俺はモブなので。

バニラアイス

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無駄なんかじゃない

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「え?」

「私も....親しい友人なんて一人もいないわ。」

女の子は俯きながら話を続ける。


「私...子供の頃から、その...素直じゃなくて....

誰かと話す時も緊張して威圧的な態度を取ってしまったり、同年代の子達に喧嘩を売ったりして、いつも敵を作ってばかりなの。

そんな私に、周りの子達は次第に近付かなくなっていったわ。」

(なんか語り出したな......俺は早くここから去りたいんだけど.....)

だがさすがの俺も空気を読み、黙って話を聞く。


「近付いてくるのは私の家柄を見て擦り寄ってくる奴らばかり。私自身を見てくれる人なんて、大人や同年代の子達では誰もいなかったわ。

親ですら、私を見てはくれなかったの。


でも....皇太子殿下だけは違った。」

そんな俺の思いとは裏腹に、女の子の話は止まらない。

「殿下は私自身を見てくれた。
優しく笑いかけてくださって、時には私を心配もしてくれた。今までそんな人間は一人もいなかったわ。

私はそんな殿下がいつの間にか好きになっていて、だからどうにか婚約者になれないかって必死に自分を磨いて、親からの厳しい教育にだって耐えた。

なのに....それなのに殿下は、私じゃない他の人間を選んだ!それもあんな子供も産めないような、たかが男爵家の息子を!!」

「......」

女の子は声を荒らげながら涙を流している。


(この子は、本気で皇太子の事が好きだったんだな。)

努力もしていない、皇太子に相応しくないような家柄のいきなり現れたぽっと出の男が選ばれて、皇太子の為に努力してきた自分は選ばれなかった。

この女の子は、その事が惨めで悔しいんだ。


そんな女の子に、俺が今できる事は......


「....よく頑張ったね。」


慰める事だけだ。


「.....っ!いきなりなによ!!」

女の子が怒鳴りながら俺を睨みつけてきたが、気にせず頭を撫で続ける。

「俺はまだ誰かを好きになった事はないけど、好きな人の為に血の滲むような努力をして頑張って、本当に凄いよ。
確かに君の好きな人は奪われてしまったし、悔しいって思うかもしれない。

......だけど、これだけは忘れないで。」

俺は一呼吸置いてから、女の子に向けて一番言いたかった言葉を発した。


「君の努力は無駄なんかじゃない。
誰がなんて言おうと、俺は無駄なんて絶対に思わない。よくここまで頑張ってきたね。」

俺は女の子にできるだけ優しく笑いかけた。

この女の子がどう思うかは分からないが、俺はその努力が無駄だったなんて絶対に思わない。

それだけは伝わってほしかった。


「......何も知らないくせに.....初めて会った名前も知らない男に、私の何が分かるっていうの?」

頭に置いてある俺の手を、女の子が振り払う。


「......君の事は何も知らないし分からない。

でも君が皇太子の為に努力してきたって事は、今の話だけでも十分理解できたよ。」

だから俺は、今まで頑張って努力してきたであろう女の子に「頑張ったね。」と言葉をかけたのだ。


「....っ......私の努力は、無駄じゃなかった....?

私.....頑張った......?」

先ほど以上に目に涙を溜めながら、女の子は俺に問う。


「あぁ。君は頑張った。
今までよく耐えたね。疲れたでしょ?.....お疲れ様。」

俺がそう言った瞬間、女の子は俺に抱き着き、声を上げながら思い切り泣き始めた。

突然抱き着かれて最初は戸惑ったが、女の子が泣き止むまで俺はできるだけ優しく背中を撫で続け、女の子を宥めたのだった。

    
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