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第9章 愁いのロストフラグメント
9 決意と覚悟
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はやる気持ちを抑え、私達はローレンス侯爵邸を後にし、シェフィールド侯爵家の屋敷へと戻ってきていた。
ルドルフさんにも同行してもらい、そして現在、応接室にて話し合いを行っている最中だった。
応接室に用意されている一人用の椅子に父様、二人掛け用のソファに私と母様、その対面にルドルフさんがそれぞれ座り、椅子はまだ余っているがそこには座らず、私の後ろにルカが控える。
事が事だけに部屋の空気も重苦しいものとなる。
今回は急を要する為、集まり次第早速本題へと入り、まずは私から光の精霊ニールさんから聞いた情報を共有した。
勿論精霊からと言う事は伏せながら。ルドルフさんは私が精霊と話せることを知らないからね。
「なるほど。しかし運良く目撃者がいてくれて助かったな」
説明し終わるとルドルフさんが感慨深そうに呟く。
精霊の事は伏せて、目撃者という事にして伝えたのだ。こんな夜中に運良く目撃者?と疑われそうで内心冷や冷やしたけど、どうにか誤魔化せたようだった。
普段なら彼もおかしいと気が付くのだろうけど、私の事をレヴィ君の理解者の一人として好意的に見てくれているようなのでそのお陰もあるのかもしれない。ともかく下手に突っ込まれなくてホッと胸をなでおろしたのだった。
「大体の場所も把握出来た。こちらもようやく動けるな」
「けれど心配ね。話によれば魔族が関わっているのでしょう?」
父様がようやくだと息を付き、それとは反対に心配そうな声音で言葉を落とす母様。
二人のやり取りに私にも緊張が走る。
父様の言っていた憶測が当たっていたのだから。
今回の件を話すのにあたって、精霊の事は伏せたけど魔族が関わっているという事はどうしても話さなければならなかった。
レヴィ君の救出に動けば恐らく魔族と戦闘になるだろうし、それを考慮して知らせておかなければならない。魔族の存在と脅威を。
父様と母様にはシュレーデル王国での出来事を話しているし、ルカに至っては魔族の恐ろしさをその目で目の当たりにしている。その為、魔族が絡んでいると言ってもいくらか落ち着いていられる。
でもルドルフさんは魔族と言う存在を知ってはいても実際に遭遇したことはないはずだ。
だから最初は半信半疑だったみたいだけど、私達の真剣な様子に段々と本当なのだと理解をしてくれたようだった。
それでも驚きは隠せていなかったけれど。
「そうだね。魔族は脅威だ。慎重に動かなければ危険だし、それに今レヴィはその魔族の手の内にあるわけだ」
「レヴィ君……」
父様の言う通り、危険な状態であるのは変わらない。
慎重にとは分かっているけど一刻も早く助けたいと気持ちは焦ってしまうし、数日間彼の姿を見ていないのもあり不安も募る。時間が経てば経つ程に。
「それにレヴィは普通の状態ではないかもしれない」
「それってどういう事?」
父様の不穏な物言いにすかさず母様が訊ねる。父様は厳しい顔をし一度間を置くと改めて口を開いた。
「精神系の魔法をかけられている可能性があるという事だ」
「精神系の魔法……?」
父様の言葉をそのまま反芻し、しかし次の瞬間私はハッとした。ある事に思い至ったからだ。
「まさかあの痣……っ!」
思わず声を上げる私に父様はそうだと頷き同意した。
彼の首に浮かび上がっていたあの黒い痣。ニールさんの記憶で見たいつもとは違うレヴィ君の様子。シュレーデル王国で魔族の少年が言っていた言葉。
そうだ。確かシュレーデル王国で魔族の少年の襲撃を受けてからだ。レヴィ君の体調が悪くなり始めたのは。
それに襲撃の際、あの魔族に首を圧迫されていたし、その時に魔法を施されていたのだとしたら……。
精神系の魔法はその名の通り人の精神に働きかける魔法だ。
使い方次第で施した相手を自分の思い通りに操ることもできるし、もっと言えば自分の犯した罪を相手になすり付ける事だって出来てしまうのだ。
こういった魔法は危険だが確かに存在する。ただ相手を思い通りに動かすとなれば多大な魔力と緻密なコントロールが必須となる。人一人を動かすのだ。それにかかる魔力量も比例して大きくなる。
それに魔力量にもよるが、体の自由だけを奪う事もあれば意識すらも操れる場合もある。意識までとなると解かれた後の反動は大きく体に大きな負荷がかかってしまう恐れがある。
それ程にこの魔法が危険なものだった。
「それは…、レヴィが精神系の魔法で操られている、という事か…?」
「その可能性があるという事だ」
私だけでなくルドルフさんも事の重大さに気づいて唖然と呟き、それに対して父様も重い口調で応える。
ルドルフさんの生まれは騎士の家系だけど全く魔法の知識がない、と言うわけではない。
精神系の魔法が人にどういう影響を与えるのか知っているのだろう。
大切な弟が魔族といるだけでも危険だと言うのに、更に卑劣な魔法を施されているとなれば気が気でないはずだ。
「父様!私、レヴィ君を助けに行きます」
「エル様…っ!?」
だけどいてもたってもいられないのは私も同じ事。
私が前に乗り出すようにして声を上げると、父様よりも自身の背に控えていたルカの方が驚いた声を上げた。
「駄目だ。危険すぎる」
しかし無鉄砲な私の発言に父様もすぐさま異を唱える。
分かっている。自分がどれだけ我儘を言っているか、どれだけ危険なことをしようとしているのか。それでもじっとしている事はもう出来ないのだ。
「危険なのは重々承知しています。実際私は魔族の力、恐ろしさをこの目で見ていますから。でも、それでも行きます。レヴィ君を助けに」
私は立ち上がって必死に言葉を紡ぐ。スカートを掴んでいた手に力が籠る。
私を無言で見据える父様。その視線に少し怯みそうになったけど引くわけにはいかない。
ぐっと我慢し、尋常ではない雰囲気に誰一人として口を開くことなくただ時間が過ぎていく。
しかしその沈黙を破ったのは誰でもない父様自身だった。
「はぁ……エルの意固地なところには敵わないな」
全く誰に似たのか、とため息を吐く父様。けれどその一言で重かった空気が少し緩む。
「ふふふ。誰かしらね」
続けて柔らかく笑みを浮かべた母様が茶化すように呟く。
和らいだ雰囲気に緊張していた私もホッとしそうになる。だがしかし、私の後ろの控えていた優秀な従者はそう易々と許すわけはなかった……。
「何を呑気な事を仰っているのですか。
エル様駄目ですよ。僕は反対です。危険と分かっている場所にエル様を易々向かわせるわけにはいきません」
第二の保護者がひょっこりと顔を出してしまった……。
父様もさながら、ルカの過保護っぷりも引けを取らず大したもので私自身感心してしまうくらいだ。
そんなに過保護になるほど私って危なっかしいと思われているのかな?
精神年齢はもっといっているのに……、何だか複雑だ。
「ルカ、落ち着いて。それにもう何を言っても無駄よ。
この子はここまで来たら誰が何と言おうと、一人でもレヴィの元に行くでしょうから」
昔の私を見ているようだわ、と母様は緊迫した雰囲気にも物怖じせず、その顔には笑みすら浮かべてそう話す。
母様って私と同じくらいの年の時は大分気が強かったみたいだし、今もその時の顔を覗かせる時はあるけど……、大人になって母親になり結構穏やかになったようだ。
何もなければ微笑みを絶やさない素敵な女性、なんだけど時には侯爵家当主である父様でさえ逆らえない時がある。
その時の父様は娘の私から見ても見るに堪えない、思わず同情しそうになるくらいだ。
ある意味我が侯爵家最強は母様なのでは?と思っていたりする。
そしてそれは父様だけでなくルカも例外ではなかったよう。
「…しかしローザ様」
流石のルカも母様の笑みに少し怯んだけど、それでもまだ納得いかないと食い下がる。すると更に追い打ちを母様がかける。
これ以上言えばエルに嫌われちゃうわよ?、と。
それが効いたのかついに黙ってしまったルカ。
と言うか変にダメージを食らってない?嫌われるって言われたのがそんなにショックだった?
大丈夫ですよルカ。嫌いになんてならないから。
ただ母様の言葉を借りるなら、だれが何と言おうと行くつもり、なのは変わっていないけれど。
「分かりました……」
「ルカ…」
「ですが納得はしていませんし、危険なのも変わらない。
それでも行くというのならば僕も一緒に同行させていただきます」
納得はしていないけど覚悟は決まったという顔で私を真摯に見返した。
「僕はエル様の従者ですからね。
それにエル様が意固地なのは知っていましたが僕も結構意固地なんですよ?」
先程まで母様に追い詰められていたルカは何処へやら。異論は認めませんよ、と顔に張り付けたその清々しいまでの笑顔がそう言っていた。
それに私は思わず顔が引きつりそうになるのだった。
「勿論私も行くぞ」
そこへ成り行きを見守っていたルドルフさんが続けてそう言う。
その声に私達の視線が一斉にルドルフさんに向くが、彼はその視線を受け止め更に続けた。
「私はレヴィの事を勝手に分かった気になっていた。そのくせに今はこうしてすれ違い、弟がどこかへ行こうとしている。
もっと話を聞いてやればこんなことにはならなかったかもしれないと、今更だが後悔もあるし責任も感じている。
それにレヴィを連れ戻すのも私の役目だとも思う。
一度話してしまった手だが、私は今度こそ一人の兄として大切な弟の手を掴んでみせるよ」
力強く拳を握る彼は、騎士団副団長としてではなく一人の兄として覚悟を決めたようだった。
そこまで言われたらこちらとしても言う事はない。
「はい!行きましょう。レヴィ君を救いに」
私は顔を上げると元気よく告げ、もう一度拳を強く握りしめた。
向かう場所は滅びの街、アイビス。そこにレヴィ君はいる――。
決意を新たに私は気持ちを奮い立たせたのだった。
ルドルフさんにも同行してもらい、そして現在、応接室にて話し合いを行っている最中だった。
応接室に用意されている一人用の椅子に父様、二人掛け用のソファに私と母様、その対面にルドルフさんがそれぞれ座り、椅子はまだ余っているがそこには座らず、私の後ろにルカが控える。
事が事だけに部屋の空気も重苦しいものとなる。
今回は急を要する為、集まり次第早速本題へと入り、まずは私から光の精霊ニールさんから聞いた情報を共有した。
勿論精霊からと言う事は伏せながら。ルドルフさんは私が精霊と話せることを知らないからね。
「なるほど。しかし運良く目撃者がいてくれて助かったな」
説明し終わるとルドルフさんが感慨深そうに呟く。
精霊の事は伏せて、目撃者という事にして伝えたのだ。こんな夜中に運良く目撃者?と疑われそうで内心冷や冷やしたけど、どうにか誤魔化せたようだった。
普段なら彼もおかしいと気が付くのだろうけど、私の事をレヴィ君の理解者の一人として好意的に見てくれているようなのでそのお陰もあるのかもしれない。ともかく下手に突っ込まれなくてホッと胸をなでおろしたのだった。
「大体の場所も把握出来た。こちらもようやく動けるな」
「けれど心配ね。話によれば魔族が関わっているのでしょう?」
父様がようやくだと息を付き、それとは反対に心配そうな声音で言葉を落とす母様。
二人のやり取りに私にも緊張が走る。
父様の言っていた憶測が当たっていたのだから。
今回の件を話すのにあたって、精霊の事は伏せたけど魔族が関わっているという事はどうしても話さなければならなかった。
レヴィ君の救出に動けば恐らく魔族と戦闘になるだろうし、それを考慮して知らせておかなければならない。魔族の存在と脅威を。
父様と母様にはシュレーデル王国での出来事を話しているし、ルカに至っては魔族の恐ろしさをその目で目の当たりにしている。その為、魔族が絡んでいると言ってもいくらか落ち着いていられる。
でもルドルフさんは魔族と言う存在を知ってはいても実際に遭遇したことはないはずだ。
だから最初は半信半疑だったみたいだけど、私達の真剣な様子に段々と本当なのだと理解をしてくれたようだった。
それでも驚きは隠せていなかったけれど。
「そうだね。魔族は脅威だ。慎重に動かなければ危険だし、それに今レヴィはその魔族の手の内にあるわけだ」
「レヴィ君……」
父様の言う通り、危険な状態であるのは変わらない。
慎重にとは分かっているけど一刻も早く助けたいと気持ちは焦ってしまうし、数日間彼の姿を見ていないのもあり不安も募る。時間が経てば経つ程に。
「それにレヴィは普通の状態ではないかもしれない」
「それってどういう事?」
父様の不穏な物言いにすかさず母様が訊ねる。父様は厳しい顔をし一度間を置くと改めて口を開いた。
「精神系の魔法をかけられている可能性があるという事だ」
「精神系の魔法……?」
父様の言葉をそのまま反芻し、しかし次の瞬間私はハッとした。ある事に思い至ったからだ。
「まさかあの痣……っ!」
思わず声を上げる私に父様はそうだと頷き同意した。
彼の首に浮かび上がっていたあの黒い痣。ニールさんの記憶で見たいつもとは違うレヴィ君の様子。シュレーデル王国で魔族の少年が言っていた言葉。
そうだ。確かシュレーデル王国で魔族の少年の襲撃を受けてからだ。レヴィ君の体調が悪くなり始めたのは。
それに襲撃の際、あの魔族に首を圧迫されていたし、その時に魔法を施されていたのだとしたら……。
精神系の魔法はその名の通り人の精神に働きかける魔法だ。
使い方次第で施した相手を自分の思い通りに操ることもできるし、もっと言えば自分の犯した罪を相手になすり付ける事だって出来てしまうのだ。
こういった魔法は危険だが確かに存在する。ただ相手を思い通りに動かすとなれば多大な魔力と緻密なコントロールが必須となる。人一人を動かすのだ。それにかかる魔力量も比例して大きくなる。
それに魔力量にもよるが、体の自由だけを奪う事もあれば意識すらも操れる場合もある。意識までとなると解かれた後の反動は大きく体に大きな負荷がかかってしまう恐れがある。
それ程にこの魔法が危険なものだった。
「それは…、レヴィが精神系の魔法で操られている、という事か…?」
「その可能性があるという事だ」
私だけでなくルドルフさんも事の重大さに気づいて唖然と呟き、それに対して父様も重い口調で応える。
ルドルフさんの生まれは騎士の家系だけど全く魔法の知識がない、と言うわけではない。
精神系の魔法が人にどういう影響を与えるのか知っているのだろう。
大切な弟が魔族といるだけでも危険だと言うのに、更に卑劣な魔法を施されているとなれば気が気でないはずだ。
「父様!私、レヴィ君を助けに行きます」
「エル様…っ!?」
だけどいてもたってもいられないのは私も同じ事。
私が前に乗り出すようにして声を上げると、父様よりも自身の背に控えていたルカの方が驚いた声を上げた。
「駄目だ。危険すぎる」
しかし無鉄砲な私の発言に父様もすぐさま異を唱える。
分かっている。自分がどれだけ我儘を言っているか、どれだけ危険なことをしようとしているのか。それでもじっとしている事はもう出来ないのだ。
「危険なのは重々承知しています。実際私は魔族の力、恐ろしさをこの目で見ていますから。でも、それでも行きます。レヴィ君を助けに」
私は立ち上がって必死に言葉を紡ぐ。スカートを掴んでいた手に力が籠る。
私を無言で見据える父様。その視線に少し怯みそうになったけど引くわけにはいかない。
ぐっと我慢し、尋常ではない雰囲気に誰一人として口を開くことなくただ時間が過ぎていく。
しかしその沈黙を破ったのは誰でもない父様自身だった。
「はぁ……エルの意固地なところには敵わないな」
全く誰に似たのか、とため息を吐く父様。けれどその一言で重かった空気が少し緩む。
「ふふふ。誰かしらね」
続けて柔らかく笑みを浮かべた母様が茶化すように呟く。
和らいだ雰囲気に緊張していた私もホッとしそうになる。だがしかし、私の後ろの控えていた優秀な従者はそう易々と許すわけはなかった……。
「何を呑気な事を仰っているのですか。
エル様駄目ですよ。僕は反対です。危険と分かっている場所にエル様を易々向かわせるわけにはいきません」
第二の保護者がひょっこりと顔を出してしまった……。
父様もさながら、ルカの過保護っぷりも引けを取らず大したもので私自身感心してしまうくらいだ。
そんなに過保護になるほど私って危なっかしいと思われているのかな?
精神年齢はもっといっているのに……、何だか複雑だ。
「ルカ、落ち着いて。それにもう何を言っても無駄よ。
この子はここまで来たら誰が何と言おうと、一人でもレヴィの元に行くでしょうから」
昔の私を見ているようだわ、と母様は緊迫した雰囲気にも物怖じせず、その顔には笑みすら浮かべてそう話す。
母様って私と同じくらいの年の時は大分気が強かったみたいだし、今もその時の顔を覗かせる時はあるけど……、大人になって母親になり結構穏やかになったようだ。
何もなければ微笑みを絶やさない素敵な女性、なんだけど時には侯爵家当主である父様でさえ逆らえない時がある。
その時の父様は娘の私から見ても見るに堪えない、思わず同情しそうになるくらいだ。
ある意味我が侯爵家最強は母様なのでは?と思っていたりする。
そしてそれは父様だけでなくルカも例外ではなかったよう。
「…しかしローザ様」
流石のルカも母様の笑みに少し怯んだけど、それでもまだ納得いかないと食い下がる。すると更に追い打ちを母様がかける。
これ以上言えばエルに嫌われちゃうわよ?、と。
それが効いたのかついに黙ってしまったルカ。
と言うか変にダメージを食らってない?嫌われるって言われたのがそんなにショックだった?
大丈夫ですよルカ。嫌いになんてならないから。
ただ母様の言葉を借りるなら、だれが何と言おうと行くつもり、なのは変わっていないけれど。
「分かりました……」
「ルカ…」
「ですが納得はしていませんし、危険なのも変わらない。
それでも行くというのならば僕も一緒に同行させていただきます」
納得はしていないけど覚悟は決まったという顔で私を真摯に見返した。
「僕はエル様の従者ですからね。
それにエル様が意固地なのは知っていましたが僕も結構意固地なんですよ?」
先程まで母様に追い詰められていたルカは何処へやら。異論は認めませんよ、と顔に張り付けたその清々しいまでの笑顔がそう言っていた。
それに私は思わず顔が引きつりそうになるのだった。
「勿論私も行くぞ」
そこへ成り行きを見守っていたルドルフさんが続けてそう言う。
その声に私達の視線が一斉にルドルフさんに向くが、彼はその視線を受け止め更に続けた。
「私はレヴィの事を勝手に分かった気になっていた。そのくせに今はこうしてすれ違い、弟がどこかへ行こうとしている。
もっと話を聞いてやればこんなことにはならなかったかもしれないと、今更だが後悔もあるし責任も感じている。
それにレヴィを連れ戻すのも私の役目だとも思う。
一度話してしまった手だが、私は今度こそ一人の兄として大切な弟の手を掴んでみせるよ」
力強く拳を握る彼は、騎士団副団長としてではなく一人の兄として覚悟を決めたようだった。
そこまで言われたらこちらとしても言う事はない。
「はい!行きましょう。レヴィ君を救いに」
私は顔を上げると元気よく告げ、もう一度拳を強く握りしめた。
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