幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
71 / 229
第5章 学院生活

9 杞憂

しおりを挟む
「レヴィ君、あれから大丈夫だったのでしょうか……」

「相変わらずエルは心配性ね。彼の事だからもう大丈夫でしょう」

放課後の誰も居ない教室で、私の呟きを拾ったユキがそう返す。

家柄の付き合いがあったらしいユキは、レヴィ君の性格を少なからず分かっているみたいで。
まあユキがそう言うなら大丈夫なのかな、って思うけど。


先日の事故から数日経ち、私達は普段通りの学院生活を送っていた。
あの事故の翌日から学院は通常通り授業を行っていたけど、私は家で療養中だったレヴィ君に付き添っていたため、学院を休んでいて授業には顔を出せていなかった。
その日の事は後からユキに聞いたけど、人に被害は出ていないのが幸いだけど、建物の損傷が激しく、その事を生徒に説明しない訳にはいかないと言う事で、その日は生徒全員、そして職員を集めて、学院長が直々にその経緯を上手い事説明したらしい。
これも後で聞いた話だけど、学院長は大事にしないよう上手く説明してほしいと父様からお願いされていたらしく、それを聞いて私は本当に申し訳なくなりました。そして父様、手が早いなって単純に感心したのを覚えている。

そしてさっき言っていた損傷した建物の事だけど、そっちはもう大丈夫。修復魔法を使って瞬時に元通りになりました!
やっぱり魔法って凄い。そしてありがたい。

と言う感じで数日経ち、学院の方はもう落ち着いたんだけど、当の本人がまだ一度も学院に来ていなくて、私は心配で落ち着かない日々を過ごしていた。

私の家で療養していたレヴィ君は治癒魔法のお陰もあってか、魔力も体力も思ったよりも早く回復して、二日程で動けるようになっていた。とは言っても休んでいなければ行けないのに、回復した途端、これ以上迷惑はかけられないって言って、早々に自分の家へと帰ってしまい、それから今日まで一度も会っていないと言う状況。

う~ん、ユキに心配ないって言われてもやっぱり心配しちゃうな。

何を話しているのかは分からなかったけど、レヴィ君とルカが何かを言い争っている様な、そんな声が部屋の外にまで聞こえてきたし、父様がそれを止めていたようだけど、何だか険悪な雰囲気だった様な、そんな気がするし。

それと前にレヴィ君が騎士団に所属しているお兄様の事を教えてくれた時の事だけど、私は純粋に凄いと思ってそれを口にしたけど、そうしたらレヴィ君、顔を曇らせていて、何かまずい事を言ったのかな?って思った時があったけど……。

それから今回の事で、レヴィ君には何やら焦りがあったみたいで。
あんなに難易度の高い上位魔法を、すぐにでも完成させないといけない、そんな理由でもあったのかなって。

憶測になっちゃうけど、もしかして彼、家族とその、あまり仲が良くないのかも。そして反応を見た限りだけど、彼はお兄さんに憧れの感情、それとは反対の、妬みと言う気持ちを同時に抱いているんじゃないかって思うの。
上位魔法を完成させたかったのは、家族に自分の実力を見て欲しいから。自分をちゃんと見て欲しいと思う気持ちから。だから一刻も早くって焦っていたんじゃないのかな、って私は思うけど。

私の憶測じゃなくて、仮にもしそれが本当だとしても、家族の事に私が口を挟むわけにはいかないのが現状で。
それに今回の件はローレンス家にも既に伝わっているだろうからそれが更に心配。
何日も学院に来ないのはその事で家族に言われているからなのかな、って勝手に想像しちゃうよ。

父様、ローレンス侯爵とは仲が良いって言っていたから、その事で手を打ってくれてはいるんだろうけど……。

そんな思いでここ数日の間、私は心ここにあらずって感じで。
その事でユキにも心配をかけてしまい、励ましてもくれるのに、どうしても一向に気分は晴れないでいる。

「大丈夫よ。彼もそろそろ来るわよ。きっと」

「そう、ですよね。すみません、私まで落ち込んで、ユキに心配をかけてしまって」

「気にしてないわ。それより彼が来た時にそんな悲しい顔で迎えたら彼にも心配させちゃうわよ」

「……そうですね。私らしくないですよね」

私今どんな顔しているんだろう?ユキに言われる程酷いのかな?
自分でも気分が落ちている事は分かっているけど、レヴィ君がいないこの教室は何だか寂しくて……。

でもそうだよね。こういう時こそしっかりしないとだよね。

「そうよ。エルはいつも笑顔でしょ?こういう時こそ笑っていないとね」

中々笑顔になれない私にユキは尚も励ましの言葉をくれる。笑いかけながらまだ不愛想な私の頬を指で軽く突ついてくる。
初めてそんな事をされて驚いて反射的に顔を上げると、悪戯が成功した時のような表情でユキが笑っているのが目に入り、何だか可笑しくなってきてつられた私も最後には一緒になって笑ってしまっていた。

「いつものエルに戻ったわね」

「はい。ありがとうございました、ユキ」

ユキに胸の内を聞いて貰ったらなんかスッキリした。気持ちが楽になって、調子も出てきた。
その気持ちを感謝と共に伝えたら、ユキは更に笑みを深めた。

「さて、それじゃそろそろ帰りましょうか」

「そうですね。何だか長話をしてしまいました」

夕日が照らす教室。窓からちょうど日の光が差し込んでいて、眩しいけど目を奪われる程美しいその光景。
それを名残惜しく思いながらも、遅くなったらまたルカに心配されると思い、私は踵を返して歩き出す。

教室の外へ向かっていた足はしかし一歩を踏み出すことなく止まってしまう。

開けられたままの扉に人影がある。私達は驚いてその人物を凝視した。
日の光が眩しいが、不思議なくらいに顔ははっきりと見えるのだ。

「……レヴィ君っ」

私が咄嗟に声を上げるとレヴィ君は一瞬驚いた顔をして、でもすぐに柔らかい表情へと変わった。
そして彼から自然な笑みが零れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

処理中です...