幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
83 / 229
第6章 魔法乱舞

1 前日

しおりを挟む
魔法乱舞開催の前日。

ユキ、アリンちゃん、エミリーさん、そして私の四人は、シェフィールド侯爵邸の私の部屋で、作戦会議、最終確認のために今日は泊まり込みで話し合いをする事になった。

ユキを相手にした特訓は空きがある限り毎日のように行っていて、魔法に自信のなかったエミリーさんも短期間だったけど着実に腕を上げていっていた。
相手をしてくれていたユキは前日になっても変わらず、出来る限りの事を冷静に取り組んでいたし、アリンちゃんは相変わらず近距離戦でも遠距離戦でも強くて、ユキと同じく冷静だから判断を誤る事がほとんどなくて、それがあわてんぼうな私にとってはとても頼りになって、そして心強くもあった。

そんな私はと言うと、ちゃんとユキから指導?を毎日のように受けていたし、魔法のコントロールも特訓をする前と比べれば格段と上がったんじゃないかな?って自覚出来るくらいには成果が出ているはず!
特に防御魔法。これに関しては結構自信がある。
見方を全員守れるくらいの大きさのシールドでも結構持ち堪えられる自信があるよ。
それに防御魔法は相手を傷つける攻撃魔法じゃないから、その分、魔力もそこまで抑えなくて良くて、ある意味一番私に向いている魔法なのかもしれないって思ったり。
だって攻撃魔法となると、私が全力をもって行った場合、魔力の制御次第で死者を出してしまう事も恐ろしながらあり得る話。だから相手に向けての攻撃は、魔力量を調節して尚且つコントロールする能力も必要なわけで……。
魔力量が多いと良い事も勿論大いにあるけど、時々嫌になる事もあるから常にそう言った気持ちと私は格闘をしている訳だよ。

「それじゃ良い?最終確認よ」

「はい」

ユキの真剣な呟きに私も真剣に答える。アリンちゃんとエミリーさんも真剣な眼差しで頷く。
それを見てからユキは先を続ける。

「戦闘になったら私とエルが前衛で攻撃をしつつ、防げるものは防いでいく。そしてアリンとエミリーさんが後衛で私達のサポート。このスタイルで最初は行くわ。良い?」

「はい。それは良いのですけど、私よりもアリンちゃんの方が前衛に向いているんじゃ……?」

「その事なんだけど。まずエルは十分戦力になるわ。でも貴方が言うようにアリンがこのチームでは一番戦闘能力が高いのも確かだわ」

私の言いたい事を事前に想定していたようで、説明をしてくれるユキ。それを私は真摯になって聞く。
その様子に苦笑しつつも先を続けてくれた。

「それで私も最初はアリンを前衛にと思ったの。でもね、最初はやっぱり派手に行きたいじゃない?」

何やら含みのある笑みを浮かべるユキ。悪い顔をしているよ。

「派手、ですか?」

私が聞き返すとユキは力強く頷いた。

「そう。エルの魔力量は私達の学年では承知の事実だけど、他の学年ではまだそこまで知られていないと思うのよ。そこでそれを逆手にとるの。エルの魔力とここ数日特訓してきた魔法のコントロール力、技術を皆に見せつけるの」

「えぇ……、でも」

「エルの実力を知っている人にも知らない人にも、実力の差を見せつける事は大事よ。それに怯んでくれれば尚の事良い。それに派手にする事で皆の視線を釘付けに出来るしね」

なるほど。ユキの言いたい事、何となく理解出来たかも。
つまり、私の力を見せつける事によって、生徒、そして教師の目を引き付ける効果があるのは勿論、勝ち進んで行けば後々当たるでしょう、件の先輩との戦闘が待っている。その際にはエミリーさんを前に出して、皆の視線の中、彼女の成長した姿を公の場で見せつけ、そして先輩にも勝つ。それが目的、って感じ、かな?そんなところ?

エミリーさんは自信がないって自分でも言ってるから、敢えてたくさんの視線のある場で前に出させる事によって気弱な自分に打ち勝って、尚且つ先輩にも勝って欲しいと言うユキの強い願いも感じるね。

ユキは今回の魔法乱舞、エミリーさんと多分私のため?に全力を尽くしてくれようとしているんだと思う。
口ではなんだかんだ言っていても本当は人に優しいって事、私は知っているから。

「分かりました。つまり私は皆の視線を引きつけながらも相手のチームに勝てばいいわけですね」

「そう。それとね先の話にはなるんだけど、暫くの戦闘はさっきも言った通りのスタイルで行くわ。でも途中でエルとアリンは交代してもらうと思うわ。アリンが私と前衛、エルがエミリーさんと一緒に後衛で私達のサポート兼防御をしてくれると助かるわ」

「分かりました!任せてください、ね、エミリーさん」

「は、はい!足を引っ張らないように精一杯頑張ります!」

「分かった」

私に続いて、エミリーさんそしてアリンちゃんもしっかりと頷く。そんな私達を順番に見て行き、真剣なのを確認するとユキは満足そうに笑みを零した。

「さて、それじゃ、そろそろ寝ましょうか。朝から特訓で貴方達も疲れているでしょうし」

「あれ、もうそんな時間だったんですね」

気づけばこの作戦会議を始めてから既に数時間が経過していた。話に集中しすぎてユキに言われるまで全然気が付かなかった。

晩御飯は早い内に済ませて、更に湯浴みも済ませてしまっていたので、皆はもう夜着で後は横になって眠るだけ。
さっきまでは話に夢中だったから眠気なんてなかったけど、それが終わった途端、どこから来たのかと不思議に思う程の眠気に襲われる。
夜遅いわけでもないんだけど、ユキも言っていたけど今日も朝から特訓三昧だったからね。皆も眠そうに眼を擦ったりしている。

話も終わったし、寝ますか。そう思って私はいつもと同じように自分の寝台に潜りこんだ。
私のベッドは一人で使うにしては大きめの、前世で言うキングサイズに匹敵するレベルの大きさなわけで、だから私の他にもう一人、二人で寝ようとも余裕なわけで。
と言うわけで、私の寝台を今日はユキと一緒に使うことになり、そしてアリンちゃんとエミリーさんは二人で一台の、私の寝台と同じサイズのベッドを急遽用意してもらって、そこに今日は二人で寝てもらうことになった。
寝台だけじゃなくて、部屋も無駄に広いからキングサイズのベッドが二台並んでも余裕で入るんだよね。
広い部屋って凄いな、なんてね。自分の事なのに何だか他人事だよ。

「皆、明日から頑張りましょうね」

眠気と闘いながら私は皆に告げる。

「ええ、頑張りましょうね」

「はい!」

ユキとエミリーさんの返事を聞き、アリンちゃんの方を見れば無言で、でも力強く頷いてくれて、それに思わず私は嬉しくて笑ってしまう。

それからおやすみなさいと言ってから程なくして、皆の規則正しい息遣いが聞こえてくる。
私は明日の事でドキドキして中々寝付けなかったけど、目を閉じて色々と考えていたらいつの間にか眠りに落ちてしまっていた。


いよいよ明日から始まる魔法乱舞。
皆それぞれが様々な気持ちを抱えて臨む、魔法を駆使して戦うトーナメント式の伝統行事。

それぞれの思い、目的、そして勝利のための戦いが今始まろうとしていた――――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...