幸せな人生を目指して

える

文字の大きさ
85 / 229
第6章 魔法乱舞

3 魔法の威力

しおりを挟む
戦闘開始直ぐに、赤のケープ、つまりは六年生のチームの方が先に動きを見せる。
六年生チームは四人とも女子生徒で、その内の二人が後方へと下がり、前に残った二人は同時に同じ魔法を展開させようとしていた。

今のを見た感じ、六年生チームは私達と同じスタイルで戦うつもりらしいね。
やっぱり四人だから、前衛二人、後衛二人に分かれた方が戦いやすいし、無難なのかな?

「「ファイアーキャノン!!」」

前衛の二人が同時に呪文を唱えると、目の前に巨大な火の塊が現れ五年生チームに向かってそれが放たれた。
二人分の魔力が合わさって通常の大きさよりも更に大きな火の塊が彼らを襲う。
観客席でも驚きの声が上がり、五年生チームが不利に見えた。
でも五年生チームもただぼうっと立っていたわけではなかった。

「シールド・アクティベートっ!」

「ストレングスンっ!」

五年生チームは男子生徒二人、女子生徒二人のチームで、その内の二人の男女が呪文を唱えて、迫りくる巨大な火の塊を迎え撃とうと素早く魔法を展開させる。

防御魔法を唱えたのは男子生徒、そしてその魔法を強化させる魔法は女子生徒の方が唱え、強固な目には見えない壁を作り出す。

――ドガンッ!!

そのシールドに火の塊が勢い良くぶつかる音が辺りに響き渡る。
衝撃は凄いようだけど、さっきシールドを強化したおかげか攻撃を耐えている。
それを見て攻撃を仕掛けている方はそのシールドを突破しようと、更に魔力を練り上げ威力を上げようとした。
威力の上がった火の塊、それを防ぐ壁。まるで前世の小説に出てくる盾と矛みたい。
あれって結局はどっちが勝ったんだっけ?
そもそも何でも貫き通す最強の矛と、何からでも守り通す鉄壁の盾、って言ってたような気がするけど、それって勝ち負けがちゃんとつくのかな?まさに矛盾する話。

まぁそれは小説の話だとして、今の状況が似ているってだけで小説と同じになるって事はないからね。
それに現実はちょっとした小さい変化で状況が一変してしまうものだし。

「ウォーターストリーム・アクティベートっ!」

中々シールドを破壊出来ない事に痺れを切らしたのか、後衛にいた六年生チームの女子生徒の内の一人が水魔法を展開させた。

彼女が唱えた瞬間、どこからともなく大量の水が流れをなして、五年生チームに襲い掛かった。

なるほど。きっと彼女は攻撃目的で水魔法を使ったんじゃない。相手の体制を崩す事を目的とした魔法ってわけね。
確かに水だったら、相手の足元に勢い良く流す事で滑らせたり、一瞬でも体制を崩す事が出来る。
魔法は繊細なもの。少しでも集中を切らせたりしたらどんなに強固なシールドを張っていようとも綻びが生じる。
彼女の狙いはそれだね。凄いよ、一瞬で相手の意表を突いた一手。

「っ!!」

「まずいっ!体制がっ」

作戦は上手くいき、前衛の二人は体制を崩してしまい、水の勢いが良い事もあって後衛の二人までもがその場で尻もちをついてしまっていた。

「今よっ!」

その隙を見逃す事無く、火の塊をコントロールしていた女子生徒は、綻びが生じたシールドに更に力を加え破壊する。

――パリンッ!

ガラスのように一瞬にして粉々にシールドが粉砕され、彼らを守る盾はなくなり、無防備になってしまう。

「これで終わりよっ!!」

勝負は着いた、そう言うかのように女子生徒は声を上げ、シールドを破った火の塊は茫然と見ている事しか出来ない彼らに迫り、そして――。

――ドガーンッ!!!

「わぁっ!!」

もの凄い音を立てて火の塊は辺りに火の気をまき散らし、やがて拡散していった。
そのあまりの爆炎に観客席の方にまで火の気が飛び散り、私は思わず声を上げてしまった。
とは言っても、天井と同じで、観客席にも生徒達をこう言ったとばっちりから守るために防御魔法が施されていて、今もしっかりと発動していたんだけどね。

「び、びっくりしました……」

「凄い勢いだったわね」

ユキ、私、アリンちゃん、エミリーさんと横並びで並んでいるんだけど、左右を見るとユキとアリンちゃんは関心はしているけどあんまり驚いていないみたいだった。四人の中で驚いていたのは私とエミリーさんだけだったよ。
……何で動じないんだろう。この二人……。
そんな二人に私は苦笑いを浮かべる。でもそこではっと我に返る。
……そ、そう言えばあんなに凄い火の塊を五年生チームはもろに受けていた、よね?
だ、大丈夫なのかな……?

あれだけ離れているのにこの観客席にまで火の気が来たんだから、攻撃をまともに食らっていたら彼らは無事じゃすまない……。

心配で会場を凝視して無事なのを確認したいのに、未だに漂う煙のせいでどうなっているのか見えなくて、それが私の不安を更に煽る。

「ウィンドっ!」

唐突に会場から声が響き、魔法が展開される。誰が使ったのかは分からないけど、多分六年生チームの誰かでしょうね。
女性の声で唱えられたのは風の魔法。誰でも使える簡単な程度のもの。
でもこの煙を消し去るには十分だったようで、直ぐに視界も開けていった。

……か、会場が……。
煙がなくなった事により会場の様子が見える。でもその有様がまた凄い事になっている。
地面は抉れて、さっきの火の塊によってどこもかしこも焦げてしまっていた。

あっ!

会場は言葉が出ない程酷い有様だったけど、良く見ると地面に座り込んで唖然としている四人の姿が見えた。
五年生チームだ。無事だった!良かったよ。

ケープがところどころ穴が開いたり、汚れたりはしていたけどどうやら大けがはしていない様子。
そしてこの事態を引き起こした六年生チームはと言うと、四人とも堂々としていて、しっかりとその場に立っていた。

それを見た私は怪我がなくて良かったと思う一方、流石は六年生だなと大いに感心していた。

それに五年生チームの特に前衛の二人だけど、大きな怪我がなかった。あの二人がシールドを新たに作れる暇はなかったはずだし、後ろの二人も体制を崩していて援護できる余裕はなかったと思うんだよね。
とすれば、六年生チームの前衛で戦っていた二人の女子生徒。あの二人が直前で攻撃をわざと回避させた、って事になるけど。それが本当だったら凄いコントロールだよ。
二人分の魔力で作った火の塊の軌道を寸でで変えるなんてね。

「エル、口が開いてるわよ」

「え、あっ、すみません」

思わず見入ってしまい、いつの間にか口も開いてしまっていたらしい。それを見かねたユキが苦笑しながら指摘してくる。
それにはっと我に返り、恥ずかしくなって私は慌てて口元を両手で隠す。

「ふふふ。それにしても凄かったわね」

「は、はい。凄い威力でした」

「まぁ貴方ならあれ以上が出来るでしょうけど」

「……ど、どうでしょうね」

ユキの言葉に私はまたしても苦笑い。出来そうだけど、自信はないかな、あれは。

「そこまで!勝者スチアートチームっ!」

呑気に話していると学院長の声が響き渡り、勝ったチームを告げる。すると会場からは割れんばかりの歓声が上がった。

勝負は六年生チームが勝ったんだけど、前衛の内の一人、その女子生徒。あの女の人、スチアート先輩って言うんだね。
格好良いな。何だろう、彼女自身も凛々しいし、それでいて活気的で魔法は力強かったし。
もう全てが格好良かったよ!

今の今まで名前すら知らなかったのに知った途端、彼女の姿が目から離れなくなる。それくらい感動をした一戦だったね。

スチアート先輩の戦いぶりを見て納得した。確かに最初から派手に魔法を使うと観客の視線を釘付けに出来るんだね。
周りを見回せば誰もかれもが彼女の事を見つめている。
ユキの言っていた、派手にすればするほど人の視線を引きつけられるってこう言う事ね。
確かに私もその一人だし。
先輩に至っては作戦かどうかは分からないけど、とりあえず効果は抜群ね。

「さて、見学はもう終わりよ。そろそろ行くわよ」

観客がざわつく中、ユキはそう言い立ち上がると私達を順番に見つめた。
そう、この後の第二戦目はついに私達の番だった。

うわぁ、緊張する!でもあれだけ特訓したんだから大丈夫だよねっ!

「準備は良いわね?」

ユキの問いかけに、私は前向きに心を入れ替え、そして顔を上げるとユキの視線をしっかりと受け止める。

「はい!勿論です」

「はい」

「頑張りましょう!」

私達は各々そう言葉を返すと大きく頷いたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...