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第9章 愁いのロストフラグメント

5 手掛かりを求めて2

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今回の投稿が今年最後となります!今年も一年ありがとうございました。
来年も気合入れていきますので、またよろしくお願いいたします!!
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「父がすまない。昔はあんな人ではなかったのに変わってしまって」

ローレンス侯爵がその場を去った後、父の代わりにとルドルフさんが謝罪の言葉を述べる。
昔を思い出しているのか、彼からは寂しい、悲しいと言う気持ちが滲み出ていた。

それを見て私もレヴィ君と初めて会話をした時の事を思い出していた。

あの時、レヴィ君にお兄さんがいると知り、良いですねなんて呑気な事を言っていた私はとても無神経で、彼の一瞬悲し気な表情をした事に今更ながら合点がいく。
あの時から、いやもっと前からルドルフさんやローレンス侯爵に、家族との間に壁を感じていたのかもしれない。

それを考えると父様の言っていた事にも納得ができる。
今回の件はレヴィ君の心情、精神状態が大いに絡んでいるという事に。今日ここへ来たのはそれを確かめる為でもある。



「ここがレヴィの部屋だ」

そう良い扉を開け、先に部屋へと入るルドルフさん。そして父様、私の順で続いた。


部屋へ入ると変な違和感を覚えた。
中の様子はルドルフさんから事前に聞いていたように荒らされた形跡はない。
けれど息苦しさをこの場所からは感じる。それはただ単に部屋の窓が閉め切られているからだけではないはずで、それに思っていたのは私だけではないようだった。

「相変わらず整理の整った部屋だ。だが微力ながら魔力を感じるな。エルも感じているんじゃないかい?」

その場を見てそう聞いてくる父様に私は静かに頷く。それから視線を部屋へと戻すと、その微力な魔力を辿るように視線を動かし続けている。

「微力な魔力?そんなもの私は感じないが…」

訝し気に眉を顰めるルドルフさん。
しかし彼がそうなるのも無理はない。私達が感じ取った魔力は本当に小さい些細なものなのだ。
普通は早々気が付けるものではない。

「それは仕方がないよ。この場にある魔力はごく僅かな残り香のようなもの。魔力量が多い者や魔法に長けている者でなければ感知は難しい」

「なるほど。確かに私の魔法の腕はそこそこだしな。
剣術を極めてはいるが、言ってしまえば私より魔法も剣も扱えるレヴィの方が余程才能があるからな」

父様の説明を聞いて彼は納得だと何度も頷いて見せるが、そんな彼が当たり前のようにさらっと零した言葉に私は少し驚いていた。

…この人、レヴィ君の事しっかりと見て、その才能も認めている。

ローレンス侯爵とは違い、弟の事を一人の兄として大切に想っているのが伝わってくる。

レヴィ君の話だけでは分からなかったルドルフさんの人間像。人から聞いたものと実際に会って直接話すのとではまた印象が変わってくるものなのだと実感する。

そして更に気づいた事がある。
この兄弟はすれ違ってしまっているだけなんだって事に。どちらもお互いの事を考えているのに、少し言葉が足りなくて、勘違いしていつの間にか壁が出来てしまっただけなんだ、きっと。

それは二人だけでなく侯爵や侯爵夫人にも言える事だから、今回の件が終わったら家族でしっかりと話し合ってもらいたい。支え合っているはずの家族がバラバラなのはとても悲しいから。
それに面と向かって話せば大抵の事は解決するはずだから。


「君がレヴィの事をそこまで認めていたとは正直驚いた。だが、それはレヴィが戻ってきたら伝えると良い。きっと喜ぶだろうからな」

「ああ、そうするよ」

父様も同じ事を思っていたらしく、諭すような物言いだ。そしてルドルフさんもそれに答え、同時に何かを覚悟したようだった。


「ではルドルフ。悪いが少しの間私とエルの二人だけにしてもらえるかい?」

少しの間の後、父様が口火を切る。
ちょうど私もいつ言い出そうかと思っていたところで、だからタイミングとしては完璧で助かる。
ありがとうございます、父様。


「分かった。終わったら呼んでくれ」

内容は伝えていないのにも関わらず、ルドルフさんはこちらの意図を汲み取ってくれたようだ。
何も聞かずに父様の指示通り部屋を出て行った。

出て行く彼を見つめて、終わったらちゃんと感謝を伝えないと。そう私は思ったのだった。


そうしてこの場には私と父様、そして――。

「これでもう大丈夫だろう。もう良いんじゃないかい?」

「はい。父様ありがとうございます」

そう言い私は心の中で呼びかけた。

「ようやく私の出番ね。エルちゃん」

そうして姿を現した光の精霊、ウルが私に微笑みかけた。
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