暴走してしまったのか。
制御されていない魔力の余波は、このままだと周りの生徒達にまで被害を出してしまう。それにレヴィ君もずっと魔力が流れ続けたら大変な事になる。早く何とかしないとっ!
「レヴィ君っ!しっかりして下さい!私の声聞こえますか?」
何とかしないとと思う一心で必死に呼びかける。
「……はぁ……っう……、はぁ……はぁ」
やっぱり返事はない。それに呼吸が荒くなってきていて、私は冷静に、でも急いで頭を回す。
確か前にルカに教えてもらった事があるよね、魔力の暴走の止め方。
えっと……、えっと……。あっ!思い出したっ、あれだ!
必死に頭を回転させて何とかその方法を思い出した。
その方法は確か二つあった。
一つは暴走していても意識があるなら、本人次第で自ら暴走を止める事が出来る方法だった。
けど今のレヴィ君を見る限りそれは難しそう。ならば残りのもう一つの方法で止めるしかない。
私は覚悟を決めるとまだいる周りの生徒に叫んだ。
「皆さんここは危険です、この場から早く避難して下さいっ!」
声に弾かれたように、呆然としていた生徒達が我先にとその場を離れて行くのを確認すると私は大きく深呼吸をした。
焦りそうになる心を落ち着かせて今一度レヴィ君の様子を見る。まだあった意識も今は大分朦朧としているみたい。
意識が混濁している今の状況でこれから行う行為をしたら、次に起きたときは覚えていないかもしれないけど、私はその方が良いと思う。彼のためにもね……うん。
……よし!
「レヴィ君、ごめんっ」
聞こえていないだろうけど一応断りを入れておこう……。
行いやすいように彼をその場に寝かせると私は前かがみになり彼に顔を近づけた。そしてそっと彼の唇に自分の唇を重ねる。
恥ずかしいけど、これは治療!我慢よ、私!余計な考えを振り払うように目を閉じて集中する事に専念した。
今私が行っているのはもう一つの方法。魔力の量を同等か、それ以上持っている人が、暴走させてしまった人に代わって止める方法。
暴走と言うのは自分の身体に魔力が何らかの理由で収まらなくなり、身体の中でも制御が利かなくなってしまったものが好き勝手に暴れている状態の事。
だから溢れ出した魔力は無理だけど、中で暴れている魔力を吸収して正常な状態に戻せれば暴走は止まるって事。口で言うのは簡単だけど実際はそう簡単じゃない。
それに本来なら口に直接じゃなくてもその人に触れてさえいれば出来る方法なんだけど、そうすると吸収するのに時間がかかってしまう。特に今回は凄くまずい状態で、一刻を争う事態なのにただ触れただけでは到底間に合わない。だから最終手段、口からって形になった。
見た感じ、人工呼吸みたいだけど実際行っていることは、口を通してレヴィ君の魔力をただ私の身体に移しているだけ。
私が上手く吸収出来れば後はレヴィ君次第になるけど。
それにしてもレヴィ君の魔力って本当に強いな……。私以上なんじゃ……?
余裕そうにそんな事を思ったけど、本当は結構大変です……。
屈んで口づけしている体制で、それほどしない内にレヴィ君の身体の中で暴れていた魔力が安定して来た。それに気づいて私はゆっくりと唇を離して彼の様子を伺う。
ギリギリまで保っていた意識は今はない。でも苦しさは軽減されたようで、表情は幾分か和らいだように見える。
成功した、のかな……?
「エルっ!」
「エルシア様っ!」
ほっとしてその場で安堵していると名前を呼ばれて私はハッと振り返った。そこにいたのはリーサさんと、彼女を呼びに行ってくれたユキ、そしてこの場に居るはずのない人……。
「エルっ、良かった、無事みたいだね」
「……父様っ!?どうしてここに!」
何故か父様がいて、他の二人と一緒に急いでこちらに駆け寄って来る。
「学院に用があってね。来てみたら何やら騒ぎがあったと聞いて、途中で見かけた彼女達と一緒に駆けつけたんだ」
「そう、だったんですか」
父様を見たら凄く安心して強張っていた身体から力が抜けて行く。それを見て傍へ来るなり父様はそっと私を抱きしめてくれる。
父様は何も言わないけど、良く頑張ったって言われている気がして何だか嬉しかった。
でもすぐにレヴィ君の事を思い出して横たわっている彼を見たら、傍らに膝をついたリーサさんが治癒魔法を施してくれていた。
その効果はすぐに現れ、レヴィ君から規則正しい息遣いが聞こえてくる。
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