66 / 66
ことほぎ。
しおりを挟む
わたくしのキュアピュリフィケーションの魔法は発動後わたくし自身のマナを吸い上げるように膨らんで白銀の柱となって天まで届くかというほど空に伸びて。
そしてその光は徐々に下町全体を覆うまでに広がっていったらしい。
その範囲にいた魔人と化した人のみならず、魔人になりかけていた人の魂までもを浄化したその光は、小一時間ほど持続しそして消えていった。
それはまるで白銀の霧のように町中を覆い、しばらくは視界も遮られるほどだった、と、あとから聞いた。
その霧が晴れたあと。
騎士団の面々は町で倒れている人間を保護してまわった。
ほとんどの住人は各所に設けていた避難所に篭っていたため被害はなく、倒れているものは皆服もハダけ皮膚も裂けたあとがみられたため、魔人化した人々であるということであろうと判断された。
身元確認にはセバスが駆り出され当たった結果、ほぼ全てがブラウド商会の従業員であると判断され、残り数名、セバスにわからない人間も治療され意識を取り戻したトマスによって、魔國大黄粉の製造プラントで働いていた者で間違いないと判別された。
トマス自身はマギアアリアから下町の工房にあて送られた手紙の対処のため、ここ数日はずっとよろずやに滞在して指示を出していたのだという。
もうラインハルトさまはそのあたりを自分に丸投げするだけで、報告もまともに聞かない状態になっていたらしい。
ブラウド商会の支配人として権限を丸投げされ、それでも商会の事を第一に考え動いていた、と、証言していた。
ラインハルトさまは、というと。
民家の納屋に潜り込み震えていたところを確保されたらしい。
口に含んだとされる大黄粉はその大部分を吐き出し、魔人化はさけられていたのだと。
それでも一時的に上がった力により騎士団から逃げおおせたあとは、目眩しの為に魔人化直前のほぼ廃人化していた従業員を閉じ込めてあった部屋の鍵を開けて、その中に大黄粉を撒いてまわったのだという。
極刑は免れない。
そうマクギリウス様はおっしゃった。
今回の事で多くの人が亡くなった。
魔人と化して退治されてしまった人も多い。
もともと、魔人と化してしまった人間は浄化の魔法であっても助けることはまず不可能である、というのが今までの常識だった。
同じ浄化のお守りで試してもらったけれど、わたくしほどの効果を出せる人は居なかったし。
トランジッタ侯爵家はお取り潰しにしなければならないだろう。そうおっしゃったのは国王陛下。
これだけの事をしてしまったのでは他の重臣の手前庇うこともできぬよ。
と、そう。
エルグランデ公爵家は、というと。
マリアーナが、日々荒んでいき暴力を振るうまでになったラインハルトさまから逃げ実家に帰っていたこともあり。
それにもかかわらず何もあかさず巨額のお金の無心だけするラインハルトさまに呆れて、絶縁状態になっていたらしい。
問題は、マリアーナのお腹になんとラインハルトさまのお子が宿っていたこと。
犯罪者の息子として生まれてきてしまうその子のことは不憫には思うけれど……。
彼らとやり直せるか、と言われればノーだ。
父や義母、兄や妹がわたくしに向けてくれていたのが「善意」であったのだろうというのは今ならわかる。
でも、そこには「愛」は無かったのだろう。
貴族としての常識。そこから外れているわたくしに対する善意は、真綿でクビを絞めるようにじわじわとわたくしの心を蝕んでいた。
家族だと、そう思わなければ良かったのだと。
愛を求めなければ孤独にも陥らなかったのだと。
そうは理解している。
でも。
幼いわたくしにはそんな孤独、嫉妬や憎しみ、そんなものをみんな心の奥底に押し潰して隠してしまうしかできなかったのだから。
♢ ♢ ♢
わたくしはこれからも、商会のお仕事に携わっていくのだろう。
だって働くことが楽しいんだもの。
この楽しさを、喜びを、手放して生きていくなんてできないから。
「愛してるよアリーシア。俺は君を一生大事に思ってるからね」
そうおっしゃってくれるマクギリウス。
わたくしも、愛してるわ。
だから。
お願いだからずっとそばにいて。
もう絶対に離れたくない。
そう呟くように懇願すると。
マクギリウスはぎゅっと抱きしめてくれた。
この幸せがずっと続く事を願ってやまない。
「大好きよマクギリウス」
そう彼の耳元に口を近づけて、囁いた。
fin
そしてその光は徐々に下町全体を覆うまでに広がっていったらしい。
その範囲にいた魔人と化した人のみならず、魔人になりかけていた人の魂までもを浄化したその光は、小一時間ほど持続しそして消えていった。
それはまるで白銀の霧のように町中を覆い、しばらくは視界も遮られるほどだった、と、あとから聞いた。
その霧が晴れたあと。
騎士団の面々は町で倒れている人間を保護してまわった。
ほとんどの住人は各所に設けていた避難所に篭っていたため被害はなく、倒れているものは皆服もハダけ皮膚も裂けたあとがみられたため、魔人化した人々であるということであろうと判断された。
身元確認にはセバスが駆り出され当たった結果、ほぼ全てがブラウド商会の従業員であると判断され、残り数名、セバスにわからない人間も治療され意識を取り戻したトマスによって、魔國大黄粉の製造プラントで働いていた者で間違いないと判別された。
トマス自身はマギアアリアから下町の工房にあて送られた手紙の対処のため、ここ数日はずっとよろずやに滞在して指示を出していたのだという。
もうラインハルトさまはそのあたりを自分に丸投げするだけで、報告もまともに聞かない状態になっていたらしい。
ブラウド商会の支配人として権限を丸投げされ、それでも商会の事を第一に考え動いていた、と、証言していた。
ラインハルトさまは、というと。
民家の納屋に潜り込み震えていたところを確保されたらしい。
口に含んだとされる大黄粉はその大部分を吐き出し、魔人化はさけられていたのだと。
それでも一時的に上がった力により騎士団から逃げおおせたあとは、目眩しの為に魔人化直前のほぼ廃人化していた従業員を閉じ込めてあった部屋の鍵を開けて、その中に大黄粉を撒いてまわったのだという。
極刑は免れない。
そうマクギリウス様はおっしゃった。
今回の事で多くの人が亡くなった。
魔人と化して退治されてしまった人も多い。
もともと、魔人と化してしまった人間は浄化の魔法であっても助けることはまず不可能である、というのが今までの常識だった。
同じ浄化のお守りで試してもらったけれど、わたくしほどの効果を出せる人は居なかったし。
トランジッタ侯爵家はお取り潰しにしなければならないだろう。そうおっしゃったのは国王陛下。
これだけの事をしてしまったのでは他の重臣の手前庇うこともできぬよ。
と、そう。
エルグランデ公爵家は、というと。
マリアーナが、日々荒んでいき暴力を振るうまでになったラインハルトさまから逃げ実家に帰っていたこともあり。
それにもかかわらず何もあかさず巨額のお金の無心だけするラインハルトさまに呆れて、絶縁状態になっていたらしい。
問題は、マリアーナのお腹になんとラインハルトさまのお子が宿っていたこと。
犯罪者の息子として生まれてきてしまうその子のことは不憫には思うけれど……。
彼らとやり直せるか、と言われればノーだ。
父や義母、兄や妹がわたくしに向けてくれていたのが「善意」であったのだろうというのは今ならわかる。
でも、そこには「愛」は無かったのだろう。
貴族としての常識。そこから外れているわたくしに対する善意は、真綿でクビを絞めるようにじわじわとわたくしの心を蝕んでいた。
家族だと、そう思わなければ良かったのだと。
愛を求めなければ孤独にも陥らなかったのだと。
そうは理解している。
でも。
幼いわたくしにはそんな孤独、嫉妬や憎しみ、そんなものをみんな心の奥底に押し潰して隠してしまうしかできなかったのだから。
♢ ♢ ♢
わたくしはこれからも、商会のお仕事に携わっていくのだろう。
だって働くことが楽しいんだもの。
この楽しさを、喜びを、手放して生きていくなんてできないから。
「愛してるよアリーシア。俺は君を一生大事に思ってるからね」
そうおっしゃってくれるマクギリウス。
わたくしも、愛してるわ。
だから。
お願いだからずっとそばにいて。
もう絶対に離れたくない。
そう呟くように懇願すると。
マクギリウスはぎゅっと抱きしめてくれた。
この幸せがずっと続く事を願ってやまない。
「大好きよマクギリウス」
そう彼の耳元に口を近づけて、囁いた。
fin
105
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(74件)
あなたにおすすめの小説
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆小説家になろうにも投稿しています
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
時々出てくる…
「貴族そうろう」
「お金持ちそうろう」
「~そうろう」ってなんだろうかと疑問でしたが、方言でしょうか
「相当」?「相応」?「~風」?
完結してるからこそ言える。
ドアマットヒロインな主人公をいびった(自覚なしでも。寧ろ、より主人公に害悪←毒親家族決定)な、敵(家族に非ず)=ラスボスの討伐ならずして、貴方が世に紡いだ、一種のシンデレラストーリー=ヒロイックサーガの完成はならぬのですよ。
貴方自身にその自覚があるかどうかは存じませんし、考慮も致しませんが、言わせて頂きます。
作品内容の展開と、構成内容に目を通して、人間の抱く感情と、そこに生じる、関与した人間達の負の感情に対する考察と、『読者感情』についての考察が甘いなと思いました。
だって、人間、どんなに性善説を信望しても、10人が10人、清らかかつ正しいあれこれを、心から認めて、奉じて殉じれる訳が無いのですのよ。
何故なら、我々の祖先とされてる生き物は、サルですのでね。
その、サルでさえ、物理的な機能が劣った我が子を養育拒否、機能に問題なくても、色や形や気質なんかで、そこに優劣を争い、敗者を群れ全体で排斥して、イジメの対象にして玩具にして、生存競争の上位に君臨してますのに。
その上で。
だって、この話、ラスボス倒されてないねん。
ラスボス倒さな、『ストーリー』完結せんやろ?
この理屈、お分かりなさいますよね?
故に主人公家族の後日談着手をオススメ致します。
あるいは、これを次回作の糧に為さられれば幸いです。
微ざまぁタグ、微々たるざまぁすらどこにあるんですかってなぐらいに要素を感じない。
自滅した奴はいるけど、クソ家族は別に特に何も無いし。
ガッカリすぎる。
ごめんなさい。。